日本消費者連盟
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【意見書】ゲノム編集技術の取扱いに関する意見書(2018年10月25日)

 

2018日消連第6号
18FSCW第12号
2018年10月25日

厚生労働大臣 根本匠様
薬事・食品衛生審議会 食品衛生分科会 新開発食品調査部会
遺伝子組換え食品等調査会座長 近藤一成様
遺伝子組換え食品等調査会委員 各位

遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン
代表 天笠啓祐
特定非営利活動法人日本消費者連盟
共同代表 天笠啓祐
共同代表 大野和興
食の安全・監視市民委員会
代表 神山美智子

意見書

 9月19日に、ゲノム編集技術についての食品衛生法での方針を決定するため、薬事・食品衛生審議会の新開発食品調査部会・遺伝子組換え食品等調査会が開催されました。そこで行われた議論の内容を踏まえて、以下の点を要請します。

1、今回の調査会は、ゲノム編集技術を推進することが前提に審議が進められているといわざるを得ません。とくに、環境省は規制の対象にした、目的とする遺伝子と相同的な配列にわずかな塩基を導入するだけのケースを自然界でも起こるとして、規制の対象から外す方向で議論が進められたことは、審議の在り方から外れています。

2、ゲノム編集に関して限定して議論を進めるとしながらも、欧州で規制の対象になった新植物育種技術の全体に影響をもたらすように言及されており、例えば最終的に組み換え遺伝子が残らないケースは規制を行わないなどの問題が提起されていました。これもまた、審議の在り方から外れているといわざるを得ません。

3、遺伝子組み換え技術では微生物に限って規制の対象から外したセルフクローニングとナチュラルオカレンスを、微生物にとどめず植物などに拡大する方向で議論が進められましたが、これもまた、審議の在り方から外れているといわざるを得ません。

4、オランダ・デルフト大学の研究チームや米コロンビア大学の研究チーム、英ウェルカム・サンガー研究所の研究チームによるゲノム編集技術を用いた動物実験で、オフターゲットやモザイクなどの現象が起きており、それらが多くの個所で、しかも大規模に起きていることが報告されています。従来の突然変異を与える方法とゲノム編集で遺伝子を壊す方法での、オフターゲットやモザイクなどの違いが明確にされないまま審議を進めていくことは、科学的根拠に欠けるといわざるを得ません。

5、新たな科学的知見として、CRISPR-Cas9は、効率を上げようとすると、がん抑制遺伝子の働きを妨げ、がんを促進することが指摘されています。このことはスウェーデン・カロリンスカ研究所やノバルティス社の研究者によって確認されています。このような科学的知見に対しても見解を示さないまま審議を進めていくことは、科学的根拠に欠けるといわざるを得ません。

6、欧州では2018年7月に欧州司法裁判所が、ゲノム編集技術を含む新たな育種技術は遺伝子組み換え作物と同様に規制すべきという判断を示しました。9月19日の遺伝子組換え食品等調査会では事務局からゲノム編集技術の取扱いに係る諸外国の状況について簡単な報告があっただけで、委員の間で欧州司法裁判所の判断について議論されることはありませんでした。今後の論点として「ゲノム編集技術を利用して得られた食品の検知法」があがっていますが、最終製品で検知可能かどうかだけでなく、欧州司法裁判所の判断の内容やその経緯等を検証した上で取扱いについて議論するよう求めます。

7、ゲノム編集技術を使った食品の取扱いという、市民生活に直接影響する極めて重要な問題を決定するにあたっては、消費者や農家も含めての幅広い議論が必要です。今後の検討スケジュールとして、遺伝子組換え食品等調査会をたった数回開いた上で11月頃には意見をとりまとめ、2月頃には意見募集を行うことになっていますが、これでは市民の間で議論を深めることはできません。とりまとめを行う前に消費者や農家からの意見を聞く機会を設けるよう求めます。そして、拙速に結論を出すのではなく、市民を交えて議論を尽くすことを強く求めます。

以上