日本消費者連盟
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新ワクチンに莫大な血税 本当に必要?

厚生労働大臣あて、子宮頸がんワクチン事業についての公開質問状をだしました

ワクチンで病気を防ぐべきである
というVPD(Vaccine Preventable Diseases)の考えのもと、新しいワクチン接種(すべて外国産)が始まっています。国は、「子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進臨時特例交付金」として2010年11月から2012年度末までの間、自治体に1,085億円を交付し、各自治体では接種が積極的に進められています。

子宮頸がんワクチンにより死亡事故や、ヒブワクチンと肺炎球菌ワクチンや他のワクチンとの同時接種による死亡事故が発生している中、費用負担に悲鳴を上げた自治体からは「定期接種へ」との声もきかれますが、本当に必要で有効なワクチンといえるのでしょうか。

2011年12月19日、小宮山厚生労働大臣あてに、以下の公開質問状を提出しました。

 


2011日消連第33号
2011年12月19日

厚生労働大臣 小宮山 洋子 様

特定非営利活動法人日本消費者連盟
共同代表 天笠 啓祐
古賀 真子
真下 俊樹
山浦 康明

ワクチントーク全国
事務局 青野 典子
母里 啓子

子宮頸がんワクチンの事業についての公開質問状

冠省

ワクチン接種により、子どもの健康をまもるために保護者の負担軽減を図るということで、新しいワクチンである、子宮頸がん(ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン(以下 子宮頸がんワクチン)、ヘモフィルスインフルエンザ菌b型(Hib)ワクチン(以下 ヒブワクチン)、小児用肺炎球菌ワクチン(以下 肺炎球菌ワクチンといいます))が、ワクチン接種緊急促進事業の対象とされています(以下3ワクチンといいます)。

平成22年10月、厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会のワクチン評価に関する小委員会(部会長 加藤達夫)は、同予防接種部会において、新たに公的予防接種の対象とすべき疾病・ワクチンを含め、今後の予防接種のあり方全般について検討を行っている最中に、異例の意見書(以下 意見書)を提出しました。

この意見書に後押しされる形で、平成22年11月26日(補正予算成立日)から平成23年度末まで、国は、子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進臨時特例交付金として自治体に1085億円(内訳 注1)を交付しています。

私たち予防接種について考える市民団体には、これらの次々に新しく導入されるワクチンについて、効果や副作用に関する不安の声が多く寄せられています。また、自治体の担当者からも、新規ワクチンやタミフルの備蓄に関する自治体負担の急増についての疑問の声が寄せられています。子宮頸がんワクチン接種による死亡事故や、ヒブワクチンと肺炎球菌ワクチンや他のワクチンとの同時接種による死亡事故が発生していることはご承知のことと思います。

しかし、ワクチン行政についての国の諮問機関である、予防接種部会では、これらの新しいワクチンを予防接種法上の定期接種にするべきであるという議論が推し進められています。

そこで、厚生労働大臣として、これら新規のワクチンのうち、今回は子宮頸がんワクチンを中心に、お考えを示していただきたいと思います。

この意見書が、今回の接種事業を後押ししたとも考えられることから、意見書の趣旨にそって、以下の点についてご質問させていただきます。

意見書は、「ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン、ヘモフィルスインフルエンザ菌b型(Hib)ワクチン、小児用肺炎球菌ワクチンのうち、HPVワクチンは、WHOが全ての地域において接種を行うよう勧告を行っており、米国、カナダ、英国、ドイツ、フランス、イタリアなど、先進諸国でも実施されているものの、我が国では未実施であることを強調し、①HPV感染による子宮頸がんで死亡する女性も多いこと、②ワクチンの有効性・安全性は高いこと、③接種促進に対する国民の要請も高いことから、Hibワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン、HPVワクチンは、予防接種法上の定期接種に位置づける方向で急ぎ検討すべきである・・」というものです。

ご多忙中恐縮ですが、2012年1月10日までにご回答いただきますようお願い申し上げます。

1 HPVワクチンの有効性が高いという点について

意見書では「HPV感染による子宮頸がんで死亡する女性も多い」「子宮頸がんは、新規の年間患者数約8,500人、死亡者数は約2,500人と国民の健康を守るという観点からも早急に対応が必要である。」されています。

確かに、子宮頸がんの発症率は1999年ごろから増加傾向にあります。しかし、注意すべきは、HPV感染を起しても、入り込んだ上皮細胞が剥がれおちれば大半のウイルスは消え、がん化しないということです。異形の程度の経過観察が必要なために検診の重要性が強調されるわけです。

HPVの遺伝子型は100種類くらいあり、発がん性HPVの遺伝子型として、現在認可されているサーバリクス、ガーダシルは、共に16型と18型しかクロスしておらず、全体に占める割合は14%に過ぎません。ワクチンは2006年につくられましたが、その有効性についての検証は十分とはいえません。

私たちは、このワクチンを公費負担することは疑問であるとして、2010年9月1日に「子宮頸がんワクチンの公費助成に反対する申入れ」を長妻厚生労働大臣(当時)あてにしています。その後、莫大な国費を投じて緊急接種事業とされる中、接種事業として推進されていますが、有効性は疑問であると考えます。

ワクチンの有効性と公的負担の必要性について、貴下のお考えをお示しください。

2 ワクチンの安全性は高いということについて

現在、3ワクチンによると思われる死亡例については、安全対策調査会、子宮頸がん等ワクチン予防接種後副反応検討会の合同会議で、いずれも因果関係が否定されています。貴省では、情報収集体制を整えるために、PMDA医療安全情報(注2)なども動員して副作用情報を収集、公開されています。その中身をみると、HPVについては、死亡例も含め、失神やアナフィラキシーショック、子宮出血、流産が報告されています。

これらの調査結果を踏まえて、子宮頸がんワクチンについての安全性についてどのようにお考えかをお示しください。

3 接種要請に対する国民の期待が大きいという点について

 税と社会保障の一体改革の名の下に、消費税による増税が議論される中、医療費の負担増による、高齢者医療制度の後退、年金受給の減額など国民の我慢は限界にきています。3ワクチンについては病気の怖さが強調されるなか、私たちの調査研究によれば、必ずしも莫大な交付金を拠出しておこなうようなものではなく、まして定期接種にする必要はないものであると考えられます。ちなみに、これらの3ワクチンがすべて、海外メーカーによるワクチンであることはご承知のとおりです。接種要請に対する国民の期待とは、どのようなものと考えられるかについてお示しください。

以上

(注1)平成22年度子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進臨時特例交付金

補正予算額(国費ベース)1085億円、ワクチン接種緊急促進事業として、子宮頸がん予防ワクチン344億円、ヒブワクチン302億円、小児肺炎球菌ワクチン434億円、事務費5億円、(都道府県1億円、市町村4億円)

(注2) PMDA(Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)とは日本名、独立行政法人医薬品医療機器総合機構のこと。PMDA医療安全情報は医薬品・医療機器等安全性情報として,これまでに収集された医薬品・医療機器に関連するヒヤリ・ハット事例や副作用・不具合報告等の中から,同様の事象が繰り返し報告されている事例や行政から発出された添付文書改訂等の通知などについて,医師・薬剤師・看護師・臨床工学技士等の医療従事者や人間工学分野などの専門家及び医薬品・医療機器製造販売業者の業界団体の意見を参考にして,安全に使用するために注意すべき点などを医療従事者に広く周知する情報であるとされている。

(連絡先)特定非営利活動法人日本消費者連盟
〒169-0051 東京都新宿区西早稲田1‐9‐19

 アーバンヒルズ早稲田207
tel: 03-5155-4765 fax: 03-5155-4767


(参考) 平成22年10月
厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会
ワクチン評価に関する小委員会(部会長 加藤達夫)が厚生労働大臣に提出した

 意見書

 厚生労働大臣 細川 律夫 殿
厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会においては、新たに公的予防接種の対象とすべき疾病・ワクチンを含め、今後の予防接種のあり方全般について検討を行っているところであるが、現在、部会の下に小委員会及び作業チームを置いて検討を進めており、その考え方についてとりまとめを行った上で、部会としての提言とすることとしている。
一方、厚生労働省においては、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種促進を念頭においた情報収集、分析を目的とする予算事業を要求しているが、これに加え、他の疾病・ワクチンについても、適宜、予防接種法における定期接種に位置づけることを想定した対応を検討すべきである。
特に、
① ヘモフィルスインフルエンザ菌b型(Hib)ワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン、HPVワクチンは、WHOが全ての地域において接種を行うよう勧告を行っており、先進諸国でも実施されているものの、我が国では未実施である
② Hib、肺炎球菌の感染による細菌性髄膜炎で乳幼児が死亡し、HPV感染による子宮頸がんで死亡する女性も多い
③ これらのワクチンの有効性・安全性は高い
④ Hib、肺炎球菌による感染症は、重度の後遺症の発症頻度が高く、これらの菌は、抗菌薬耐性獲得の問題から治療に難渋することがあり、この傾向はさらに強まる
こと、
さらに、その接種促進に対する国民の要請も高いことから、Hibワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン、HPVワクチンは、予防接種法上の定期接種に位置づける方向で急ぎ検討すべきである。
なお、本部会においては、引き続き、水痘、おたふくかぜ、B型肝炎等その他の疾病・ワクチンも検討を進めるとともに、予防接種に関する評価・検討組織の設置についての議論等を行い、今後の予防接種のあり方について提言をとりまとめることとしたい。
平成22年10月6日
厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会部会長
加 藤 達 夫

(別紙)
Hib、肺炎球菌、HPVワクチンについて
①WHOの勧告に含まれている
・ Hib、小児用肺炎球菌、HPV ワクチンは、2010年9月時点において、WHOが「全ての地域に向けて勧告」を行っている予防接種に含まれている。
②先進7カ国において、実施していないのは日本のみ
・ 米国、カナダ、英国、ドイツ、フランス、イタリアのいずれの国においても、Hib・肺炎球菌・HPVワクチンを定期の接種プログラムとして実施している。
③Hib、肺炎球菌の感染による細菌性髄膜炎で乳幼児が死亡し、また、子宮頸がんで死亡する女性も多い。
・ Hibと肺炎球菌による細菌性髄膜炎は、5歳未満のこどもにおいて年間500~700人発生しており、他の侵襲性重症感染(敗血症、喉頭蓋炎や関節炎など)を含めると2000人を超える。また、通常、細菌性髄膜炎では集中治療によっても2~5%が死亡し、20%程度にてんかんや精神発達遅滞などのその後の負担が非常に大きい後遺症が残る。
・ これらは5歳未満のこどもでは誰しも等しく起こる可能性があり、子育て中の親には大きな心理的不安の材料であり、これが親および小児救急医療の大きな負担となっている。
・ 子宮頸がんは、新規の年間患者数約8,500人、死亡者数は約2,500人と国民の健康を守るという観点からも早急に対応が必要である。
・ 更に、子宮頸がんは、20~30歳代のいわゆる「出産世代」にも発生するがんであり、子宮頸がんの治療では、子宮全摘出術や放射線療法等が行われることから、次世代を担うこどもの喪失など社会的損失が非常に大きい。
④Hib、肺炎球菌、HPVワクチンの有効性・安全性は高い
・ Hibワクチンは、世界で136カ国が導入しており、多くの国で細菌性髄膜炎を予防する効果が実証されている。また、導入した結果、米国をはじめとする多くの国において細菌性髄膜炎などの侵襲性Hib感染症の患者数が95%以上減少しており、この疾患とその後遺症で苦しむこどもは稀となっている。
・ 肺炎球菌ワクチンも同様に、ワクチンに含まれる血清型の肺炎球菌による侵襲性感染症を90%以上減少させ、非常に有効とされている。また、小児へ接種することにより、接種者の侵襲性感染症を予防するのみならず、成人においても肺炎球菌による侵襲性感染症が減少したことが報告されている。
・ 現在販売されているHPVワクチンについては、日本人の子宮頸がんの原因である発がん性HPVの50~70%の感染を防止し、海外のデータでは、ワ
2
クチン型の未感染女性への接種から6.4年の時点で、HPV16/18の持続感染やHPV16/18による前がん病変(CIN2以上)に対して100%の予防効果があることが報告されている。
・ なお、これらのワクチンについて安全性については国内における臨床治験、これまでの市販後調査、海外における使用経験などから、重大な副反応発生報告はなく、通常に使用し得るワクチンとされている。
⑤重度の後遺症の発症頻度が高く、抗菌薬耐性獲得の問題から治療に難渋することがあり、この傾向はさらに強まる
・ 細菌性髄膜炎では、重度の後遺症を含めて予後不良となる割合が20~30%と非常に高い疾病である。死亡はもちろんのこと、特に後遺症が残ると親の金銭的、精神的負担が非常に大きく、これらは毎年累積してくるため導入が遅れれば、社会的な負担も膨らんでいく。
・ Hib、肺炎球菌については、抗菌薬に対する耐性獲得菌の発現頻度が増加して起きており、一旦発症した場合に治療に難渋することが多く、またこの傾向はさらに増加することが予測されている。
以上より、Hib、小児用肺炎球菌、HPVワクチンついては、我が国における定期接種化を進めるべきである。

平成22年10月
厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会
ワクチン評価に関する小委員会


子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進臨時特例交付金について(pdf)


消費者リポート1496号より

子宮頚がんワクチンで死亡例

ワクチントーク全国と日消連が厚生労働省に事実確認

厚生労働省は事実確認の質問について、「死亡した女子中学生については、もともと心疾患があり、心室頻拍から心室細動に至って死亡した。いつ心室細動が起きてもおかしくない状態にあったという。心疾患に対する副作用はワクチンの添付文書に書いていない。直接的な明確な因果関係は認められない」とし、また、心疾患のある人への接種には注意が必要だと呼びかけるべきではないのかという質問には、「まだ1例なので今後例が増えれば考える」との答えにとどまりました。

子宮頚がんワクチンはすべてのHPVに対応するわけではないこと、ワクチン接種で発症を100%予防できるわけではないことは、厚生労働省のホームページにもしっかり書かれています。めまいや失神、動悸の副作用があるワクチンを、心臓疾患のある子どもに接種することが必要なのか? 疑問が消えません。引き続き注目していきます。