日本消費者連盟
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【要望書】遺伝子組み換え表示の改善とゲノム編集食品の表示義務付けを求める要望書(2022年10月25日)

 

2022日消連第10号
2022年10月25日

内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全担当) 河野太郎様
消費者庁長官 新井ゆたか様
消費者委員会委員長 後藤巻則様

遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン
代表 天笠啓祐
特定非営利活動法人日本消費者連盟
共同代表 亀山 亜土
共同代表 佐々木 ミヨ子
共同代表 マーティン・フリッド

 

遺伝子組み換え表示の改善とゲノム編集食品の表示義務付けを求める要望書

 

私たちは食の安全・安心のために活動する消費者団体・市民団体です。消費者の知る権利・選ぶ権利が保障される食品表示制度を求めて活動しています。

さて、2017年度に開催された遺伝子組換え表示制度に関する検討会の報告書に基づき、2023年4月から「遺伝子組み換えでない」表示の条件が厳しくなります。これにより、これまでできるだけ遺伝子組み換えでない食品を選びたいという消費者の要望に応えるべく努力してきた食品メーカーなどによる「遺伝子組み換えでない」表示がなくなりつつあります。私たちは、遺伝子組み換えについての知る権利と選ぶ権利を失うことになることを危惧しています。また、2020年以降、ゲノム編集食品の流通が始まりましたが、表示制度はありません。消費者の権利である「知る権利」「選ぶ権利」がないがしろにされています。

私たちは、遺伝子組み換え表示制度の改善とゲノム編集食品の表示義務付けを強く求め、以下のような改善を要望します。併せて、これについての意見交換を求めます。

 

1、「分別生産流通管理済み」等の表示を早急に是正すること
「遺伝子組み換えでない」の表示に代わって最近「分別生産流通管理済み」「IP管理済み」等の表示が増えています。これらは遺伝子組み換えでない原料を管理していることを示す表示ですが、「遺伝子組み換え」の文字が欠落しているために、何を分別生産流通管理しているかまったくわかりません。任意表示とはいえ、このような消費者に理解不能な表示は問題です。これらの表示は消費者庁の検討会資料と説明会資料に例示されていたもので、消費者庁にも責任の一端があります。遺伝子組み換え原料を分別流通管理していることがわかるような表示に早急に是正することを要望します。

 

2、遺伝子組み換え表示基準量を引き下げること
遺伝子組換え表示制度に関する検討会では、「実行可能性」の言葉の下に業界の意見だけが取り上げられて、表示基準が見直されませんでした。
しかし5%超かつ3位以内という現在の基準は、EU(欧州連合)やオーストラリア、韓国など諸外国と比較しても緩すぎます。現在、流通している食品における遺伝子組み換え原料混入率に照らし1%程度とする等、基準の改定を要望します。このように表示基準量を引き下げれば、「遺伝子組み換えでない」表示を表示基準量に戻しても問題ないと考えます。
遺伝子組み換え食品が溢れているにも関わらず「遺伝子組み換え」の表示がなされていない現行表示制度の下で、「遺伝子組み換えでない」の表示は消費者の商品選択の助けとなっていました。こうした状況と制度の歪みを総括し、再検討を要望します。

 

3、社会的検証を取り入れ、食用油等の遺伝子組み換え表示を義務付けること
EUでは食用油等にも遺伝子組み換え表示を義務付け、社会的検証で規制が運用されています。日本でも、産地偽装問題や日付偽装問題など、社会的検証で規制が運用されています。遺伝子組み換え表示にも社会的検証を取り入れ、表示を拡大してください。また関連省庁に対して、トレーサビリティシステムの拡大を要請してください。

 

4、ゲノム編集食品の表示を義務付けること
ゲノム編集食品には現在、表示が義務付けられていません。貴庁は、ゲノム編集技術は自然界の突然変異と区別がつかない、従来の育種技術である放射線育種などと区別がつかないことを理由に義務化は難しいと言っていますが、納得できません。ゲノム編集技術は新たな遺伝子操作技術です。これまで食経験のない食べものを私たちは表示もないまま口にする可能性があります。そもそも、ゲノム編集では同時に多数の遺伝子が破壊されますが、このようなことは自然界では起こりません。さらに、植物のゲノム編集では、ゲノム編集のための遺伝子カセットが遺伝子組み換え技術によって植物細胞に導入され、遺伝子組み換えで懸念されるリスクがそのまま残っています。
貴庁は検証が難しいことを表示制度見送りの理由の一つとしていますが、消費者はこうした不安のあるゲノム編集食品の表示義務化を求めています。早急に社会的検証による表示制度の確立を要望します。

以上