11月上旬に「六ヶ所再処理工場」に反対し放射能汚染を阻止する全国ネットワークの主催で、福井県敦賀市にある高速増殖炉もんじゅを見学しました(消費者リポート17年12月号)。その際にキツネにつままれたような不思議な体験をしました。
現地で原発反対運動を続けて来られた松下照幸さん(森と暮らすどんぐり倶楽部)の説明によると、もんじゅ建設地の下には大きな活断層2本がV字のようにあり、地震が起きたら大変とのことでした。そのことを、もんじゅ見学で案内してくれた日本原子力研究開発機構の職員の人に尋ねた時のことです。
「いえ、それはあちらの○○の地域のことです」と言って否定されたのです。そこで先ほどそのように聞いたのですがと言うと、黙って別の話題に移られてしまいました。難しい原子力の話を自信ありげに説明する専門技術員ですから、私はつい松下さんの話を聞き間違えていたのかと自分を疑いました。
見学が終わってもう一度、松下さんに尋ねてみました。すると深いため息とともに彼はこう言ったのです。「アイヒマンという男を知っていますか?ナチスでユダヤ人を大量虐殺した最高責任者ですが、捕まった時に自分はただ指示に従っただけと弁明したのです」。のちに彼を“凡庸の悪”と哲学者ハンナ・アーレントは表現しました。
自分は何も悪いことをしていない。指示に忠実に従っているだけ。世間でもんじゅは失敗だったと言われていることすら知らないのか?と思えるほど、堂々ともんじゅの“実績”を披歴する職員。彼らの脳は都合の悪い情報を無意識のうちに認識しないようにできているのか、それとも私が本当にキツネにつままれていただけなのでしょうか。
(杉浦陽子)