日消連では「食の安全と安心」を活動の重要な柱において、取り組みを重ねています。その食を作る生産現場の状況に、もちろん関心はあり、大事だという認識はありますが、時代の変化、状況の悪化に追い付いていないという気がします。関西の産直グループ「関西よつ葉連絡会」のニュースレター『よつばつうしん』を読んでいましたら、それだけでもいくつかの深刻な事例をみつけることができました。
たとえば鹿児島県の離島、喜界島。奄美大島の隣に位置するこの島は日本最大のゴマ産地です。日本のゴマの自給率は0・1%。限りなくゼロに近い数字です。その中で喜界島で生産される在来種の「白ごま」は国産ゴマの7割を占めます。そのゴマがここ数年の台風、ゲリラ豪雨といった異常気象で生産量が激減。さらにこの10月の霧島・新燃岳の噴火や桜島の降灰が重なりました。あの小さいゴマの実に火山灰がまぶされたら、始末は大変だろうなと思ってしまいます。このまま温暖化の影響で異常気象が続けば、日本産のゴマは壊滅しかねない状況です。
和歌山県田辺市で地域の農産物を使う農産加工会社では、スダチの収穫量が少ないので農家の方に聞くと、実は実っているのだが高齢化で収穫しきれなかったという返事が返ってきたそうです。おいしい番茶の原料を作る地元の茶畑でも、整枝作業の人出が足りなくて、この会社のスタッフを派遣したということでした。しっかりした持続性のある、多様な農業生産とその担い手がいて、初めて食の安全も確保できます。日消連も、そのことをきちんと考えていきたいと思います。
(大野和興)