日本消費者連盟
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福島第一原子力発電所の汚染水流出レベル3の事態に関する抗議と緊急要請をしました

2013年8月29日、日消連と電力改革プロジェクトは、福島第一原子力発電所の汚染水流出について、国が、福島第一原発事故の収束問題を、政府の最優先の政策課題として設定し、全社会的な取り組み態勢の再構築を行うべきことなどを求めて、内閣総理大臣、経済産業大臣、原子力規制委員会、東京電力に対して、レベル3の事態に関する抗議と緊急要請をしました。


2013年8月29日

内閣総理大臣 安倍 晋三 様
経済産業大臣 茂木 敏充 様
原子力規制委員会 委員長 田中 俊一 様
東京電力株式会社 取締役代表執行役社長 廣瀬 直己 様

 

特定非営利活動法人日本消費者連盟
共同代表 天笠 啓祐
古賀 真子
真下 俊樹
山浦 康明

電力改革プロジェクト

要請書

福島第一原子力発電所の汚染水流出レベル3の事態への抗議と緊急要請

 

冠省 2013年7月下旬、東京電力(東電) は福島第一原発において放射性物質を含む汚染水が地下水に混入して、海に流出していた事実を発表しました。さらに、8月19日には同原発内の汚染水貯蔵タンクから約300トンの高濃度汚染水漏れが発覚しました。原子力規制委員会は、原子力事故の国際評価基準でレベル3の「重大な異常事象」にあたると正式決定しています。

今回の汚染水漏れで、東電が当然なすべき管理を怠っているうえに、情報を公開するという基本的な義務も果たしていないことが明らかとなりました。東電の汚染水の海洋流出の事実の公表は参議院議員選挙後でした。重大な事実を隠ぺいしたうえ、汚染水貯蔵タンクの管理も場当たり的で廉価な対策に終始して、被害を拡大させていると言わざるを得ません。東電の対応は完全に後手に回っており、深刻な放射能汚染を食い止める能力を失っています。今後も汚染の広がりや作業員の被曝など、次々と廃炉作業の綻びが露呈し被害を拡大させる恐れがあります。

この間、原子力規制委員会は再稼働に向けた新規制基準の適合審査の作成に没頭し、約80人体制での審査会合を続けています。一方、汚染水対応を含む福島事故対策には従来と変わらぬ約40人が担当しているのみです。

東電は、福島第一原子力発電所の事故により、2011 年5月以降、海洋に流出したセシウム137は20 兆ベクレル、ストロンチウムは10 兆ベクレルに上ると公表しています。現在、福島原発敷地内の汚染水総量は43 万トンに達し、これらは建屋内に9 万3 千トン、タンク内に33万4 千トンが保管されています。13年7 月公表の経済産業省の汚染水処理対策委員会の議論によれば、13年5 月に粘土系遮水壁案、凍土遮水壁案などの地下水の流入を遮水するためのプランが複数のゼネコンから提案されていました。

敷地内に設置されたタンクは5 年しか耐久性のない脆弱な構造のものであり、そのタンクのひとつから300 トンもの高濃度汚染水が海へ流出したことが判明したことは、他のタンクの健全性にも疑問がもたれます。タンクに水位計を付けなかったことや、タンク周囲に堰を設置したがドレン配管(排水用) の弁を開いていたので汚染水が堰の外に漏れてしまったなどの事実は、今後も汚染水の海洋への流出が続き、建屋への大規模な浸水も懸念されるということです。

福島第一原発においては深刻な原子力災害が現在も継続しているのであり、このような重大事の公表が参議院選挙後、国会閉会中であったことに、強く抗議します。

今回の件で、東電には事故収束と汚染水対策を進める能力が欠けていることが明らかになりました。国は、福島第一原発事故の収束問題を、政府の最優先の政策課題として設定し、全社会的な取り組み態勢の再構築を行うべきです。

この緊迫したレベル3の事態に対して、東電は政府指示の下、情報の公開を含め全面的に国に協力すること、国が責任主体となり、緊急かつ全力で対処していただくよう、以下のことを要請します。

 

1 政府内に新たな福島第一原発廃炉と汚染水対策に特化した部門を作り、今回の事故処理を含む東電の廃炉事業をその下におくこと。

(1) 特化部門においては、国内外のあらゆる関連分野の人材と知見を集約し、事故対処にあたらせること。海外に積極的に支援を呼びかけるなど、抜本的な体制強化をはかること

(2) 経産省資源エネルギー庁の汚染水処理対策委員会は、特化部門に協力するとともに、早急に委員会の議事録を全面公開すること。

(3) ストロンチウム、プルトニウム等も含む、より正確な流出データを東電に公表させて、適切な事故対処と迅速な情報公開を行うこと。

(4) 廃炉作業にあたる人員の確保や被曝線量の厳重管理等により、作業環境の悪化を早急に食い止めること。

2 地下水と汚染水流出の経路をつかみ、今回の事故処理を徹底的に検証し、再発防止に努めること。原子力規制委員会における原発の新規制基準に汚染水流出対策を組み入れること。

(1) 汚染水対策業務の遂行に当たっては、「凍土遮水壁」に限定せず、最適技術の選択を行いながら進めることとし、大型タンクの建設と既存の応急的、仮設的汚染水処理システムを耐久性のある恒久的な汚染水処理システムに更新し、実効性のある海洋への汚染水流出防止システムを構築すること。

(2) 福島第一原発は地下水脈の上に建設されており、建設自体の妥当性が疑われる。新規制基準には、地下水脈等の調査、遮水対策などもいれること。

3「事故を繰り返さない」ことが前提であるはずの原発再稼働審査を、このような事態の下で行うことは著しいダブルスタンダードであり許されない。原発の適合性審査や核燃料サイクル施設の新規制基準づくりを凍結し、政府の新部門と連携してすべての人員とエネルギーを、汚染水対策を含む事故処理に振り向けること。

4 福島第一原発廃炉事業を国の責任で行っていくために、東京電力の経営形態や法的位置づけについてのより根本的な見直しは、独立性のある有識者組織と国民世論を反映した形でなされるべきであり、そのための方法として、「専門調査委員会」を国会に設置すること。

5 東電から原発事業を切り離し、現在所有している原発すべてを廃炉として新部門のもとにおくこと。他の事業は、発電・送電・配電・小売に分割して新会社を設立し、電力自由化と発送電分離のモデルケースとすること。

そのために電気事業法、原子力損害賠償支援機構法等の改正を含む電力システム改革を推進すること。

以上

 

(連絡先) 〒169-0051 東京都新宿区西早稲田1-9-19-207
日本消費者連盟 古賀、真下
TEL 03-5155-4765 FAX 03-5155-4767

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