日本消費者連盟
すこやかないのちを未来へ
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【意見提出】ゲノム編集技術を利用して得られた食品等の食品衛生上の取扱いについて(2019年2月21日)

 

日消連は2月21日、厚生労働省が募集している「薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会新開発食品調査部会 報告書(案) ゲノム編集技術を利用して得られた食品等の食品衛生上の取扱いについて」に意見を提出しました。

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 すこやかな命を未来へつないでいくこと、これは消費者の誰もが願うことです。そのために私たちを取り巻く環境を守り、日々の食の安全を守ることは最も大切なことです。政府もまた、そのために取り組んでほしいと思います。しかし、今回の、ゲノム編集をめぐる食品衛生法での扱いについての報告書は、その最も大切な環境を守ること、食の安全を守ることを放棄したものです。とても受け入れられるものではありません。そのため、報告書を撤回して、審議を最初からやり直すことを求めます。

 以下にその理由を述べます。

1、ゲノム編集では、オフターゲットやモザイクによる影響を免れることはできません。そのことについては多数の論文で示されています。今回の報告書は、その影響について楽観主義にあふれています。深刻な結果が起きてからでは手遅れです。

2、ゲノム編集の応用で、エピジェネティックな影響もあることも報告されており、今回の報告書ではそのことについてほとんど触れられていません。問題点にあえて触れないのではないかと、考えざるを得ません。

3、遺伝子を挿入した場合でも、戻し交配などによって遺伝子を除去すれば規制の対象外としていますが、導入した遺伝子が除去されたとしても影響は残るわけですし、完全に除去されるという保証もありません。しかも安全性を確保できることを保証するような研究が行われたということも聞いていません。このように科学的な根拠もないまま、進めていくことに大きな危惧を持ちます。

4、今回の食品衛生法での扱いは、遺伝子組み換え食品の安全性審査にかかわる範囲で行われたものです。ゲノム編集技術は、同じ遺伝子操作ではあるものの、遺伝子組み換え技術とは基本的に異なります。これからさらに、さまざまな新植物育種技術が応用されていきます。それらを含めて新たな法的規制が必要です。そのような方針を示さないことは、食の安全を守ることを放棄したといわざるを得ません。

5、この食品衛生法での方向が、食品表示に大きく影響します。もし、この結論を受けて食品表示が行われないことになれば、それは消費者の知る権利、選ぶ権利を奪うことになり、厚生労働省の責任は重大だといえます。

以上