2013年4月1日より政府が自治体に対し、放射性物質検査を縮小するように通知(食安発0319第2号)を発表しました。平成25年3月19日、日消連はこれに対し以下のような抗議声明を出しました。
2013年3月29日
厚生労働大臣 田村憲久 様
特定非営利活動法人日本消費者連盟
共同代表運営委員
天笠啓祐
古賀真子
真下俊樹
山浦康明
抗議声明:
食品中の放射性物質の検出検査の対象品目の縮小に反対します
2013年3月19日、厚生労働省は自治体に「農林水産物の放射性物質検査の縮小」を通知しました。2011年3月11日の原発震災によって環境が汚染され、食品汚染が深刻化しましたが、その後の対策は不十分であり、2011年3月より策定された暫定規制値はとくに食品汚染を拡大させました。2012年4月より、規制値を、飲料水は10Bq/Kg、牛乳を50Bq/Kg、一般食品を100Bq/Kg、乳児用食品を50Bq/Kgとしましたが、放射性物質による内部被曝を考えると、規制する閾値はなく、こうした規制値はさらに厳しくする必要があります。
公的機関による測定に対する消費者の不信感はまったく払拭されていません。消費者が食品を選び、安心して国内産食品を食べられるためには、よりきめ細かい検査体制と、検査結果の小売段階での表示が必要です。
しかるに、このたびこうした規制値を前提に2013年4月1日より検出検査の対象を縮小することは以下の理由から、放射能汚染のリスクを増やし、国民の不信感をいっそう強めることになり認められません。このたびの通知の撤回を求めます。
記
規制値について
- 被曝線量(とくに内部被曝線量)の健康被害に閾値がない以上、2012年4月より実施された規制値は十分な安全性を担保しているものではなく、より低い基準が求められます。多くの小売店や生協が、消費者の要請に応えるために政府基準よりも低い自主基準を定めざるを得ないのが実状です。これまでの政府基準の測定値を固定し、その基準またはその1/2に照らし、少ない値の品目の検査を不要とすることは、消費者の要求に逆行するものであり、認められません。
- 今回の通知内容は不明確であり、自治体の現場での混乱を招きます。2013年3月までの検査の指針と今後改訂される検査対象品目を明確にすべきです。
- 今後重点検査対象132を98に減らすことが今回の通知のねらいだと思われますが、次の品目を除外する根拠を測定値を明示してデータで示すべきです。(野菜類:ホウレンソウ、レタス、キャベツ、大根、ジャガイモなど、果実類:モモ、リンゴ、梨など、魚類:コウナゴ、イワシ、サバ、ブリなど)
検査体制について
- 現在の公的機関による検査は、検査密度が低く、汚染の詳細な実態が不透明です。
- 国民が求めているのは、マクロ的な食品汚染状況ではなく、日々食べ、子どもに与える食品そのものの汚染を知る権利です。現状では、公的機関による測定が不十分なため、多くの国民は自己防衛のためにNPO等に検査を依頼したり、自主測定・表示を行っている生協等に依存せざるをえない状況が続いています。国民が日々購入する食品を選び、安心して国内産食品を消費できるためには、検査対象の縮小ではなく、よりきめの細かい測定と、小売段階での汚染実態の表示(ベクレル表示)が必要です。
- 牛肉と米、一部の水産物がこれまでの検査対象品目の大半でしたが、他の多くの食品は極めてサンプル数が少なく、また採取地も面的にではなく、点的に行われてきたに過ぎません。また、検査対象は食品原材料が中心でしたが、外食、小売店の店舗に陳列された食品も検査すべきです。
- 農水産物の汚染を知るためには、農地や海域(海底)の放射能汚染状況を知ることが前提になりますが、現状では農地の汚染マップは極めてメッシュが粗く、海域の汚染状況も不透明です。農地ごと(あるいはアールごと)の農地の汚染マップや、詳細な海域の汚染マップを作成し公表すべきです。
放射能汚染の現状について
- 放射性物質は、降水や海流など水系、風塵などを通して絶えず移動することがわかっています。たとえこれまでの測定数値が低かったとしても、今後どのように推移するかは不明です。