日本消費者連盟
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【要求書】スマートメーターのオプトアウトに係る要求書・経済産業相宛(2021年8月19日)

 

経済産業大臣 梶山 弘志 様

 

スマートメーターのオプトアウトに係る要求書

 

日頃より送配電事業にご尽力いただき、ありがとうございます。

経済産業省資源エネルギー庁(以下、「エネ庁」と言います。)の「次世代スマートメーター制度検討会」(以下「本検討会」と言います。)は本年2月の「中間とりまとめ」において、スマートメーターの「オプトアウト(拒否)」の権利を認める方針を打ち出しました。私たちは、スマートメーター導入当初から拒否権を認めるよう求めてきたので、一歩前進と受け止めております。同時に、数々の問題点がまだ残っていると思われるため、以下の各項目について要求させていただきます。

1、オプトアウトを希望するすべての需要家について、無条件にこれを認めてください。
スマートメーターを拒否したい理由は、電磁波被曝、プライバシー漏洩の懸念、火災、料金高騰など計量の正確さへの懸念など、さまざまです。これらの理由は問わず、オプトアウトを希望するすべての需要家に対して、無条件でオプトアウトを認めてください。

2、オプトアウトで、アナログメーターの設置を希望する需要家には、アナログメーターを設置してください。
私どもが本年5月、エネ庁のご担当者からヒアリングをした際、オプトアウトはデータの送受信を行う「通信部」をスマートメーターから外すという対応になるのでは、との見通しを、ご担当者は示されました。同時に「電力会社の詳細な仕様設計のほうにお任せしていくと考えている」とも述べ、最終的には一般送配電事業者が判断すること、との考え方も示されました。
生活環境中の「微弱な」電磁波にも反応して様々な症状に苦しむ電磁波過敏症の方々の多くは、スマートメーターではなくアナログメーターを設置することにより、または、通信部を外したスマートメーターを設置することによって、体調不良を回避または軽減できます。しかし、スマートメーターはそれ自体が電子機器であるため、メーターから発生する電気的なノイズが電力線を通じて家庭内に侵入することにより症状が引き起こされる電磁波過敏症の方々も、少数ながらいらっしゃいます。
また、スマートメーターを使い続ければ、プライバシー漏洩(30分ごとの電力使用量データは数十日分がスマートメーター本体内に蓄積されている)、スマートメーターから多発している火災や、料金急騰(アナログメーターからスマートメーター交換後に料金が2~8倍に高騰した例が少なくとも20件ある[1])といった懸念も残ります。
以上の通り、スマートメーター利用による様々な影響や懸念を避けることが、オプトアウトの目的です。ですので、「通信部」を外すだけでスマートメーターを使い続けさせることは、本来あるべきスマートメーターのオプトアウト(拒否)の姿ではありません。

3、オプトアウトを即時認めてください。
中間とりまとめは、オプトアウトの「開始時期等について、今後その対象や方法も含めエネ庁の審議会等において議論を進める」とあります。一方で、アナログメーターへの交換、スマートメーターの通信部外しにより、事実上のオプトアウトを行っている需要家は既に大勢います。同時に、送配電事業者の側が拒否をすんなりとは認めないケースも、いまだに見られます。オプトアウト容認の公式な開始時期を遅らせることに意味はありません。

4、オプトアウトの際に追加料金を徴収するという方針を見直してください。
「中間とりまとめ」は、オプトアウトの「選択に伴う追加コストは需要家に求めるべきという点について合意を得た」としています。追加コストを求める理由について上記ヒアリングの際、エネ庁のご担当者は「海外の制度を参考にしたところ、需要家負担がほとんどだったので」「その人にしかかからないお金を需要家みんなで負担するというのは違うだろうという考え方だ」と述べられました。
本検討会の配付資料には、海外の制度について、米国の例のみが紹介されています。オプトアウトを認めている国は他にも多くあり、追加料金を徴収していない国もあります。また、本検討会の配付資料の引用元には、ニューハンプシャー州とバーモント州の2州は追加料金を徴収していないことが示されています[2]。しかし、配付資料はこれらの事実に触れず、海外ではすべてのケースでオプトアウトの際に追加料金を徴収しているという誤解を本検討会の委員へ与えかねないものとなっています。
視点を変えれば、現行のすべてのスマートメーターにはBルートの通信機能が搭載され、そのためのコストが総括原価方式により電気料金へ反映されていますが、Bルートの申込み率は、わずか0.06%です[3]。ごく一部のBルート利用者「にしかかからないお金を需要家みんなで負担」しているのです。オプトアウトのみを総括原価方式の例外とする合理的な理由はありません。
しかもBルート利用者の場合と違い、オプトアウト希望者の多くは、スマートメーターから発生する電磁波(通信電波)で現実に体調が悪くなるという、切実な理由があります。自宅だけでなく、近隣にもお願いしてオプトアウトしてもらっている例もあります。困っている方々から追加料金をとるという発想は実に問題です。たとえるなら、車いすで電車に乗る人が駅員から補助をしてもらったときに追加料金を取られるようなものです。
ちなみに米国では、オプトアウトに伴う追加料金は「障害を持つアメリカ人法」に照らして違法だと訴えた電磁波過敏症の需要家の主張を裁判所が認め、追加料金が返還された事例があります[3]。日本の障害者差別解消法も、全ての障害者への「必要かつ合理的な配慮」を事業者に求めています。
そもそも、スマートメーターを強制すべき法的根拠はありません。オプトアウトは需要家に当然認められるべき権利であり、その権利の行使に対して追加料金をとることは、需要家に対して不公正かつ不公平であると言うべきです。

5、オプトアウトを希望している需要家から意見を聴く場を設けてください。
「中間とりまとめ」は、オプトアウトの「選択に伴う追加コストは需要家に求めるべきという点について合意を得た」としています。しかし、本検討会の議事録によると、オプトアウトについて委員の方々からの発言は少なく、いつ「合意を得た」のが不明です。この点について、エネ庁のご担当室長は「事務局からの提案に対し、委員から反論がなかったから」合意を得たものと判断した旨、説明されています[5]。
委員からの発言が少ないのは、委員の方々がオプトアウトについて、ほとんど理解されていないからだと思われます。本検討会を引き継いで今後の検討を行う審議会の場においてオプトアウトを希望している需要家から、その切実な理由など、意見を直接聞く機会を設けてください。

6、以上の1~5に対して、2021年9月9日までに、書面でご回答するとともに、回答について意見交換をする場を設けてください。

 

[1]『東京新聞』2021年3月22日付
[2]全米州議員協議会https://www.ncsl.org/research/energy/smart-meter-opt-out-policies.aspx
[3]三菱総研「次世代スマートメーター導入に向けた論点について」(「第5回次世代スマートメーター制度検討会」配付資料)
[4]NPO環境健康トラストhttps://ehtrust.org/electric-company-pge-refunds-smart-meter-opt-out-fees-to-emf-disabled-customer/
[5]『東京新聞』2021年8月1日付

 

2021年8月19日

【提出団体】
電磁波問題市民研究会 代表 野村修身
本件の担当:網代(あじろ)太郎

【賛同団体】(五十音順)
アナログメーターの存続を望む会 代表 東麻衣子
電気代一時不払いプロジェクト 共同世話人 戸山灰、大畑豊
特定非営利活動法人市民科学研究室 代表理事 上田昌文
特定非営利活動法人日本消費者連盟 代表運営委員 大野和興