日本消費者連盟
すこやかないのちを未来へ
企業や国家の利益よりも人のいのちや健康を優先する世の中に変えたいと活動しています。

NHK経営委員の政治活動の自由について

NHKの経営委員は不偏不党、政治的公平・公正、多様な意見の反映を基本原則とするNHKの役員であり、会長の任免権、副会長の同意権を持ち、会長以下執行機関の役職員の職務の執行を監督する幅広い権限を持つNHK経営委員会の構成員です。公共放送としてのNHKの、役員の職務上の地位、権限を考慮すると、NHK経営委員に政治活動の自由が無制限に認められるかどうかについては、広く国民的議論が求められるところです。

職務外であっても、公衆の面前で特定の政党なり政治家を積極的に応援するというきわめて党派性の強い発言をしたり、NHK経営委員であることを断った上で時の首相の応援団と自己紹介したりするとなれば、そうした発言を知った国民は当該経営委員の主義主張が職務遂行にも投影し、NHKが担う政権監視機能が衰微するのではないかと疑念を持つのは当然ですから、職務外での個人的発言では済まないでしょう。

この間、NHKに籾井会長発言に関してだけでも視聴者から1万2千件を超える意見が寄せられ、百田、長谷川両経営委員の言動に関しても、視聴者の意見をきく「NHKふれあいセンター」にはさまざまな意見が寄せられているということです。

ところが、視聴者部経由で経営委員会事務局から「NHKふれあいセンター」には、この問題について、「経営委員会事務局としては、放送法では非常勤の経営委員には兼務が認められており、また、個人の思想信条にもとづく言動が妨げられているわけではなく、今回の応援演説も経営委員としてではなく、百田氏個人としての行動と受けとめています。」との文書を作成し、意見を寄せた視聴者に対して読み上げて対応していることがわかりました。

2014年2月6日、NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ(共同代表 湯山哲守さん・醍醐聰さん)から、渋谷のNHK放送センターあてに以下の2件の文書を提出されましたとの情報が寄せられましたのでご紹介します。

「異常づくめのNHK~経営委員の異常な言動を弁護する委員会事務局~」

http://sdaigo.cocolog-nifty.com/blog/2014/02/nhk-90c5.html

(共同代表 古賀 真子)


2014年2月6日

NHK経営委員会御中

 

改めて籾井NHK会長の罷免を求める申し入れ(回答要望付き)

NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ

共同代表 湯山哲守・醍醐 聰

 貴委員会におかれましては、日頃より、NHKの公共放送として充実をはかるためご尽力されていることと存じます。

 当会は1月27日に貴委員会宛に文書を提出し、その中で次の3点を申し入れました。

 1. 1月25日に開かれた会長就任の記者会見の場で一連の発言によって、NHK会長の職に不適格な人物であることが明瞭になった籾井勝人氏をNHK会長職から解任するか、籾井氏に辞職を勧告していただくこと。

 2. 会長就任早々、言論・報道機関の責任者としての自覚のなさをさらけ出す発言をするような人物を選任した貴委員会の任命責任を十分に協議され、その議事録を全面的に公開していただくこと。

 3. 現在のNHK会長選考のシステムを、視聴者に開かれた、より透明なものにするよう抜本的に改革するための第一歩として、NHK会長選考のあるべき仕組みについて、広く視聴者から意見を求める機会(パブリックコメントや公聴会の開催)を近々に設けていただくこと。

 以上のような申し入れをして以降、1月28日に開催された貴委員会での籾井会長発言をめぐる審議の模様が報道され、さらに1月31日には衆議院予算委員会に籾井会長が招致されて、質疑が交わされました。これらの新たな情報にもとづいて、改めて後掲の申し入れをいたします。これらについて、27日付けの上記の3点の申し入れと併せ、2月15日までに別紙宛に文書で回答をお送りくださるようお願いいたします(先日の申し入れでは2月10日までに回答をいただくようお願いしましたが、上記2,3の申し入れと今回の申し入れに対するご回答を2月15日までと変更させていただきます)。

 籾井会長は1月25日の記者会見で、NHKが行う国際放送に関し、「領土問題については明確に日本の立場を主張するのは当然のこと。政府が右と言うことを左と言うわけにはいかない」と発言されました。こうした発言は「放送法」第65条で定められた、NHKが実施する国際放送は、明文にあるとおり、総務大臣からNHKに対する要請であって、NHKから言えば、それに応じるよう努める努力目標であって義務ではないこと、応じる場合も、放送番組の編集の自由に配慮すべきことをまったく理解しないものでした。

ところが籾井氏は1月31日の国会での質疑において、この点を質された場面でも、国際放送はNHKの義務かのように答弁し、「右」「左」を「赤」「白」に訂正するという意味不明の答弁をしました。

また、25日の会見での発言のどの部分を撤回したのかについても、「従軍慰安婦」に関する部分だけだったのかのような答弁をする一方、「全部取り消した」とも発言し、正確な真意はいまだ不明のままです。

 国会での籾井会長の答弁は終始、背後に控えたNHK職員から差し出されるメモを頼りにしたもので、「放送法」はもとより、公共放送に関する同氏の理解の欠落が露呈したものでした。

 これらの発言に接したNHK幹部からは「あの従軍慰安婦発言は無知すぎる。同じ組織の人間として恥ずかしい」という感想が出され、ある経営委員は「個人的な発言なので今回は支える。だが、2度目はない」と発言したと伝えられています(『西日本新聞』2014年1月28日)。

 しかし、NHK会長に「見習い期間」や「試行期間」があるわけではありません。就任後は即、その言動にNHKのトップとしての責任が問われるのです。

 貴委員会はひとまず個人的見解として収拾するとされましたが、貴委員会内の指名部会で同意された「会長資格要件」は選考時点での籾井氏の個人的見識なり資質なりを問うたものですから、「従軍慰安婦はどこの国でもあった」と述べて当時の政府や軍が関与した戦時性暴力を是認するかのような籾井氏の個人的見解こそが問われなければならないのです。当会は、そのような人権意識の持ち主が「放送を公共の福祉に適合するように規律し」、「放送が健全な民主主義の発達に資するようにする」(「放送法」第1条)職責を担えるとは到底、判断できません。

申し入れ

 「放送法」は第55条で、「経営委員会は、会長、監査委員若しくは会計監査人が職務の執行の任に堪えないと認めるとき、又は会長、監査委員若しくは会計監査人に職務上の義務違反その他会長、監査委員若しくは会計監査人たるに適しない非行があると認めるときは、これを罷免することができる」と定めています。

 当会は上記のような理由から、籾井勝人氏はNHK会長の「職務の執行の任に堪えない」人物であると判断し、同氏をNHK会長職からすみやかに罷免するよう求めます。

 以 上


2014年2月6日

NHK会長

籾井勝人様

NHK放送総局長

石田研一様

最近のNHKの放送番組に関する質問書

NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ

共同代表 湯山哲守・醍醐 聰

 

貴職におかれましてはNHKの放送番組の充実のためにご尽力いただき、お礼を申し上げます。

私たちはNHKが国内外の諸問題について、様々な政治・経済勢力、とりわけ時の政権から自立した立場で、視聴者に多様な情報や意見を公平・公正に伝え、それを通じて視聴者が理性的な判断力を持って参政権を行使するのを支援する役割を果たすことを願っています。

しかし、最近放送された番組のなかで、こうしたNHKの使命にもとる問題が起こっています。以下、これらについて質問をしますので、ご多忙のこととは存じますが、2月14日(金)までにご回答を別紙宛先まで文書でお送りくださるよう、お願いいたします。

 

1.籾井勝人会長の就任記者会見での発言問題を28日まで自局のニュース番組で伝えなかったのはなぜなのか。

1月25日の会長就任会見で籾井会長は「従軍慰安婦」問題、靖国神社参拝問題、領土問題に関する国際放送、特定秘密保護法などについて言及されましたが、それらはすべて「放送法」に定められた公平・公平、不偏不党、多様な意見の反映に真っ向から反するものでした。特に、「領土問題については明確に日本の立場を主張するのは当然のこと。政府が右と言うことを左と言うわけにはいかない」という発言は、「国際的な紛争や各国間の利害が対立する問題などを取り上げる場合は、関係国の主張や国情などを客観的に伝えるとともに、日本の立場や世論の動向などを考慮して取り扱う」と定めた「NHK放送ガイドライン」にもとる暴言でした。
そのため、NHKには1,800件(1月29日現在)を超える意見が寄せられ、全国紙も26日朝刊以降、連日、多くの紙面を割いて籾井会長の発言の重大性を報道しました。

ところが、当会がNHK視聴者センターに問い合わせて確認したところでは、NHKは28日の19時と21時のニュース番組で、それも国会の質疑で籾井発言が取り上げられたのを短く伝えただけで、それ以前はこの問題をまったく伝えませんでした。

この問題を考えるに当たって当会は、NHKが取材する側とされる側の双方当事者となる場合の放送のあり方を厳しく問いかけなければならないと考えます。

「NHK放送ガイドライン」の末尾に添付された「BPOの主な決定(NHK関連)」の中で、2001年にNHKが4回シリーズで放送した「ETV2001 戦争をどう裁くか」の第2回「問われる戦時性暴力」を巡って、取材対象となった「女性国際戦犯法廷」を企画した市民団体がNHKに対して訴えを起こした裁判の報道を巡ってBPOが示した2つの意見・見解が掲載されています。2つは個別の内容に違いはありますが、NHKが報道する側とされる側の双方当事者となった点では共通しています。

1つ目は、「ETV2001」をめぐる東京高裁判決を伝えた「ニュースウオッチ9」がNHK側の言い分だけを伝え、訴えを起こした市民団体側の見解をまったく伝えなかった点について、BPOの放送人権委員会は、「NHK自身が、裁判の当事者だという特殊性を考えると、一般の裁判報道よりも公平・公正の点でより慎重な取り扱いが求められる」と指摘し、「相手方の見解になんら触れることなく、自らの解釈や番組への介入が疑われた政治家のコメントだけを放送したことは、公平・公正な取り扱いを欠き、放送倫理に違反する」とする見解を示したものです。

もう一つは、同じく「ETV2001」シリーズの第2回目の番組は放送倫理に反するとする市民の提訴に対して、BPOの放送倫理検証委員会が意見を表明したものです。この中で放送倫理検証委員会は、「国会担当の局長が制作現場の責任者に〔番組の〕改編を指示したことは公共放送にとって最も重要な自主・自律を危うくし視聴者に重大な疑念を抱かせる行為だった」と厳しく指摘しました。

 

【質問Ⅰ】

Ⅰ-1 NHKに対する国民の信頼を根底から揺るがす今回の籾井会長の発言を、国会で取り上げられるまで自局の放送で一切、報道しなかった理由をわかりやすく具体的にご説明ください。

Ⅰ-2  NHKが報道する側とされる側の双方当事者となった場合、自局の放送で当該問題の報道を抑制するバイアスがからないようにするには、番組制作部門と経営部門に利益相反が生じないようなファイアーウオール措置が必要です。これについて、NHKはどのような措置を講じているのかご説明ください。例えば、政治部の記者などが取材で接触した政治家の意向を番組編集部門に公式・非公式に伝えるといった関与をさせない措置をどのように講じているのか、ご説明ください。

2.原発問題をテーマにしたラジオ番組の放送をなぜ中止したのか?

1月30日の午前5~8時のラジオ第1放送「ラジオあさいちばん」で出演予定の中北徹・東洋大教授が「原発の再稼働のコストと事故リスク」をテーマに取り上げようとしたところ、番組担当のディレクターに「都知事選中は原発問題はやめてほしい」とテーマ自体の変更を求められ、中北教授がこれを断ったため放送が中止になったと伝えられています。

これについて、NHK広報部は「都知事選では原発をめぐる問題が争点の一つになっており、選挙期間中はより公平性を期す必要がある。今回は出演上、そうした対応を取ることが困難だったため、テーマの変更を求めた」(『毎日新聞』2014年1月31日)と説明しています。

しかし、当会が入手したこの番組の原稿メモによれば、中北氏は、①事前の安全確保の対策、保険料などといった原発稼働のコストが世界的にアップしていること。②万が一の際、巨大事故がもたらす損害が膨大化していること。③日本の場合、廃炉の費用が発生しているが、それが企業の費用に明示的に計上されていないこと、などを根拠に挙げ、それぞれを裏付けるデータを解説した上で、原発(稼働)ゼロでも、経済成長が実現できることを論じようとしたものでした。

その上で、中北氏は解説の最後で、原発事故発生のリスクと巨大事故が起きた際の損害額との関係に触れ、原発発生のリスクである積(事故の発生確率と、その事故がもたらす損害賠償料との両者の掛け算)の値を確実に減らし、ゼロにできるのは、原発を止めることになるだろうと説き、安倍首相も呼びかけた国民的議論の活性化を望む、と述べて解説を結ぶ予定だったといわれています。

「NHK放送ガイドライン」は、「意見が対立する問題を取り扱う場合には、原則として個々のニュースや番組の中で双方の意見を伝える。仮に双方の意見を紹介できないときでも、異なる意見があることを伝え、同一のシリーズ内で紹介するなど、放送全体で公平性を確保するように伝える」と定めています。

この点でいえば、中北氏は番組の中で、即時脱原発路線を支持するのか、それとも、時間をかけながら、緩やかに原発依存を減らしていくのか、という費用の選択の問題になる、それは国民がどう選択するのか、という政治的な課題である、と説明する予定だったと言われ、都知事選で特定の候補者の支持・不支持を促すものではありませんでした。

このように反証可能な実証的データに裏付けられた問題提起的な論説までも、「不偏不党」の原則を盾に抑制するのはあまりに過剰反応であり、重要な政治経済問題について国民の間で議論を喚起するという公共放送の使命に逆行するものです。かりに、上記の「NHK放送ガイドライン」に沿って、中北氏の見解と異なる意見を紹介しようと思うなら、NHK側の番組出演者が別の見解を紹介するなり、別の意見を取り上げる番組を企画すればよいのであり、個々の番組の中で対立する意見を紹介しない番組はまかりならないなどといった判断は成り立ちません。


 

【質問Ⅱ】

Ⅱ-1 NHKは原発問題を取り上げる予定だった中北徹氏の出演予定の上記番組を、中北氏の不同意にもかかわらず、放送中止とした理由をわかりやすく、ご説明ください。
Ⅱ-2  NHKは個々の番組の中で異なる意見を反映させない番組は常に放送しないという基準を採用しているのか、ケースバイケースで判断するのかどうかをお聞かせください。後者の場合は、どのような基準で採否を判断するのか、ご説明ください。

NHK回答NHK編成局計画管理部長名での回答

 

以上