日本消費者連盟
すこやかないのちを未来へ
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【特別決議】憲法改悪を阻止するための特別決議など4本の決議を総会で採択(2022年6月19日)

 

日本消費者連盟は6月19日の第49回定期総会で、「ウクライナへの侵略戦争の即時停戦を求め日本の軍事国家化にノーを突き付け、憲法改悪を阻止するための特別決議」、「ゲノム編集食品の規制と表示を求める特別決議」、「消費者の視点からの食品表示制度の抜本的改善を求める特別決議」、「香害をもたらす製品の販売中止と使用自粛の啓発を求める特別決議」の4本の決議を採択しました。

 

ウクライナへの侵略戦争の即時停戦を求め日本の軍事国家化にノーを突き付け、
憲法改悪を阻止するための特別決議

 ロシアによるウクライナ侵略戦争は長期化の様相を深めています。ウクライナの子どもたち、女性、高齢者の犠牲が増え続け、町、村、山、川、農地の破壊が進んでいます。侵略した側のロシアでは国家による市民の権利侵害が拡がり深まっています。私たち日本の市民はこうしたウクライナの状況を深く憂慮しています。これ以上の犠牲を食い止めるための即時停戦とロシア侵略前の状態への復元を求めます。

ウクライナへの侵略戦争は、私たちの未来に深くつながっています。この侵略戦争を理由に、日本では政府与党を中心に戦争危機を煽り立てる言動が拡がり、そのことを理由に防衛費の大幅増額と軍備拡大がこの先の既定路線として決定されようとしています。この路線の中では、国境を超えて軍事行動を行う、いわゆる敵基地攻撃(反撃能力)を行う能力を持つことが前提となっています。戦争放棄と軍隊不保持をうたった憲法9条を焦点とした改憲が、明確な政治路線として動き出しているのです。すでに沖縄では辺野古新基地建設の規定事実化に続き、九州南端から台湾につながる南西諸島へのミサイル基地化、要塞化が進んでいます。軍事基地の安定と住民の不満を抑えつけるために、住民の管理と土地利用権を制限する重要土地利用規制法の本格運用が9月にも始まります。日本は今まさに軍事国家への道を歩んでいるのです。

わたしたちはウクライナの人びとに想いを馳せ、平和と安全に暮らす権利を取りもどそうと願い、行動している全世界の人たちとつながり、行動します。そしてウクライナの危機を利用して憲法を変え、軍事国家への道を進めるこの国の方向に、断固としてノーを突き付けます。

以上、決議します。

2022年6月19日
特定非営利活動法人日本消費者連盟 第49回定期総会参加者一同

 

ゲノム編集食品の規制と表示を求める特別決議

 ゲノム編集という新しい遺伝子操作技術を使った食品が流通し始めています。GABAという成分を多く含むゲノム編集トマト、肉厚のゲノム編集マダイ、成長が早いゲノム編集トラフグです。他にも、高収量稲や養殖しやすいマサバ、低アレルゲン鶏、成長が早いコオロギなどが大学や研究機関で研究開発されています。

日本政府は、遺伝子を壊すだけのゲノム編集技術について、自然界で起こる変異と同じで、この技術で作られた食品には安全審査も環境影響評価も表示も必要ないと結論付けました。しかし、ゲノム編集による変異が自然界で起こるものと同じであるという主張に科学的根拠はありません。しかも、狙った箇所以外の遺伝子を壊すオフターゲットや、切断したDNAの修復時に起こる遺伝子の欠落といった、意図しない変化を引き起こすことが明らかになっています。

このように問題の多いゲノム編集ですが、サナテックシード社とパイオニアエコサイエンス社はゲノム編集トマトの苗を今年から福祉施設に、2023年から小学校に無償配布しようとしています。また、京都府宮津市はリージョナルフィッシュ社が開発販売したゲノム編集トラフグをふるさと納税返礼品にしています。このようなやり方に対し、日本消費者連盟も含め市民は抗議の声をあげていますが、いずれの企業もまったく聞く耳を持ちません。

日本消費者連盟は、厚生労働省、農林水産省、環境省、消費者庁に対し、食べものとしての安全性が確認されておらず、環境に悪影響を与える可能性のあるゲノム編集食品の規制と表示を求めます。

以上、決議します。

2022年6月19日
特定非営利活動法人日本消費者連盟 第49回定期総会参加者一同

 

消費者の視点からの食品表示制度の抜本的改善を求める特別決議

 食品表示制度の改悪が相次ぎ、消費者の知る権利・選ぶ権利が侵害されています。

消費者庁は2022年3月に「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」を出し、不使用表示の規制を強化しました。このガイドラインにより、不適切な表示だけでなく、食品添加物を削減したことを消費者に伝える不使用表示も自主規制される恐れがあります。

これまでも消費者庁は、加工食品の原料原産地表示基準では「国内製造」等の紛らわしい表示、遺伝子組み換え表示では抜け穴だらけの現行制度を維持した上に、「遺伝子組み換えでない」という表示を実質困難とする制度の改悪をしています。食品添加物表示も一括名など抜け穴のある現行制度の見直しは一切せず、不使用表示の規制強化だけ決めました。ゲノム編集食品の表示義務化も拒んでいます。

消費者庁が消費者の声を聞かないのは、自公政権が経済優先の政策を行政機関に押しつけているからです。食品表示は、消費者が食品を選ぶ権利を保証するものであり、事業者が食品の特長を消費者に伝える手段です。

日本消費者連盟は、2022年に発足した食品表示問題ネットワークに集まった市民団体や生協などとともに、食の安全・安心を創る議員連盟と連携して、食品表示の抜本的改善を目指して全国的な運動を推し進めます。

以上、決議します。

2022年6月19日
特定非営利活動法人日本消費者連盟 第49回定期総会参加者一同

 

香害をもたらす製品の販売中止と使用自粛の啓発を求める特別決議

 柔軟剤、制汗剤などの強い香りをともなう製品による健康被害「香害」で苦しむ人が増えています。これは香料や香料にともなう製品の有害な化学物質に曝露することにより、頭痛、めまい、吐き気など全身の不調を引き起こす深刻な大気汚染、公害です。

日本消費者連盟は、2017年に香りの害に苦しむ人を対象に電話相談窓口「香害110番」を設置し、着香製品が健康被害を起こす多くの事例をつかみました。そこから化学物質過敏症の患者団体、環境団体にも呼びかけ、企業や国に訴える活動を続けています。

この間、関連5省庁(消費者庁、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、環境省)に予防原則に基づき、原因物質の筆頭にあがる柔軟剤などの販売規制を求めてきました。因果関係が明らかでないことを理由に、国は責任を逃れる姿勢を続けてきましたが、2021年夏には香りの自粛を求めるポスターを5省庁連名で作成し、2022年2月には岸田文雄総理が、「必要な研究を進めるとともに、公的な場での香りへの配慮の周知を図る」と答弁するまでになりました。

多くの被害者が声を上げたこと、日消連が事務局を務める「香害をなくす連絡会」が世論を喚起してメディアを動かし、国も放置できない問題と認識を改めたことは前進です。しかし、メーカー(主にP&G、ライオン、花王など)は、いまだに洪水のようなテレビCMを流して、柔軟剤など合成化学物質を垂れ流す製品を売り続けています。私たちが被害実態の資料を送っても面会しようともしません。人のいのちや健康よりも儲けを優先させる企業の姿勢を改めさせる必要があります。

国には、経済成長よりも国民のいのちや健康を守る政策の実施を求めます。消費者庁に柔軟剤、消臭スプレーを家庭用品品質表示法の指定品目にすることを、厚生労働省に健康被害の原因究明、調査研究を、文部科学省に学校など公共施設での自粛啓発を、経済産業省に洗剤業界への販売規制を、環境省に柔軟剤に含まれるマイクロカプセルの規制を要望します。

私たちは、香りの自粛を求める活動を地域に広げるとともに、もの言えぬ子どもたちの生活環境を含めてすこやかに暮らせる社会のためにメーカーや国への訴えを強めていきます。

以上、決議します。

2022年6月19日
特定非営利活動法人日本消費者連盟 第49回定期総会参加者一同