日本消費者連盟 | すこやかないのちを未来へ

2017年1月号「ファッションと人権」

流行を安く手に入れ、簡単に捨て去る”ファストファッション”が世界を席巻しています。「ザラ」「H&M」といったグローバルブランドが、先進国の流行をいち早く取り入れ、最も安く生産できる世界の最適地で生産しています。日本では「ユニクロ」が、アパレル企業で日本1位の売上高を誇り、いずれは世界1位をめざすとしています。これら企業が高収益を上げる背景には、途上国の安い労賃と劣悪な環境で働く人々の犠牲がありました。私たち消費者は、食べもののトレーサビリティー(※)に気を使うように、この服はどこの誰によってどのように生産されたのか、思いを馳せる必要があるのではないでしょうか。
※トレーサビリティー=生産履歴の追跡可能性

日本の食料自給率はカロリーベースで39%(2015年)。それでは、衣料の自給率はどのくらいでしょうか。衣料の自給率つまり国内生産比率は、いまや3%まで落ち込んでいます。1990年に51・5%あった国産比率がここまで下がったのは、途上国での人件費が安いために海外での生産が増えたからです。日本の工場は後継者の育成が難しい段階まで疲弊し、日本人の衣料は途上国の生産抜きには考えられないところまで来ました。

下がり続けた価格

 衣料の価格は、海外生産の増加と相まって1990年前後をピークに下がり続けました。たとえば90年にメンズスーツの平均家計支出5万7000円だったものが、20年間で約半分まで下がりました(総務省統計)。企業は工賃の安い海外生産で仕入れ値を抑えた分、小売価格も下げて売り上げを稼ぎました。数年前まで長らく続いた円高も手伝い、歯止めの効かない低価格競争が繰り広げられたのです。
 日本の消費者は、いったん下がった価格に慣れ、主流となった「メイドインチャイナ」にも慣れ、安さの理由を考えることもなく、最先端のファッションを手ごろな価格で楽しむ習慣を身に着けました。日本にも進出した「ザラ」や「H&M」などグローバルブランドは、世界の工場となった中国だけでなく、より安い生産地を求めて工場を開拓していきました。

ビル倒壊で千人以上が犠牲に

そんな折、最貧国のひとつで輸出の約80%が衣類というバングラデシュで、縫製工場の入るラナ・プラザビルが倒壊し、1000人以上が犠牲になる事故が起きました。13年のことです。大量のミシンが一斉に稼働し、耐震性が弱まったビルを崩壊させてしまったのです。倒壊の危険性を指摘されていたにも関わらず、労働者を働かせ続けた経営者は逮捕されました。
 この事故をきっかけに、劣悪な環境で労働を強制される途上国の人々への関心が高まりました。このビルでは、「ベネトン」「ザラ」など世界の主要ブランドの多くが生産されていました。違法労働をさせていた経営者が処罰されるのはもちろんですが、劣悪な環境を生み出した大元には、ブランド側が要求する低い工賃や極端に短い納期があるという批判が生まれてきたのです。

劣悪な職場環境が明らかに

バングラデシュでも多くの工場に生産を委託する「ユニクロ」は、ほぼ100%海外生産です。その過半数を占める中国では、国際NGOが潜入取材したある工場で、低賃金、長時間労働、健康を害する劣悪な職場環境が明らかになりました。さらにカンボジアのある工場では、労働組合活動を理由に暴力を含む人権侵害や解雇も起きています。
 様々な気分を手ごろな価格で楽しめるファストファッション。その華やかさと安さの裏側には、途上国の人々の犠牲がありました。私たちは無意識に低価格競争に加担することなく、人権を侵害する企業からは買い物したくないという意志を示していきましょう。