日本消費者連盟
すこやかないのちを未来へ
企業や国家の利益よりも、人のいのちや健康を優先する世の中にしたいと活動しています。

【特別決議】「ゲノム編集食品の厳格な規制と表示義務化を求める特別決議」などを総会で採択(2025年6月29日)

 

日本消費者連盟は2025年6月29日の第52回定期総会で、「ゲノム編集食品の厳格な規制と表示義務化を求める特別決議」、「消費者行政の抜本的改善を求める特別決議」、「日米貿易交渉での農業・食の売り渡しに反対し国内農業と食の安全を守るための特別決議」、「戦後80年、軍拡をやめ独自の外交路線で平和を築くよう政府に訴える特別決議」の4本の決議を採択しました。

 

ゲノム編集食品の厳格な規制と表示義務化を求める特別決議

日本では現在、ゲノム編集されたトマトやマダイ、トラフグ、ヒラメが販売されています。まだ流通してはいないものの、トウモロコシ、ジャガイモ、ティラピアの届出が消費者庁等によって次々と受理されています。日本は世界でもっともゲノム編集食品が出回っている国といっても過言ではありません。

その一方で、ゲノム編集食品の認知度は低いままです。消費者庁による「令和6年度食品表示に関する消費者意向調査」では、ゲノム編集食品を知っていると答えた人は1割にも満たないことが明らかになりました。ほとんどの消費者は、ゲノム編集食品が人為的に遺伝子を壊して作る自然の摂理から逸脱した食べものであること、食べものとしての安全性は確認されていないことを知らないのです。

日本消費者連盟はゲノム編集食品の危険性をいち早く訴え、流通を許さないための運動を続けています。表示義務化を求める取り組みもその一つです。消費者庁はゲノム編集食品の表示は義務化しないと決めましたが、それに対して私たちは、全国の地方議会で国に対して表示の義務化を求める意見書を採択する運動を始めました。すでに30近い地方議会で表示を求める意見書等が採択されています。

「すこやかないのちを未来につなぐ」を掲げて運動する日本消費者連盟は、国に対してゲノム編集食品の厳格な規制を求めるとともに、消費者の知る権利・選ぶ権利を保障するゲノム編集表示の一刻も早い義務化実現のため、全国の消費者とともに連帯して取り組みます。

以上、決議します。

2025年6月29日
特定非営利活動法人日本消費者連盟 第52回定期総会参加者一同

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消費者行政の抜本的改善を求める特別決議

2003年に設置された食品安全委員会、2009年に設立された消費者庁と消費者委員会は、消費者に軸足を移し、行政のあり方を変える動きとして、消費者から期待されるものでした。

しかし食品安全委員会は、米国産牛肉の輸入再開問題で組織としての専門性・独立性の欠如が露呈し、その後も農林水産省や厚生労働省から依頼された案件を唯々諾々と認めてきました。そしてPFASの安全性評価と農薬の再評価において、評価文献の不適切な選別が明らかになり、その信頼は大きく揺らいでいます。

消費者庁は、名前の通り消費者の立場に立たなければならないにも関わらず、食品表示に関わる検討会をはじめ、議論の場では「実行可能性」の言葉の下、企業の都合ばかりに配慮して、消費者の声を聞くことはありません。消費者委員会も近年は消費者を代表する委員はほとんど入らず、消費者行政の監視役としての役割を果たしていません。

これらの機関のこうした堕落をもたらしたのは、ひとえに政治の圧力、中でも「企業が世界で一番活躍できる」ことを目指したアベノミクス以来の経済優先の政策によるものです。

私たちは消費者行政が今こそ初心に立ち返り、消費者の権利を守るという本来の姿に生まれ変わることを求めます。

以上、決議します

2025年6月29日
特定非営利活動法人日本消費者連盟 第52回定期総会参加者一同

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日米貿易交渉での農業・食の売り渡しに反対し国内農業と食の安全を守るための特別決議

米国トランプ政権による追加関税要求が、世界に波紋を広げています。4月2日に発表された大統領令では、全ての国からの輸入品に一律で10%の追加関税を課すこと、米国の貿易赤字が大きい国に対しては個別で設定した「相互関税」を課すことが宣言されました。これらの要求は国際協定を無視した、一方的かつ不当なものです。また、この要求を機に開始された日米交渉において、農作物の輸入拡大が取引材料にされることは許されないことです。

長きにわたり、日本政府は工業製品の輸出を図るための交渉材料として農作物を差し出してきました。輸入された牛肉や米などの農畜産物は、国内農業を衰退させ自給率の低下をもたらしました。また、「日米レモン戦争」に代表される食品安全基準の引き下げにより、私たちの周りには有害な農薬や食品添加物を使用した食品や遺伝子組み換え食品など、安全性に疑問のある食べ物があふれています。

主食である米をはじめ、自給率の低い大豆やとうもろこし、国内生産が疲弊している牛肉や豚肉の輸入を拡大することは、日本の食料生産に壊滅的な打撃を与えます。また、米国政府が提示している貿易協定プログラムでは収穫後農薬(ポストハーベスト)の規制や農薬残留基準、BSE(牛海綿状脳症=狂牛病)関連輸入条件も緩和が求められており、これらを受け入れれば日本の食の安全はさらに破壊されることになります。

日本消費者連盟は「すこやかないのちを未来につなぐ」という理念のもと、日米貿易交渉によって日本の農業と食の安全が損なわれることがないよう政府に求めるとともに、食と農をめぐる草の根での活動を広げていきます。

以上、決議します。

2025年6月29日
特定非営利活動法人日本消費者連盟 第52回定期総会参加者一同

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戦後80年、軍拡をやめ独自の外交路線で平和を築くよう政府に訴える特別決議

2022年から続くロシアによるウクライナ侵攻、23年10月から始まったイスラエルによるパレスチナ攻撃は、撤退を求める国連決議や国際司法裁判所の勧告がなされても、終息の兆しを見せていません。トランプ大統領が返り咲いたアメリカは、自国の利益を優先した外交で、侵略者であるロシアやイスラエルに有利な解決を導こうとしています。イランの核施設へ直接攻撃をしかけ、軍事力の強さで「和平」を演出して支配するやり方は、国連加盟各国から批判を浴びています。

かつては民主主義を正義と標榜していた先進各国の外交的基盤が揺らいでいます。日本も含め先進国は、自国民を守るのは軍事力とばかりに、軒並み軍事費を増強しています。日本も安保3文書改定の22年12月以降、5年間で43兆円という莫大な軍事費支出を計画し、南西諸島だけでなく本土にも自衛隊基地増強や民間地におけるシェルター設置など戦争準備を着々と進めています。専守防衛に徹していた戦後70年くらいまでは、あり得なかった敵基地攻撃能力を保有する長距離ミサイルの開発・配備が始まっています。

日本は世界でも数少ない戦争放棄を謳った日本国憲法を持ちながらも、この10数年は、特定秘密保護法、集団的自衛権の行使容認、安保法制、共謀罪、重要土地規制法、経済安保法、今年の能動的サイバー防御法など、戦争する国づくりを着々と進めています。その都度、日本消費者連盟は反対の意思を表明してきましたが、安保3文書の改定、敵基地攻撃能力の保有で解釈改憲は完成の域に入ったとの見方もあります。しかしまだ明文改憲はされていません。

私たちは、武力を否定する平和憲法を持つ国の市民として、いかなる戦争にも反対します。戦争を食い物にする武器製造企業に強く抗議し、敵基地攻撃ミサイルの開発や殺傷能力のある武器輸出に反対します。日本政府に軍事大国の道をやめ、独自の外交路線で平和を築くよう訴えます。戦後80年の今年、とりわけ太平洋戦争で日本が損害を与えたアジアの市民と協働で平和を望む世論を大きくしていきます。

以上を決意し、決議とします。

2025年6月29日
特定非営利活動法人日本消費者連盟 第52回定期総会参加者一同