日本消費者連盟
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【意見書】「食料・農業・農村基本法」の見直しに対する意見書(2023年4月25日)

 

2023日消連第2号
2023年4月25日

農林水産大臣
野村 哲郎 様

特定非営利活動法人日本消費者連盟
共同代表 亀山 亜土
共同代表 佐々木 ミヨ子
共同代表 マーティン・フリッド

 

「食料・農業・農村基本法」の見直しに対する意見書

 

私たちは、安全・安心な暮らしのために活動する消費者団体です。
政府は昨年9月から「食料・農業・農村基本法」の見直しを始め、今年6月をめどに改正方向を取りまとめるとの方針が示されています。わずか1年足らずの間に、大切な食や農の今後の方向が決められることに、私たちは大変危惧をしています。特に、消費者・市民の視点が蔑ろにされることは許されません。
これまで「農業基本法」や「食料・農業・農村基本法」において、食料の量や価格面が優先され、輸入の拡大・自由化が進められました。その結果、食料自給率は低下を続けるとともに、食の安全や環境保全でも大きな問題を引き起こしてきました。そして、国内農業は長期にわたって、農業就業人口の減少や高齢化、農業所得の大幅減少、耕作放棄地の増加が続いています。
しかし、いま世界的に食料価格の高騰や不足が深刻になっており、これまでの輸入依存、規模拡大・効率化一辺倒の農政では国民の食を守られないことは明白となりました。この反省の上に立ち、当面、基本法見直しにあたっては、以下の点を反映されるよう要請します。
また、これらの問題について、私達と直接、話し合いの機会を持っていただきますよう申し入れます。話し合いに応じていただけるかどうかを日本消費者連盟までご連絡をいただきますよう要請します。

1. これまでの「農業基本法」「食料・農業・農村基本法」がもたらしてきた問題を洗い出し、その反省の上に立った新たな基本法の策定を行うこと。そのため、拙速に結論を出すことなく、広く市民や生産者も参加する中で、討議と対話を重ねること。

2. 食料自給率の向上を図ることを基本法の目的として、その指標を明確にし、達成に向けた取り組みの具体化を図ること。また、その達成状況を毎年公表し、国会で討議すること。

3. 安全な食料の安定供給を図ることや、生物多様性を含む農業・農村の多面的機能の発揮、持続的な循環型農業の展開、多様な人々の参加する農村社会の実現をめざすこと。

4. 全ての人が安定して食を得ることが出来る権利を明記すること。また、生産者が安定的に農業生産できる権利を保障すること。

5. 食の安全や環境保全のため、有機農業の推進を図ること。そのため、農薬や化学肥料の規制強化や、生産資材の地域自給、エネルギー多投型の農業からの転換をはかること。

6. 細胞農業を含むフードテックや生命情報工学のイノベーションの推進はやめること。

7. 農業の「担い手」を多様化し、多彩な小規模家族経営や兼業農家、自給農家、「半農半 X」、「市民農園」、援農なども含めて「国民全体の農業参加」を位置づけること。

8. 学校給食で有機食材を活用できるよう、食育基本法や学校給食法なども含めて見直しを進めること。

9. 現在、食と農にかかわる政策が省庁ごとに分割されていることから、縦割り行政を打破して、食と農の政策を統合的・横断的に結びつけること。

以上