日本消費者連盟
すこやかないのちを未来へ
企業や国家の利益よりも人のいのちや健康を優先する世の中に変えたいと活動しています。

一般用医薬品のネット販売について、厚労省と楽天に申し入れをしました

一般用医薬品のネット販売が安倍内閣の成長戦力として公言され、今国会で衆議院での薬事法改正法案が可決されました。今回の改正で、医療用から切り替わったばかりの市販薬(スイッチ直後品である一般用医薬品23品目)について、インターネット販売が可能になるまでの安全性の調査期間を3年とし、劇薬指定のエフゲン(殺菌消毒薬)など5品目以外はネット販売を原則として全面解禁する方向であると発表されました。これに対して、楽天の三木谷社長が、全面解禁を主張していることについて、厚労大臣と楽天に対して申し入れを行いました。

2013日消連第 27 号

2013年11月7日

厚生労働大臣 田村 憲久 様

特定非営利活動法人日本消費者連盟 共同代表 古賀 真子

                 共同代表 真下 俊樹

                 共同代表 山浦 康明

 

薬事法改正に際し、一般用医薬品23品目についての安全性調査を厳密に行うこと、及び

ネット販売における副作用被害の救済ルールを明確に創設することを求めます。

 

冠省 貴職は今国会での薬事法改正について、2013年11月6日、医療用から切り替わったばかりの市販薬(スイッチ直後品である一般用医薬品)23品目について、インターネット販売が可能になるまでの安全性の調査期間を3年とし、劇薬指定のエフゲン(殺菌消毒薬)など5品目以外はネット販売を原則として全面解禁する方向であると発表されました。

4年は必要とされていた調査期間を3年に短縮したことは、即時全面解禁を主張している楽天などのネット業界に配慮したためとされていますが、消費者の安全性を重視し、一定の調査期間は必要と判断し、即時全面解禁とはしないと決定されたことは評価できます。

しかしながら、報道によれば、株式会社楽天の三木谷浩史社長は、政府の方針に強く反対し、一般用医薬品(市販薬)のインターネット販売の一部を規制する政府案通りに薬事法が改正された場合、現在務めている政府の産業競争力会議の民間議員を辞任するとの考えを明らかにし、関係閣僚などにも辞任の意向を伝えているとされています。こうした圧力によって、医薬品等の安全性を担保すべき貴職が国民の健康を第一に考える姿勢を一歩も崩さないことを切に求めます。三木谷氏は、インターネットで医薬品を販売する企業が原告となって行政訴訟を起こし国と争うため、楽天としてもこれをサポートして、徹底的に戦うとしています。しかし、スイッチ直後品は他の一般用医薬品とは性質が異なり、医療用に準じた形での慎重な販売や使用を促すための仕組みつくりが不可欠であり、市販後も一定期間は事後調査が必要であり、大量かつ不特定に販売されるネット販売には原則としてなじみません。一律に全面解禁を唱え、政府委員を辞して裁判に訴えることこそが規制改革だとする三木谷氏の主張は、とくに以下のような事実から見て、消費者の安全を無視するものと言わざるを得ません。

2013年8月23日に開催された、「スイッチ直後品目等の検討・検証に関する専門家会合」(五十嵐隆座長、薬事・食品衛生審議会医薬品安全対策部会部会長)では、スイッチ直後品目の副作用報告として、市販薬の調査が行われています。スイッチ直後品であるロキソニンS(成分名ロキソプロフェンナトリウム水和物)では、5年間で医療用と一般用で63件の副作用死亡例が報告されています。医療関係者以外からの報告では10歳未満の男児が服用後スティーブンス・ジョンソン症候群を起こして死亡した例や鼻咽頭炎で内服した20歳代の女性、骨折で内服したのち肺炎を起こして死亡した50歳代の男性の例などの報告あります。第1類医薬品であるロキソニンSは優れた鎮痛効果を有する反面、副作用も重篤なものがあり、他の解熱鎮痛薬、かぜ薬、鎮静薬との併用は禁止されており、インターネット通販で購入することはできないとされています。一律即時にネット販売を全面解禁した場合、頭痛や歯痛で安易に使用して副作用が起きる機会が増加することが危惧される一般用医薬品の1つといえます。

医薬品販売は歴史的にみても、多数の業界の利益と消費者の安全性、利便性が複雑に利害が絡む問題です。「ネット販売」という販売方法が発達してくることは一般用医薬品の特徴から自然な流れともいえますが、スイッチ直後品目については慎重な対応が求められます。また、「流通が限定されていない」ために国外からの流入も起こり得ることであり、国内の規制の対象外である医薬品や非合法のドラッグ類が国内に流通することに対する対策も併せて考える必要があります。

そもそも、販売者である薬剤師又は登録販売者には医薬品の適正使用のための情報提供の努力義務と医薬品による副作用等の報告義務が定められています。安全性の観点から、「対面販売」が重視されてきたのは、販売に当たる薬剤師等が自ら購入者と直接に対面し,直接の視認及び能動的・双方向的な聴取をするという「直接的」な手段によることで、購入者が販売の責任者を明確に認知できるため、責任が明確となるという点でした。「ネット販売」による手段は、専門家でない者による情報提供などのなりすましの危険のおそれも大きく、購入者が販売者を明確に認知でき、副作用が発生した場合にも迅速な対応や救済に向けた対策も必要です。

薬害の歴史の中で改正されてきた薬事法や、被害者の長年にわたる裁判闘争の中で整備されてきた医薬品副作用被害救済制度は医師や薬事師の協力により、制度を患者に伝えることで機能してきました。市販薬による副作用報告は年間10万件を超えると言われている中、今回の規制緩和により安全性が著しく阻害されるようなことはあってはならないと考えます。

一般用医薬品23品目についての安全性調査を厳密に行うこと、及びネット販売における副作用被害の救済ルールを明確に創設することを強く求めます。

  以上。


2013日消連第28号

2013年11月7日

楽天株式会社

代表取締役会長兼社長 三木谷 浩史 様

特定非営利活動法人日本消費者連盟 共同代表 古賀 真子

                 共同代表 真下 俊樹

                 共同代表 山浦 康明

 

厚生労働大臣あて送付文書提出のご連絡及びインターネット販売した場合の一般用医薬品の副作用被害に対する対応についてのご質問

 

冠省 特定非営利活動法人日本消費者連盟は「すこやかないのちを子や孫の世代に」を創立以来のスローガンとして、生命の安全と健康を第一に考え、消費者のさまざまな権利が守られる制度をつくるために、私たちの要求を企業や行政に積極的に働きかけ実現をはかる活動を行う、財政的には自立、政治的には超党派の消費者団体です。食の安全を守る取り組みや薬害や医療被害の活動も他団体と広く連携して行っています。

今般の薬事法改正に関して、本日付で厚生労働大臣あてに添付の申し入れ書(2013日消連第27号)を送付いたしましたのでご連絡いたします。医薬品はその効用の反面、副作用がつきものです。私たちは規制改革の一環として、利便性の名のもとに、安全性が後退することを危惧しつつ、この間の一般医薬品のインターネット販売に関する国の審議過程を見て参りました。

2013年11月6日の報道における、貴殿のご発言は、薬害による被害者団体やそれを支える市民団体にとって、にわかには信じがたいものでした。以下の点について、貴社のお考え及びご対応についてご質問させていただきたいと思います。ご多用のところ恐縮ですが、来る11月22日までにご回答いただきますようお願い申し上げます。

 

1 今回の薬事法改正に際し、一般用医薬品23品目についての安全性等については、どのようにお考えですか。

2 現行の医薬品の副作用被害救済制度は、病院・診療所で処方された医薬品、薬局などで購入した医薬品を適正に使用したにも関わらず発生した副作用による場合が救済の対象とされています。貴社のサイトから購入した場合に副作用症状が出た場合の救済制度へのアクセスはどのように対応されるご予定ですか。

3 医薬品の副作用被害救済制度では、製造販売者などに明らかに損害賠償責任がある場合は救済の対象にならないとされていますが、貴社は製造販売業者にあたるとお考えですか。あたらないとした場合の副作用被害について、貴社はどのような立場となるとお考えですか。

以上

(共同代表 古賀 真子)

 

Tagged on: