日本消費者連盟
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自民党に被害者保護を最優先した原賠法改正を要請

自民党の資源・エネルギー戦略調査会は、3月29日、原子力発電所事故の賠償責任を規定する「原子力損害賠償法」(原賠法)の見直しに向けた議論を始めました。

日消連は、他の市民団体4団体と共同で、同調査会の山本拓会長に「被害者(被災者)保護を優先した原賠法改正を求める要請書」を提出し、被害者への充分な損害賠償を保証するとともに、電力会社だけでなく原子炉メーカーなど原子力で利益を得てきた企業も損害賠償の責任を負い電気料金や税金の形で消費者・国民に負担を転嫁しない方向で見直しを行うよう要請しました。

以下は記者発表と要請書本文です。

関連サイト


共同プレスリリース:

NGO5団体、自民党に被害者保護を最優先した原賠法改正を求める

プレスリリース – 2013-04-19

環境エネルギー政策研究所
国際環境NGO FoE Japan
国際環境NGOグリーンピース・ジャパン
原子力資料情報室
日本消費者連盟

自民党が、資源・エネルギー戦略調査会原子力政策に関する小委員会で原子力事故の賠償責任の基本的制度を定めている「原子力損害賠償に関する法律」(原賠法)見直しに向け議論をすすめています。それを受けて、本日4月19日、同小委員会委員長の山本拓衆議院議員に、NGO5団体が共同要請書を提出し、被害者保護を最優先とする改正を求めました(下記参照)。

日本の原賠法の問題点

原子力損害賠償支援機構法が2011年夏に成立した時、原賠法のできるだけ早期の改正が決議されましたが、いまだに改正されていません。現行の原賠法には次のような問題があります。

  • 目的が「被害者の保護」と「原子力事業の健全な発達」となっている
  • 賠償責任が電力会社に集中しており、電力会社が賠償しきれない場合は国が援助するとなっている
  • 原子炉は製造物責任法の対象外で原子炉メーカーなどの責任は問われず、福島第一原発の設計や製造を行った原子炉メーカーのGE、日立、東芝は賠償に一切関与していない
  • 電力会社が加入義務を持つ原子力保険の保険金は1200億円で、実際の賠償額と比較できないほど少額
被害者保護を最優先した原賠法を

自民党内では、国の責任をより強めることが検討されていると報道されていますが、国民負担を増やすのではなく、原発事故の責任を負うべきものが賠償を優先的に負担する改正が必要です。

今回の共同要請書では、以下の5点を自民党に要請しています。

  1. 法律の目的として「被害者の保護」を優先する
  2. 国民負担を最小化するため、巨額の賠償と地震リスクに対応できる規模の資金的保証(保険への加入または関連事業者の出資による損害賠償基金の設立)を義務付ける
  3. 国民負担を最小化するため、株主および融資の貸し手が、国民(税金)や電気料金による負担よりも優先的に賠償責任を負う
  4. 原子炉も製造物責任法の対象とし、原子炉メーカーをはじめ事故の原因に責任のある者から優先的に賠償責任を負う
  5. 事故が第三者の過失によって引き起こされた場合も求償の対象とする

NGO5団体では、この要請への賛同団体を引き続き募るほか、全政党へも本要請書を提出する予定です。

 


自由民主党 資源・エネルギー戦略調査会会長
原子力政策に関する小委員会 委員長
山本 拓 殿

被害者(被災者)保護を優先した原賠法改正を求める要請書

2013年4月19日

福島原発事故で被災し、今なお、ふるさとに帰れない福島の人たちは16万人以上にのぼります。賠償金は、東京電力だけでは払いきれず、すでに3兆2000億円の税金が投入され、当初予定されていた5兆円でも足りなくなるとも言われています。

今、政府自民党では、「原子力損害の賠償に関する法律」(原賠法)の見直しに向けた検討が始まっています。見直しには、現在、電力会社が無制限に負うとされている賠償責任を国も負担すると明記するかどうかの検討も含まれるとされています。見直しの方向によっては、国民が重い負担を強いられる一方、責任を問われるべき電力会社は負担が減り、賠償を気にせず原発を推進することにもなりかねません。

原子力損害賠償支援機構法が成立した時、国会の付帯決議では、政府に対して「国民負担の最小化」を求めると同時に、東電に対して、経営の合理化や、株主その他の「利害関係者に対して必要な協力を求める」ことと定めています。

また現在、賠償を支払うために事業者の加入が義務づけられている原子力保険の保険金は実際の賠償額よりはるかに少なく、地震のときには保険がおりません。地震のときは国が肩代わりしてくれるため、電力会社は事故リスクをきちんと認識せず、安全対策を怠ったまま安易に原発を拡大し、結果としてそのツケを国(国民)が負担しています。

原賠法は、原子力政策の根幹にかかわる重要なルールです。事故責任をあいまいにして、国民負担だけが増えていくような改定であってはなりません。

国民負担を最小化しつつ被害者に充分な賠償をし、福島原発事故の教訓を今後に反映するために、原賠法改正にあたっては、次の5つの要素が不可欠です。

  • 法律の目的として「被害者の保護」を優先する
  • 国民負担を最小化するため、巨額の賠償と地震リスクに対応できる規模の資金的保証(保険への加入または関連事業者の出資による損害賠償基金の設立)を義務付ける
  • 国民負担を最小化するため、株主および融資の貸し手が、国民(税金)や電気料金による負担よりも優先的に賠償責任を負う
  • 原子炉も製造物責任法の対象とし、原子炉メーカーをはじめ事故の原因に責任のある者から優先的に賠償責任を負う
  • 事故が第三者の過失によって引き起こされた場合も求償の対象とする

以上

環境エネルギー政策研究所
国際環境NGO FoE Japan
国際環境NGO グリーンピース・ジャパン
原子力資料情報室
日本消費者連盟
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