電力システム改革の電力の小売り自由化の法案が国会で議論され始めています。一方で、ガス(都市ガス)についてもガスシステム改革に関する意見募集(募集要項)が始まり、自由化のための検討がされています。ガスの自由化については、なんのための自由化かが消費者に分かりにくいといった意見がだされています。2014年4月23日に主婦連合会がガス自由化についての学習会を開催しました。ガスの自由化について、エネルギーシステム改革市民委員会として審議会に要望書を提出しました。
2014年4月25日
ガスシステム改革小委員会
委員長 山内 弘隆 様
ガスシステム改革において、ガス小売の参入全面自由化後も、
ガス小売料金規制を一定期間残すこと等を要望いたします
エネルギーシステム改革市民委員会
冠省
2013年11月から、資源エネルギー庁のガスシステム改革小委員会(以下、小委員会といいます)において、一般ガス事業(注)小売全面自由化を含む、ガスシステム改革の在り方が議論されています。
第6回の小委員会においては「都市ガス小売の全面自由化を基本的な方向として具体的な制度設計の審議を進めること」とし、それまでの多くの一般ガス事業者へのヒアリング等を踏まえて、また、自由化は消費者の要望であることを前提として、2016年を目途としたガス小売全面自由化の議論が進められています。
14年4月23日に主婦連合会主催でガス料金自由化の学習会が開催されましたが、消費者にとっては、ガス小売全面自由化がもたらす負の面についての情報が提供されていないとの意見が相次ぎました。
2014年4月に開催された第7回小委員会では、小売事業に係る諸制度について議論されましたが、「小売料金規制の必要性」の観点から、以下の点について要望いたします。
記
1「料金の自由化」の意味について消費者に十分説明し、経過措置等の検討をしてください。
小売の自由化には、「参入の自由化」と「料金の自由化」の2つの異なる意味があります。現状で、ガスの小売りについて新規参入等が促進され、競争が十分に働く公正な市場が形成されるかについては疑問があります。
消費者の選択の権利確保、消費者メリット拡大の観点から、ガスの小売全面自由化そのものにはメリットがあると考えられますが、電力システム改革と併せて、消費者にとって、安定的で、クリーンで、できるだけ安価なエネルギーが選択できるような制度設計が必要です。
また、秩序なき即時料金自由化は、ガス事業者による料金値上げの可能性を否定できず、消費者利益を損ねる可能性があります。
現在議論が進められている「電力」システム改革においては、2016年を目途とする「参入の自由化」後も一定期間の経過措置を設け、「料金の自由化」は2018~2020年を目途に実施するとされています。電力の場合には、参入自由化と同時、または即時に料金も自由化された場合、事業者が料金を自由に値上げするおそれがあるため、消費者保護の観点から「秩序なき自由化」を避けることが経過措置の狙いです。
ガスにおいても、健全かつ実質的な競争環境が形成されない場合、無秩序な料金自由化は料金上昇を招くおそれがあり、一定期間、都市ガス事業者に規制料金を維持することを義務付けるなど、経過措置について十分な検討をしていただくことを求めます。
2 料金自由化について消費者の意見をきいてください
都市ガス自由化の議論においては、都市ガス事業者の多くは即時の料金自由化を希望しており、資源エネルギー庁も同様に(むしろ、より積極的に)、即時の料金自由化を進めようとしているように見受けられます。
ガス自由化の議論については、パブリックコメント募集だけでなく、消費者の意見も聞いてください。
また、消費者庁からのオブザーバー参加もされていますが、広く消費者の声に真摯に耳を傾け、慎重に制度設計を進めていただくことを求めます。
以上
(注)本要望書では、「ガス」「ガス事業」とは一般ガス事業(いわゆる都市ガス)を指します。
(連絡先) エネルギーシステム改革市民委員会
真下 俊樹(代表)mashimot@gmail.com
古賀真子(事務局長)makogarin@gmail.com
Fax: 03-6800-3749
*電力システム改革市民委員会は、2014年4月1日付で、エネルギーシステム改革市民委員会に名称変更しました。
*引き続き電力システム改革をはじめ、エネルギー問題について取り組んでいきます。(共同代表 古賀真子)