日本消費者連盟
すこやかないのちを未来へ
企業や国家の利益よりも人のいのちや健康を優先する世の中に変えたいと活動しています。

エネルギーまで見据えた 地産地消を実践
──民間稲作研究所を見学──

稲葉光國さん

2011年6月29日、食の安全・監視市民委員会はフィールドワークとして、栃木・上三川(かみのかわ)町の「民間稲作研究所」を見学しました。

代表の稲葉光國さんが1997年に丈夫な苗づくりを提案してスタートしたこの組織は、これまで様々な環境保全型稲作のアイデアを提案してきました。現在、県からも有機栽培用の種子の採種ほ場として指定を受けています。

稲葉さんによると、周辺の農薬を使用する水田ではスズメやツバメの減少やイナゴ、ホタル、トンボなどの死滅が顕著だそうです。また、農薬防除を行なった水田で逆にカメムシの被害が広がったりする一方、稲葉さんの有機水田には天敵のクモやカエルなどがおり、また、水量管理をこまめに行なって雑草の発生を抑えており、10年の猛暑の中でも1反(10a)あたり7俵が取れたそうです。

民間稲作研究所のほ場

セシウムを送り返す

また、このたびの原発震災においても、「大豆・ひまわり・菜の花プロジェクト」と称するユニークな試みを立ち上げました。汚染された土壌を浄化するためにこれらの作物を積極的に植え、刈り取って回収します。

可食部は放射能検査を行ない、合格したものは食料・植物油として販売し、使用後の廃油はディーゼルエンジンの燃料に活用します。

一方、検査で不合格となったものは、茎・葉などの汚染部位は火力発電の燃料にし、搾油滓はメタン発酵処理でメタンガスを取り出し、消化液からセシウムを吸着させて浄化し液肥にします。そして、火力発電で発生したセシウム含有の吸着灰とセシウムの吸着物は、溶融してガラス固化し、福島第一原子力発電所へ送りつけるというものです。

食べものばかりでなく、エネルギーの地産地消を目指すこうした取り組みに、参加者一同驚かされました。

(山浦康明)