日本消費者連盟
すこやかないのちを未来へ
企業や国家の利益よりも人のいのちや健康を優先する世の中に変えたいと活動しています。

2017年7月号「「香害」は 「公害」 香りの洪水が体を蝕む」

CS患者が孤立しないために

化学物質過敏症あいちReの会 藤井淑枝さん

愛知県にお住まいで、名鉄バスへのアロマ使用の質問書提出をきっかけに、日消連に入会した方の手記をご紹介します。

私が化学物質過敏症(CS)を発症して驚いたのは、情報が極めて少ないことでした。医学的には「主に臭気による不都合な身体反応の惹起」と説明されますが、それに加えこれまで使用していた生活用品が使えなくなり、日常生活は大変困難になります。家族の理解や協力も得にくく、患者は孤独です。そんな患者に役立つ生活方法やつらい気持ちを共有できればと、2012年に「化学物質過敏症あいちReの会」を立ち上げました。

Reは繰り返しを意味する接頭辞。retire (引退)reset (スイッチを入れ直す)resilience (困難な状況にも関わらずうまく適応出来る力)recuperate (回復する)。社会からの引退や生活方法のリセットを余儀なくされても、回復し、適応していきたいという思いを込めています。

しかし、患者自身の努力だけではどうにもならないこともあります。いま、世の中にあふれている香料など、「心地良く暮らすために」作られた製品やサービスで、患者は苦しい思いをしています。それを知ってもらうために、2013年に化学物質過敏症の原因や対応方法を描いたリーフレット、今年5月にはシックハウス症候群のリーフレットを作りました。公共の場所でのアロマ使用も大きな問題と考え、今年2月には名鉄バスに「夜間高速バスでのアロマ香料使用についての公開質問書」の提出、公開を行っています。

これからも「患者が孤立しないために」を第一に考えて活動していきます。


国の規制やCM自粛を求める声

広がる運動に呼応する自治体

香害を含む化学物質過敏症(CS)患者が増えるにつれ、自治体が日常生活を支援する動きが始まっています。新潟県上越市は、2006年度にCSの児童生徒のための特別支援学級を、小中学校に1学級ずつ設置しました。全国初でした。他にも山梨県北杜市では、昨年「化学物質過敏症相談窓口」を設置しました。それぞれに、最初はたった1人が声を上げて実現したものです。

国民生活センターは、13年9月に「柔軟仕上げ剤のにおいに関する情報提供」を発表しました。それに先立つ3月に、日消連洗剤部会メンバーも加わる「合成洗剤をやめていのちと自然を守る埼玉連絡会」は、埼玉県消費生活課に柔軟仕上げ剤の香料について検査を依頼し、それが国民生活センターの調査へと繋がっていきました。埼玉連絡会の働きかけで、県民に香りの自粛を求めるポスター「香りのエチケット」(3ページ)も県の作成で配布されました。

日本消費者連盟関西グループは、13年に消費者アンケート、14年に行政アンケートを実施しました。これまでに、香料自粛を求める会、化学物質問題市民研究会、反農薬東京グループなどとともに、文部科学省、厚生労働省に対し、香料自粛を求める要望書を提出しています。

日消連洗剤部会の田中輝子さんは、「今後はCM自粛を求める声も上げていきたい。香害を減らすだけでなく、人体や環境にも悪い影響を与える合成洗剤そのものをやめて、石けんでシンプルな生活をしようと呼びかけたい」と語ります。