東京電力は4月1日から大口顧客(企業)の電気料金値上げを通告していますが、「値上げに不同意」とする通知を3月30日までに東電に出すと、契約終了日まで値上げが適用されません。
これは、契約期間中は一方的に契約内容の変更はできないという、当たり前の理由によるもの。つまり、料金契約の満了日が4月2日以降の場合、東電が4月1日に値上げすると「契約期間中の一方的な値上げ」となり、契約違反になります。値上げするためには、契約相手である利用者の了承が必要なのです。利用者が値上げを了承しなければ、期間満了日までは現行の料金が維持されます。
不同意通知の締め切りは3月30日です。高圧小規模工場や大口需要家は、いますぐ値上げ不同意を東電に通知しましょう。
直通電話番号: 0120‐926‐488
家庭向けも早ければ7月に10%値上げされると見られています。とんでもない話です。
福島をあんなヒドい目に遭わせ、計画停電でムダに工場を苦しめ(電力不足はウソでした)、リストラもしぶしぶ。その挙げ句に、一方的に値上げ通告なんてあり得ない! でもそれだけではありません。値上げの根拠そのものがおかしいからです。
だまって上乗せ「電源開発促進税」・「再処理積立金」
毎月の電気料金の明細書の「料金内訳」という欄を見てみましょう。「基本料金」「電力量料金1〜3段料金」「燃料費調整」「太陽光促進付加金」とあります。このなかの「基本料金」と「電力量料金」には、たとえば「電源開発促進税」が、電気料金に上乗せして含まれています(1世帯あたり月平均約110円)。これが電力会社を通して政府の「電源開発促進勘定」(約3,300億円)に入り、原発周辺の地域振興(採算の取れない箱物建設や「原子力や放射能は安全」といった宣伝教材)などの立地対策(11年度1,835億円)と、高速増殖炉もんじゅなどの研究開発等(同1,451億円)に使われています。それを実施する公益法人の多くが、経産省や文科省からの天下り先です。
さらに、私たちが払っている電気料金には「再処理積立金」なるものが含まれています。これは原発から出る使用済核燃料を六ヶ所村の再処理工場などで再処理してプルトニウムを抽出する「核燃料サイクル事業」の推進ためのお金です。すでに全国で3兆円を超える積立金が蓄積され、「公益財団法人 原子力環境整備促進・資金管理センター」(これまた典型的な天下り先)が管理しています。抽出されたプルトニウムは、高速増殖炉もんじゅの燃料や、各地の原発(軽水炉)でプルサーマルとして利用されることになっていますが、もんじゅも六ヶ所村再処理工場も、ムダ金ばかり食って使いものにならない欠陥施設。キケン極まりない上に、海外からは日本が核武装を狙っている証拠と見られています(「いますぐ核を持たないが、いつでも持てるようにしておく」やり方で、「ジャパン・オプション」として知られる)。
私たちがこんなお金を払い続ける理由はありません。太陽電池で発電した電気を買い取るための「太陽光促進付加金」は明記しておきながら、こうした内訳は表示しないというのは、私たち消費者をナメているとしか言いようがありません。
燃料を高く買い取り負担は消費者へ押しつけ
東京電力は、値上げの理由を「原発が止まって火力が増え、燃料費が上がったから」とし、それは「権利」だと言っています。これは電気料金明細書の「燃料費調整」にあたるもの。原油、天然ガス、石炭の価格変動を反映してこの金額を変えることができる制度になっています。原発停止を埋めている火力の4分の3は天然ガスで、燃料はおもに日本企業が投資したロシアのサハリンから輸入されています。ところが、その買い取り価格が、同じ条件下の韓国の倍以上になっているとか。その理由は、いくら高く買っても、それをすべて燃料費調整として電気料金に上乗せできるため、過保護を見抜かれた電力業界が産ガス国の言い値で押し切られてしまうから。産業界からの批判を避けるため、大口企業とは割引契約を結んでいるともいわれているそうです(東京新聞12年2月25日付)。
消費者が電気を選べる制度に
東電がこんな殿様商売を大手を振ってやっていられるのは、私たちがふつうの商品のように電気を「選ぶ」ことができないためです。家庭用や低圧小規模工場、コンビニの電力は、いまも電力会社の「地域独占」が認められていて、掛かった費用と利潤をそのまま料金に上乗せすることができる「総括原価方式」の電気料金制度が維持されています。高圧小規模工場や大口需要家はいちおう自由化されましたが、送配電設備を電力会社が握っているため、特定規模電気事業者(PPS)など他の事業者が参入しにくく、競争原理が働いていないのが現状です。
私たちが東電のような原発推進電力会社とはさっさと契約を打ち切り、再生可能エネルギーを使う別の事業者から電気を自由に買えるようにするためには、電力会社から送配電事業を分離することが不可欠です。日消連は今後、電気の消費者として、そのための運動を進めて行きます。