消費者リポート10月号特集「地域に広がる有機給食、その実現のカギを探る」で紹介した日消連食農部会実施のアンケートの結果を掲載します。
回答自治体:北海道新十津川町、同北広島市、同網走市、同津別町、同帯広市、山形県鶴岡市、福島県喜多方市、茨城県常陸大宮市、千葉県いすみ市、東京都武蔵野市、新潟県佐渡市、長野県松川町、同松川村、京都府亀岡市、大阪府泉大津市、島根県吉賀町、愛媛県今治市、高知県四万十市、熊本県山都町、大分県臼杵市、宮崎県綾町、ほか公表不可9自治体
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学校給食における有機食材の使用に関する第1次アンケート調査結果概要
■アンケート調査実施期間:2023年6月9日~7月18日
■アンケート調査依頼自治体数:60
■回答があった自治体:38
■有機食材を使用していると回答した自治体:30
■有機食材を使用していないと回答した自治体:5
■単品(バナナ、茶葉)のみ使用と回答した自治体:3
以下、有機食材使用と回答した30自治体の回答結果をもとにまとめた。
1、学校給食の概要について
(1)給食の調理方式について
①学校別の自校方式 4
②センター方式 21
③自校方式とセンター方式の併用 5
【考察】センター方式では使用する野菜は根菜類(玉ねぎ、人参、じゃがいも、大根)が多い。自校方式または併用の場合は葉物野菜や多種のやさいを使用しているケースがある。
(2)1食当たりの給食費について
小学校:平均266円(200円~346円)
中学校:平均296円(200円~388円)
2、有機給食の内容について
(1)給食に有機食材を使うようになった年代
古くは東京都武蔵野市(1975年)、愛媛県今治市・島根県吉賀町(ともに83年)、北海道帯広市(90年)などがある。最近では2020年前後からが多く見られる。
【考察】古くから始めている自治体は住民(保護者)や生産者からの要求で始まったのが多い。最近始まった自治体は、環境を重視した首長の公約や政府の「みどりの食料システム戦略」の影響もあるとみられる。
(2)有機給食を提供する頻度(延べ日数)
少ないところでは数日(2,3 日)、多いところでは 200 日(島根県吉賀町)、高知県四万十市(約 190)、東京都武蔵野市(約190 日)、愛媛県今治市(約 180)、長野県松川町(約130 日)、山梨県北杜市(約127 日)。なお、千葉県いすみ市などは年間を通じて毎食有機米を提供している。
(3)使用している有機食材の内容について
主食:5自治体が全ての給食で有機米を提供している
米と野菜を提供している自治体:13
野菜のみを提供している自治体:12
豚肉・鶏肉を提供している自治体:1
果物類:1
調味料:1(味噌)
(4)給食全体の中で有機食材の使用量の割合(金額ベース)。
コメ100%もあるが、多くは野菜で数%程度、把握していない自治体も多い。
3、有機食材の調達方法(複数回答可)
①自治体の農家から直接調達:10
②自治体の農業団体から調達:17
③それ以外のルートから調達:17
【考察】野菜は直接農家から調達している自治体もあるが、地域の農業団体から米や野菜を調達している自治体が多い、さらにそれ以外のルートからの調達も多い。
4、有機食材を使うようになったきっかけについて(複数回答可)
①住民(保護者)の要求:6
②生産者の要求:14
③議員の要求:3
④首長の公約:6
⑤栄養教諭や調理員の要望:3
⑥その他:6(自治体の政策、有機推進団体の要求、道の事業、遊休農地対策、仕入先からの紹介)
【考察】古くから行っている所では、保護者(住民)および農業関係者の働きかけがきっかけになっている自治体が多い。
学校給食における有機食材の使用に関する第2次アンケート調査結果概要
■アンケート調査実施期間:2023年7月28日~8月21日
■アンケート調査依頼自治体数:30
■回答があった自治体数:25
以下、回答があった25自治体の回答結果をもとにまとめた。
1、有機食材を使うことでコストが上がる分の負担方法
- 自治体が負担する 14
- 保護者が負担する 1
- 特に負担は増えていない 9
(未記入 1)
【考察】負担が増えていないと答えた自治体は70〜90年代から取り組んでいる自治体が多い。有機比率が高く提供日数が多い自治体が負担増とは限らない。米の負担額が多い傾向にある。
2、有機食材を使用することの意義や課題について
- 有機食材を使う意義について(複数回答可)。
- 安全な食材を提供するため 17
- 地域農業に貢献するため 18
- 地域環境を保全するため 6
- 子どもの食・農教育の推進のため 15
- 食べ残しを削減するため 0
【考察】地域農業に貢献することと、子ども達の食と教育をより良くすることの両輪で取り組むことが重要ではないか。
- 有機食材を使う上で、課題となっていることについて(複数回答可)。
- 給食に必要となる食材の数量の確保 17
- 一般食材との価格差 15
- 食材の大きさなどの規格や汚れ 12
- 給食調理の設備(スペースや器具など)不足 0
- 献立の組み立て方 1
- 生産者、栄養教員、調理員、保護者、行政との意思疎通 9
- その他 1
【考察】有機農家を増やし食材の数量を確保すること、自治体の財政で一般食材との価格差を補填すること、栄養士、調理員、生産者との意思疎通を図り連携して、食材の規格や汚れに理解、対応することが重要になっている。
3.今後の取り組みについて
- 有機給食を拡大する予定について
- 拡大する 8
【回答内容】「昨年1400キロを1800キロに拡大する」「市産品活用率を55%以上を目標にしている」「現在1校の有機米給食を全校に拡大する予定。また、有機野菜も活用したい」「2027年にコメについては全量有機米(75トン)、野菜は12トンを目標」「有機野菜の使用は25%を目標、米は昨年の年1回から今年は3回にする」「拡大したいと思っているが、食材確保などの問題があり未定」。
- 拡大しない 7
【回答内容】「野菜は契約先の業者で賄っている。葉物は腐敗して使えないものもある」「有機野菜は洗浄回数が多く負担になる」「使いたい有機農産物が地元にあれば使うし、なければ使わない」「町内で有機生産者が増えて、供給が可能になれば有機給食が拡充することもありうる」「地元の有機農家が1軒しかないので拡大できない」「有機農家が少なく調達が簡単にできない。必要な品と量が確保できない」。
- その他 9
【回答内容】「有機給食への補助があれば続けるが、給食費に跳ね返るような施策はしない」「市の方針として有機・無農薬・減農薬の食材を優先して調達する」「市内産野菜(有機ではない)を優先して、有機栽培、特別栽培を使用する」。
【考察】拡大すると答えた自治体は明確な数値目標を示している所が多く、出来る範囲で拡大していこうとする姿勢がうかがえる。拡大しない自治体も、現在手に入る限りの有機、減農薬野菜は引き続き使用していくというスタンスはある。有機農家の数が少なく、拡大するにも地域の取組みだけでは追いつかない現状がみえる。
- 有機食材の使用を拡大するために必要なことについて(複数回答可)。
- 自治体の取り組み姿勢の確立 7
- 自治体の財政的な措置 10
- 国や県の施策 9
- 有機農業生産者の拡大 16
- 栄養教員・調理員・生産者などの意思疎通 10
- 地域住民・保護者の理解 6
- 給食設備の整備 2
- 旬に合わせるなど献立の改善 3
- その他 3
【考察】学校給食に関わる自治体の取り組み姿勢や財政の問題と、実際に作り手となる有機農業生産者の拡大の両面が必要である。自治体が有機給食に取り組もうと踏み出すこと、有機農業の生産者を増やすことで食材確保ができ、実際に給食を作る現場(栄養教諭や学校、保護者との連携)の3つが、今後有機給食を広げていく上で重要となってくる。
4.有機給食について考えていること(自由記入)
【回答内容】「地産地消が重要。食農教育を優先するべき」「オーガニックビレッジ宣言をしているので拡大は至上命令だ」「慣行野菜が体に悪い根拠がないので、有機に全て変更しない」「地産地消で地元の有機野菜があるので活用している」「地元生産物を優先的に使いたいので、有機であればいいわけではない」「有機生産者を増やすために町を挙げての取り組みが必要」「野菜やコメだけでなく、調味料や乾物類なども国内原料で食品添加物、保存料不使用のものを含めて使用することも有機給食になる」「安定供給ができるまでは、生産者・地域住民・農業団体の共通理解など課題があり、時間がかかると思う」。
【考察】地産地消、有機に限らず地元の農作物を優先して使用するという自治体が多かった。地域の食材を使用することでコストが抑えられるという財政の都合もあると思うが、地域農業に貢献する、活性化したいという思いはどの自治体も共通しているように感じる。持続可能な第一次産業を目指すためにも学校給食と両輪で取り組むことで、地元に愛着を持ちいずれ地元に貢献する人材を育てることに繋がる。