日本消費者連盟
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東電電気料金値上げ公聴会、1名除き断固反対意見続出

2012年6月7日、経済産業省地下2階講堂で東電値上げ申請についての公聴会が開催され、日本消費者連盟は参考人として陳述しました。公聴会は午前が公募による陳述人、午後が参考人に割り当てられ、それぞれ10名、計20名の陳述人が質問や意見を述べました。持ち時間は、経済産業省と東電両方で、回答も含めて15分という制限が課せられました。20名中19名が値上げに強く反対する意思を表明しました。

電気料金の値上げ申請が出された場合に、電気事業法108条、同施行規則134条に基づいて公聴会を行うことが義務付けられています。

一般陳述人からは、東電の高い人件費や、関連子会社への売却問題、発電と送配電を分離して市場の競争原理のもとに置くべきであること、総括原価方式の撤廃、燃料費調達費用の見直し、再稼働を前提とした総合事業計画の見直し、原発賛否の国民投票をすべきであることなどの意見が出されました。これに対して経済産業省は、先に設置した、「総合エネルギー調査会電気料金審査専門委員会」で厳正な審査を行うむね回答しました。しかし、この専門委員会のメンバーで今回の公聴会に出席していたのは委員長代理の山内弘隆氏のみで、しかも午前の部に出席しただけでした。

日消連では以下の文書を提出し、これに沿った意見陳述をしました。また、5月30日には、経済産業省あてに要望書を提出しました。


2012年6月7日

東京電力による料金値上げ申請に係る意見

特定非営利活動法人 日本消費者連盟 共同代表 古賀 真子

国民不在の議論は許されない、値上げには断固反対します。

1. 消費者団体の立場

東京電力(以下、東電)の福島第一原子力発電所事故(以下、原子力発電を原発という)の被災地住民や避難されている方はもちろん、国民全体が、世代を超えた回復しがたい損害を被っています。値上げは国民に一方的に過大な負担を強いるものであり、許されません。

すでに、各消費者団体は広範に連携して政府に対する電気料金値上げ認可反対の申入れ(2011年12月28日)や、原発事故に係る政府の施策に対する意見ならびに電気料金値上げに係る意見(12年3月30日)を提出しています。これらの中で①今回の値上げの最大の根拠とされている燃料費等のコスト増加に伴う経営の圧迫は、東電の実質的破たん処理に踏み込んだ対応で処理すべきであり、利用者につけを回すべきでないこと、②原発再稼働を念頭に置いた総合特別事業計画を見直すこと、③徹底的な経営の合理化④わかりやすい情報提供を要望してきました。東電に対しても値上げ申請に対する抗議と要望(12年5月25日)を出し、一貫して電気料金の値上げに反対しています。

日本消費者連盟は、創立以来一貫して原発に反対の立場で行動をしてきました。今回の事故後は損害賠償支援、内部被ばくを避けるための食品の検査体制の調査や検査運動の推進、がれきの広域処理の問題等に取り組んでいます。

しかしながら、損害賠償問題1つをとっても、東電には事故への反省も誠意も感じられません。すでに東電には支援機構を通じて多額の公的支援がされていますが、これは当然のことながら血税によるものです。賠償は機構が行うとされていますが、被災地の方についてすら円滑に進んでいません。中間指針の趣旨に反した東電のスキームにより、風評被害については各地で賠償を否定され、いまや多くの国民が東電への怒りをどこにぶつければよいのかと思っている状況です。生活や産業に不可欠な電力の独占、安定供給という錦の御旗のもとではなにをしても許されるのか。電気料金の値上げについては漠然と「経営合理化がされればやむをえない」とか「賠償が進められるのであればするべきだ」などという意見もあるかもしれません。しかし、経営合理化の実際の中身や賠償は支援機構枠であることを知れば、すべての国民は値上げには到底納得し得ないと思います。この1年余の間には有識者会議をはじめ、国民負担を増大させないための議論がされたと信じます。しかし、東電救済としか思えない一連の政策の行きつくところが原発の再稼働であり電気料金の値上げであるとすれば、国民の怒りは東電だけでなく、国の政策そのものへの不信となります。

今回の電気料金値上げ問題は、公共料金を独占私企業にゆだねたことの弊害を白日の下にさらすものであり、電力の安定供給というドグマのもとで、生存に不可欠の財の生産・供給を独占化、いわば担保に取る形で、国民の目からみれば「やりたい放題」としか思えない東電と国や関係機関の関わりが根本から問われているのです。残念ながら、本来であれば東電を破たんさせ、国を挙げて再生すべき電力エネルギー政策についての電力の安定供給について見直すべきですが、根本的な議論がないままに、値上げ申請を許すところまで事は進行しています。一連の「東京電力に関する経営・財務調査委員会報告書」[1]の検証を行った「電気料金制度・運用の見直しに係る有識者会議報告書」[2]、それをうけて策定された「総合特別事業計画(以下計画)」とその認定をもとになされた今回の値上げ申請に係る書類、東電の利用者へのリーフレットを概観したうえで、なお、消費者として値上げを認められない理由を以下に述べます。

なお、本公聴会における意見陳述がどの程度認可に影響を与えることができるのか不明ですが、利用者である国民の声を聞く最後の機会と位置付けられていることから、公聴会でのこの陳述には重い責任を感じており、安易な値上げを許す結果となれば、消費者団体としての存在意義を問われるものであると考えています。消費者団体としては、値上げ阻止には存在的価値がかかっていることを付言します。

2. 値上げに反対する理由(意見)

現在利用者向けに配られている東電の「電気料金値上げのお願い」のリーフレットには総合特別事業計画を踏襲する形で、①損害賠償への取り組み②事故発電所の安定維持と廃炉③電力の安定供給を3つの柱とし、これら重要課題に「全社一丸となって取り組むとともに、徹底した合理化を進めています」とし、「こうした状況の中、火力発電の燃料費等の大幅な増加により、この度やむを得ず、電気料金の値上げをお願させていただくことといたしました」とあります。

このうち、電力の安定供給の見込み、燃料費の増加、徹底した合理化と原価査定の3点について意見を述べます。

(1) 電力の安定供給について

まず、安定した電力供給を受けるために本当に値上げが必要なのか。必要な電力量予測と再稼働の可否から考えてみます。

2011年10月3日に発表された、「東京電力に関する経営・財務調査委員会報告書」(以下、報告書)では、国民負担の最小化と電力の安定供給の確保を達成するためとして、東京電力が示した11年度から10年間の東電の事業計画が検討されています。設備投資計画の前提となる最大電力は最大3日平均、送電端予測[3]で、5,833万kWとされています。ちなみに、11年度の夏の実績は4,767万kW、3年前の09年度実績は、5,254万kWでした。

資金面では、柏崎刈羽原子力発電所を稼動した場合は、値上げ率に応じて、約7,900億円~約3兆8,000億円、非稼働の場合は、料金値上げのパターンに応じて、約4兆2,000億円~約8兆6,000億円の資金調達が必要とされ、「著しい料金値上げを実施しない限り、事業計画の策定を行うことは極めて困難な状況である」と、値上げを回避するには、“まず原発の稼働を”という内容です。

これに対して、2012年5月11日に認定された東電と原子力損害賠償支援機構(機構)が策定した総合特別事業計画(以下、計画)では、8年後の20年度時点では、報告書策定時点と比較して販売電力量では59億kWh、最大電力(送電端最大3日平均では98万kWの需要減が見込まれるとされています。ピーク時の需要を抑制し、その分の供給設備投資を削減できるとしています。

12年7月からは再生可能エネルギーの固定買取価格制度が始まります。節電や東電の新しい料金体系メニュー(その当否は別として)によれば、電力の消費量は押えられるはずですが、そのあたりのシュミレーションはなされていません。直近3年までの見込みでの安易な値上げは許されません。
その上、計画では再稼働について明言されていませんが、「当該原価算定期間内において事業者の自助努力の及ばない電源構成の変動があった場合に、総原価を洗い替えることなく、当該部分の将来の原価の変動のみを料金に反映させる料金改定を認めることが適当である」との有識者会議の提言を引用して、原子力発電所の再稼働の時期が変化する場合には、コストの変動を反映した料金改定(値上げ)を申請するとしており問題です。今回の申請は再稼働を前提とした計画に基くものです。再稼働しない場合は更なる値上げが予定されているものであり、根本的な見直しを求めます。

(2) 燃料費の増加について

燃料費は5,130億円増大するということで、それをそのまま原価計上することになっていますが、36%の小口需要者の電気料金から、98%の利益をあげているとされている現状で、燃料費の負担増をそのまま原価に計上することは規制部門と自由化部門のコスト構造上、不公平であり許されません。また、長期購入為替差益も考慮すべきです。燃料費が上がるからそのまま値上げをお願いというのはあまりにも安易かつ短絡的です。

経営努力を示すためにも、まず、燃料費については、低廉化にむけた努力が必要です。国際取引の中での中長期的な取り組みをもっと真剣に検討すべきです。

(3) 徹底した合理化と原価査定について

経営合理化については、①経常的費用の削減や保有資産の売却等の合理化案を中心とする「経常的な合理化」、②ピーク需要抑制策の徹底等により中長期的な設備投資を削減し、子会社・関連会社や外部取引先への発注方法の変更など、取引構造を抜本的に見直す等「構造的な合理化」、③高経年化火力発電所のリプレース(交換)や、燃料調達・運用面での他の事業者との連携の推進、ベース電源としての石炭火力発電所の増強等、サプライチェーン[4]のあらゆる段階での燃料コストの戦略的削減等を強力に推進を進める「戦略的な合理化」の3段階に分けて取り組むとされています。

計画では、原価については、徹底した経営合理化により人件費や資本費等の削減で年平均2,785億円の徹底的なコスト削減を行なうとしています。しかし、燃料費や他社からの購入電力料、各火力発電所構内にガスタービンやディーゼル発電機等の電源を緊急的に設置して、供給力の確保をはかる緊急設置電源の費用で大幅な増加が見込まれるので、総額で年平均5兆7,231億円の支出。これに対し、今回の原価算定期間を現行料金のままとした場合の収入見込みは、年平均5兆468億円となる見通しであり、収支不足額は年平均6,763億円となることから、東電は、この足りない部分について料金値上げ申請を行なったということですが、徹底的なコスト削減であるかどうかについては疑問があります。

報告書では、被災者の賠償に要する金額を4兆5,000億円程度と見積もる一方で、東電が自ら発表したコスト削減額(合計1兆2,000億円)は不十分として、その倍に相当する2兆5,000億円規模のコスト削減が提示されました。

しかし、なお、計画には、“原価の適正性が確保されているか”、“原価の中に電気の安定供給に真に必要なもの以外の費用が含まれているのではないか”などの疑問があります。

まず、原価に導入されている、団体への拠出金、寄付金、養成費、研究費、図書費等の消耗品などは即刻やめるべきです。

また、事業報酬は現行と同じ3%水準ですが、事実上倒産した(させるべき)会社に、株主への配当原資であり他人資本への利息原資である事業報酬を、電気料金にそのまま転嫁して計上することは非常識です。

資材・役務調達・修繕費については、今後3年で現状の2倍の30%を競争入札にして年間516億円節約できるとしていますが、原則100%を競争入札にすれば、これだけで値上げは必要なくなるといえます。

人件費についても、大卒1,000人以上の企業の給与水準、ガス会社の給与水準をそのまま採用することは疑問です。説明では、社員の給与の一律削減は明記されていますが、退職給付制度、社会保険、その他の報酬に準ずるものなど、人件費関連経費の実情をもっと詳細に明らかにすべきです。原価算入可否以前の問題であり、東電は破たん企業であるという認識こそ一般化すべきです。

3. 手続的な問題点

値上げの手続についてですが、どれだけ国民の意見が反映されるかが不透明であるということを再度強調して申し上げたいと思います。

今回の規制部門の値上げに先立ち、東電はすでに4月から、企業向け(自由化部門)で値上げに踏みきっていますが、今回の申請により、家庭向けも7月(9月?)の値上げを目指すとされているところです。国民に一方的負担を強いる値上げ、この認可にいたるであろう手続上の問題点について述べます。

値上げ申請の2日前の12年5月9日には、柏崎刈羽原発の13年の再稼働を想定した東電と原子力損害賠償支援機構が共同申請した総合特別事業計画(以下、計画)が経済産業省(経産省)に認定されました。最低限の電気料金の値上げには厳格な査定と、前提としての徹底的な経営合理化が条件とされています。

しかし、計画が認定されたということは、値上げも想定内ということです。料金改定には値上げと値下げがありますが、値上げする場合は事業者の申請をうけて経済産業大臣が認可することになります。値上げを想定した計画を認定した経産省が値上げの審査権と認可権をもつわけですから、値上げの審査の厳格性や透明性が要求されます。経産省の審査については、申請受理から認可までの標準処理期間は通常4ヵ月とされています。東電が値上げ申請からわずか2、3カ月の審査で7月の値上げに自信を持っているとするなら、値上げが出来レースといっても言い過ぎではないでしょう。これを裏付ける新聞報道もされています。各方面からの反対を前提としたうえで9月値上げを見込むということは国民を愚弄するものです。

また、審査の過程では、新たに「総合エネルギー調査会電気料金審査専門委員会」(電気料金制度・運用にかかる有識者会議を改編したもの。委員1名が辞任したのみで実質同メンバー)が設置され、議論が進められています。また、本日は審査に必要とされている公聴会が開催されているわけです。広く国民の意見を聴くということで、インターネットでの意見募集もされています。

値上げを認可する権限をもっている規制当局は経産省ですが、経済産業省と共同付議を行う消費者庁は11年10月から公共料金に関する研究会を立ち上げ、改定手続きや料金水準の妥当性確保のための継続的な検証、将来の料金やサービスについての情報提供や苦情受付けについての議論を中間報告としてまとめました。規制当局である経産省に対して、チェックポイントを提出していますが、これを受けて審査の過程が消費者に明らかにされることが期待されます。また消費者委員会も申請内容の査定について踏み込んだ質問を出すなど、値上げには重大な関心と積極的な意見収集に努めています。

日消連は、5月14日に消費者庁が開催した「東電の電気料金値上げについての経産省担当官の説明」を聞く研究会に消費者団体として出席し、今後の値上げの審議過程の情報公開と、値上げを審議する総合エネルギー調査会電気料金審査専門委員会への消費者代表の参加を要請しました。また、日消連では12年5月30日、経産省に対して審査会に消費者代表を入れること、公聴会の開催を延期するよう求める要請文を提出しています。他の消費者団体とともに、今後も連携して値上げには徹底的に反対していきます。

4. エネルギー政策の転換を目指し、東電には徹底した合理化を

再生可能エネルギーへの転換は市民レベルで真摯な取り組みが各地で進んでいます。国民は他の選択肢を望んでいるのです。国は税金を使って東電を救済するというのであれば、少なくとも東電の送電設備を抵当に取るくらいのことを行ってほしいという声もあります。大飯原発での再稼働が問題となっていますが、国民は「安全なはず、安全神話」では納得しません。「これだけの危険性が推測されるが、どうするか」という議論が必要です。原発政策について、国民の現在および将来にわたる命と安全について根本から考え直す必要があります。東電への救済ばかりが目立つこの間の政策に国民は心底怒っています。

最後に、東電の意識は変わるのか?ここが一番重要なところだと思います。今回の値上げ申請にいわばお墨付きを与えた、総合特別事業計画(計画)では、「世代にまたがる国家的難題として、東電の取組みと関係者の協力が必須である」としています。原発推進主体は国であり、国は機構法の枠組みを活用した適切な対応、柏崎刈羽原発の再起動に向けた万全の取組みをすべきと明言しています。東電のそして、国の意識は国民感情からかけ離れています。

機構は一時的とはいえ、東電の負うべき賠償責任を実質肩代わりするものですから、賠償は国が丸抱え。その上電気料金も大幅値上げというのでは国民に対するつけが大きすぎます。

報告書や審議会の内容は複雑で、料金改定の手続と継続的な検証については、国民不在と言わざるを得ません。計画や値上げ申請内容についての情報を公開し、公聴会の複数開催、値上げについての徹底した国民的議論を喚起するよう求めます。

以上

(連絡先) 特定非営利活動法人日本消費者連盟 (古賀)
〒169-0051 東京都新宿区西早稲田1‐9‐19 アーバンヒルズ早稲田207
℡03-5155-4765



[1] 11年5月24日、東京電力の厳正な資産評価と徹底した経費の見直しのため、経営・財務の調査を行い、その調査を政府の東京電力に対する支援に活用するため内閣府に設置された第三者委員会の報告書。10回開催され10月3日に報告書を発表。企業の財務・経営に関し識見を有する5名の委員者より構成され、原子力経済被害担当大臣が担当 http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/keieizaimutyousa/dai10/siryou1.pdf

[2]経営・財務調査委員会の報告書を検証するための「電気料金制度・運用の見直しに係る有識者会議」

[3]東電の最大電力は、その年の最大電力の1~3番目までの平均値で、発電量から発電所で使用する電力を差し引いた電力である、送電端によって算定する。 
http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu12_j/images/120509j0601.pdf

[4]供給連鎖管理。物流システムを1つの企業の内部に限定せず、複数の企業間で統合的な物流システムを構築し、経営の成果を高めるための管理システム


2012年5月31日
12年
日消連第9号

経済産業大臣
枝野 幸男 様

特定非営利活動法人 日本消費者連盟
共同代表
天笠 啓祐
古賀 真子
真下 俊樹
山浦 康明

東電の電気料金値上げをめぐる「総合エネルギー調査会電気料金審査専門委員会」の審査に消費者代表を入れ、公聴会の開催期日の延期を求める要請文

冠省

「総合エネルギー調査会電気料金審査専門委員会」における東京電力の電気料金値上げ審査の過程を監視し、東電が徹底した経営の合理化を行なっていくよう消費者の立場からチェックするため、以下の2点について要望します。

  1. 総合エネルギー調査会電気料金審査専門委員会に消費者代表を入れること。
  2. 公聴会の開催を延期し、十分に国民の意見を聴取すること。

理由

東京電力は、36%の小口需要者の電気料金から、98%の利益をあげているとされています。原発事故により国民全体に世代を超えた回復しがたい損害を与えながら、12年5月11日、東電はさらなる国民の負担増を強いる、家庭向け(規制部門)電気料金の値上げを経済産業省に申請しました。
東電はすでに4月から、企業向け(自由化部門)で値上げを行なっていますが、今回の申請により、家庭向けも7月からの値上げを目指すとされており、現在貴省において、審査が進められていると聞いています。

値上げ申請の2日前の5月9日には、貴省により、柏崎刈羽原発の2013年の再稼働を想定した東電と原子力損害賠償支援機構が共同申請した総合特別事業計画(以下、計画)が認定されました。計画では「安定供給の確保に向けて、徹底的な経営合理化を実行しつつ、お客さまに対し、国による厳格な査定を踏まえた最低限の電気料金の引上げをお願いする必要が生じている。[…]以上のように、機構による出資、金融機関による十分な与信、そして最低限の電気料金の引上げの三つの対策は、「賠償、廃止措置、安定供給」を同時に進めていく上で、いずれも欠かすことのできない一体不可分のものである。」とされており、値上げを前提とした計画を貴省は認定されたということになります。

値上げを前提とした計画を認定した貴省が値上げの審査権と認可権をもつわけですから、値上げ審査の厳格性や透明性が要求されます。審査については、申請受理から認可までの標準処理期間は通常4ヵ月とされていますが、東電は7月からの値上げを想定しているとの報道もあり、審議が慎重に行われるかについて疑問をもっています。
審査の過程では、新たに「総合エネルギー調査会電気料金審査専門委員会」が設置され、審議がされています。専門委員会は「電気料金制度・運用にかかる有識者会議」を改組したものであり、有識者会議の委員1名が辞任したのみの実質同メンバーとされています。
また、審査に必要とされている公聴会は6月7日(経産省)、6月9日(埼玉合同庁舎)に開催される予定です。広く国民の意見を聴くということで、インターネットでの意見募集もされているものの、国民の意見を真摯に聴くということで、公聴会の役割は重要です。

今回の値上げの認可は、消費者委員会や物価担当会議と物価問題に関する関係閣僚会議を経て6月下旬にされる見込みといわれていますが、値上げについて国民の理解を得るためにも、国民に十分な情報提供を行い、専門委員会や公聴会においては慎重に議論していただくことを要望します。
日消連は、5月14日に消費者庁が開催した「東電の電気料金値上げについての経産省担当官の説明」を聞く研究会に消費者団体として出席し、今後の値上げの審議過程の情報公開と、値上げを審議する総合エネルギー調査会電気料金審査専門委員会への消費者代表の参加を要請しましたが受け入れられていません。

以上

(連絡先) 特定非営利活動法人日本消費者連盟
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