日本消費者連盟
すこやかないのちを未来へ
企業や国家の利益よりも人のいのちや健康を優先する世の中に変えたいと活動しています。

2017年7月号「「香害」は 「公害」 香りの洪水が体を蝕む」

「香料やめて」の声届く

東急電鉄など、アロマ噴射を中止

日消連事務局長 纐纈美千世

 香害問題に日消連が取り組む直接のきっかけは、2016年2月に始まった東急電鉄(東京都)の「天然アロマによる香りの空間演出」です。1月末に日消連洗剤部会から、「東急が駅の改札口にアロマ発生器を設置するらしい」と情報が入りました。

回答しない東急に繰り返し質問

香りは人をさわやかな気分にする効果がある一方で、体に合わない人にとっては迷惑なものです。化学物質過敏症で苦しむ人もいる中、とりわけ公共交通機関での「アロマ演出」は問題だと、東急に中止要請と質問書を送りました。質問項目は、①アロマを避けたい化学物質過敏症の人にどう対応するか、②今回のアロマ演出で化学物質過敏症の人などに被害が出た場合、どうするか。東急からの回答は「貴重なご意見をありがとうございました。参考にいたします」で、質問にはまったく答えませんでした。

この間、日消連のホームページを見た人からの問い合せも。香害に苦しむこの女性は、東急にアロマ演出をやめてほしいと電話したと言い、日消連の対応に期待を寄せました。改めて東急に中止要請の電話をしましたが、応対した担当者は、「先日お答えした内容以上のものはありません」の一点張りでした。

一方で、新たな情報が寄せられるようになります。抗議の多さに、アロマの放出量レベルを最低限にしているというのです。そこで、8月に再度、東急に中止要請と質問書を送付しました。回答期限を過ぎても連絡がないので問い合わせると、「前回の回答と同じなので、回答しませんでした」。ただ、他からも中止要請があることを認めました。

患者会との共同取り組みで成果出す

東急アロマ問題を知った各地の患者会などからは、香りに関する協力要請が相次ぎます。8月には「香料自粛を求める会」と一緒に、埼玉県熊谷市と神奈川県厚木市に対し、市庁舎に設置したアロマディフューザー(芳香拡散器)についての質問書を、11月にも同会と日本交通に車専用芳香剤で消臭したタクシー「ファブタク」について質問書を出しました。9月に熊谷市は「(アロマ事業は)8月末で終了した。埼玉県が作成したリーフレットで香り問題を啓発していきたい」、厚木市も「8月限定の実証実験で、現在は行っていない」と回答してきました。また、「化学物質過敏症あいちReの会」とも香害問題に取り組みました(7ページ)。

今年に入り、昨年9月に東急がアロマ演出をやめていたことがわかりました。理由を問い合わせると、「利用者から寄せられた意見をもとに(中止を)決めた」 (東急担当者) とのこと。再開の予定もないそうです。苦情件数はわかりませんでしたが、かなりの中止要請が寄せられたのでしょう。熊谷市や厚木市も利用者からの不安の声があったことを認めています。私たち一人ひとりが 「香りは公害になり得る」 の意識をもって声を上げることが大切です。