東京電力は福島第一原発事故の同社のテレビ会議を一部報道機関に限り公開しました。福島第1原発事故直後から記録しているテレビ会議の映像約150時間分を、8月6日から報道機関に公開するとしながら、実際にはわずか30時間分を報道機関限定でモザイクや音声処理を施したものでありその内容は極めてお粗末です。
日本消費者連盟では東京電力に対して、対象を特定せず全面公開するよう要請文を提出しました。
2012年8月15日
日消連第15号
東京電力株式会社
取締役会長 下河邉 和彦 様
特定非営利活動法人 日本消費者連盟
共同代表 天笠啓祐
古賀真子
真下俊樹
山浦康明
東京電力福島第一原発事故にかかる貴社のテレビ会議映像の全面的公開を求めます
冠省 貴社は2012年7月27日に、福島第1原発事故直後から記録しているテレビ会議の映像約150時間分を、8月6日から報道機関に公開すると発表しました。
報道によれば、映像は役員以外の個人が特定されないよう、モザイクや音声処理を施したもので、昨年3月11~15日に本店と福島第2原発で録画されたものであるとされています。
公開されたのは、12年8月6日と7日は事前予約をした報道機関のみ、8月8日から9月7日までの平日は全メディアに対して公開されるということです。視聴できるのは貴社の本店の会議室で報道機関のみ、公開映像は東日本大震災の発生した昨年3月11日から15日までの150時間42分の記録の一部の約30時間と限られたものです。
当初は社員や作業員のプライバシーを理由に公開を拒否していましたが、枝野幸男経済産業相が早期の公開を求めたためようやく実現したものですが、日本全国がオリンピック報道に関心が集中する期間に、報道関係に限定し、明らかに意図的編集が疑われる状態での公開は、とても公開といえるものではありません。
報道によれば、貴社の公開場所の103号会議室には23脚の机と全席指定で65席のみ。各席には同機種のノートパソコンと「持ち出し厳禁」と書かれたバインダーが置いてあったということです。公開場所の103号会議室では、ビデオや写真の撮影、録音は禁止、筆記記録用のパソコンの持ち込み、操作はできるものの、室内での携帯電話の使用は不可だったとされています。順番待ちが発生している場合、1時間以上の長時間の離席は強制撤収されたということで、公開態様は極めて不十分です。
映像の公開によって、ベントが遅れた経緯や、東電が原発からの撤退を考えていたとされる問題の解明が進む可能性がありますが、原発の再稼働議論が進む中で、福島での事故処理対応こそ真っ先に検証されるべき重大な事実解明であるにもかかわらず、時期的にも方法としてもきわめて不適切な公開といえます。今なお11万人の原発事故による避難民が苦しみ、原発の賠償も進まない中、再稼働や電気料金の値上げが決定されるなど、貴社の企業としての良心は皆無であるといわざるを得ません。
速やかに、対象、期間を設けず、全面的公開を行い、事故に対する調査と再発防止のためにテレビ会議の内容の全面的な情報公開を行うことを求めます。
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日本消費者連盟(真下、古賀)
TEL 03-5155-4765 FAX 03-5155-4767