日消連では、2013年6月15日の第40回総会で、憲法96条発議要件緩和に反対する決議文を採択しました。各地で憲法改正についての議論が進む中で、自民党の憲法改正草案について、とてもわかりやすく説明したまんがが発表されましたのでご紹介します。
このまんがは、3.11の福島第一原発事故により、福島県郡山市から実家の豊橋に母子避難している方と、日消連の会員で日消連の新刊「せっけんシンプルライフ」の表紙の作成をお願いした東京から愛知県豊橋市に避難したデザイナーなどが設立した「豊橋いのちと未来を守る会」によるものです。給食・環境の放射能測定要望書を豊橋市に提出するに当たって設立された市民活動団体で、これまでにがれき処理問題についてのリーフレットなどを作っています。
身近な問題を生活の中から取り上げ、わかりやすくまんがやイラストを作成する活動する中で作成された憲法改正問題について、「ちゃんと知らなきゃ大変だ!」です。
http://nabeho.com/inomira/have_to_know.html
アベノミクスによる、経済再生への期待が高まっています。7月21日の参議院選挙は、TPP問題、脱原発問題、消費税問題などが焦点になると思われますが、憲法改正について、私たちが知るべきことを、自民党の改正草案をもとに考えていきましょう。日消連では、自民党の憲法改正草案への注目を呼び掛けますが、改正手続きの緩和による憲法改正に反対しています。関心をもって参議院選挙に投票に出かけましょう!
(参照)
現行憲法・自民党草案.対照表
http://www.dan.co.jp/~dankogai/blog/constitution-jimin.html
自民党新憲法草案全文(05年10月28日発表)
http://tamutamu2011.kuronowish.com/jiminkaikenann.htm
(共同代表 古賀真子)
憲法第96条の発議要件緩和に反対します
日本国憲法第96条は、憲法の改正の要件として、国民に対する改正の発議の提案は各議院の総議員の三分の二以上の賛成で行い、特別の国民投票又は国会の定める選挙時の投票で国民の過半数の賛成を得なければならないとしている。
自由民主党は,2012年4月27日、日本国憲法改正草案を発表し、第96条の改正規定を、衆参各院の総議員の過半数で発議するように変更しようとしている。日本維新の会も同様の改正要件の緩和を提案している。
2012年12月16日の衆議院議員総選挙の結果、自民党と日本維新の会、みんなの党が合計366議席となり、衆議院において憲法改正の発議要件である総議員の3分の2以上を憲法改正を主張する三党が占め、自民党単独でも約6割の294議席を確保した。 安倍晋三首相は、憲法第96条の改正に取り組む旨を明言しているが、憲法第96条の発議要件を緩和しようとする目的は,まず改正規定を緩和して憲法改正をやりやすくし、その後,憲法第9条や人権規定、統治機構の条文等を改正しようとするものである。
憲法は、政治権力を制限して人権を保障する立憲主義の立場に基づいて制定されているところ、基本的人権を守るために、国家権力の組織を定め,たとえ民主的に選ばれた国家権力であっても権力が濫用されるおそれがあるので、その濫用を防止するために国家権力に縛りをかけるための国の基本法である。
立法権は憲法に拘束されるところ、憲法は、個人の尊重を最大の価値として、人権をあらゆる国家権力から不可侵のものとして保障する根本規範である。基本的人権の尊重こそが憲法の最高法規性を実質的に裏付けるものであり、憲法は最高法規性を宣言し、裁判所の違憲立法審査権、憲法第96条の厳格な改正規定と一体のものとして,憲法保障の重要な役割を担うものである。
発議要件を3分の2以上から過半数に改正すると、憲法改正発議はきわめて容易となる。日本国憲法は国の基本的な在り方を定める最高法規であるから、憲法が改正される場合には、国会での審議においても、国民投票における国民相互間の議論においても、いずれも十分慎重な議論が尽くされた上で改正がなされるべきことが求められ、法律制定よりも厳しい憲法改正の要件が定められたのであり、国会の発議要件が総議員の3分の2以上とされたことは重要な意味がある。十分慎重な議論が尽くされないままに簡単に憲法が改正されるとすれば、国の統治体制に関わる基本法が安易に変更され、基本的人権の保障が形骸化されることになり、絶対に許されない。
来る7月21日の参議院選挙で、仮に自由民主党等が大勝すれば、多数党は簡単に憲法改正案の発議が現実のものとなる。日本国憲法第96条について提案されている改正案は、いずれも国の基本的な在り方を不安定にし、立憲主義と基本的人権尊重の立場に反するものとして許されない。
憲法改正の発議要件を緩和しようとする憲法第96条改正には強く反対する。
2013年6月15日
特定非営利活動法人日本消費者連盟第40回総会参加者一同