日本消費者連盟
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【声明】このままいくと市民活動にも波及する菅政権の日本学術会議人事介入に抗議し撤回を求めます(2020年10月6日)

 

【声明】
このままいくと市民活動にも波及する
菅政権の日本学術会議人事介入に抗議し撤回を求めます

メディアで報じられているように、菅政権は日本学術会議の人事に介入、同会議が推薦した新会員105人から6人を除外する決定を押し付けています。日本学術会議は戦争遂行に科学者が協力した戦前の苦い歴史の反省の上に、戦後つくられた科学者の国会といわれる機関で、一貫して反戦平和、人権を守る立場を堅持してきました。政府機関のひとつですが、時の政権からの独立性を保ち、人事権についても内閣総理大臣が任命する形式はとっていますが、歴代内閣は同会議の推薦を尊重する方針を守ってきました。

学術会議が行った最近の特筆すべき業績としては、2017年の「軍事的安全保障研究に関する声明」があります。学術会議はこの分野で過去2回、声明を発しています。「戦争を目的とする科学の研究は絶対にこれを行わない」(1950年)、「軍事目的のための科学研究を行わない声明」(1967年)です。2017年の声明はこの二つの声明を引き継ぐことを改めて確認したものです。

ところが同会議会員の半数を改選する時期を迎えた10月初め、菅政権は同会議が出した105人の新会員推薦者から6人を除外する決定を行ったのです。その6人の中には、集団的自衛権を認めた安保関連法、いわゆる戦争法や組織的犯罪処罰法(共謀罪)を批判してきた学者が多く含まれていました。政府はこの6人をなぜ除外したか理由を明らかにしないまま、これまでの法解釈を覆し人事権を行使するのは当然との姿勢を示しています。

この菅内閣の決定は日本学術会議法違反であるばかりでなく、憲法23条がうたう「学問の自由」、19条「思想及び良心の自由」、21条「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由」(第 21 条)等々を侵害するものです。政府の意向に反する研究を行い発言する科学者を学術会議会員という公職から追放という今回の措置は、戦後米国で吹き荒れた赤狩り、マッカーシズムそのものです。民主主義に対する権力の挑戦であり、社会そのものの崩壊を招く暴挙です。

その影響は科学界にとどまりません。次に来るのは市民活動に対する締め付けであり規制の強化であることは容易に想定できます。例えば日本消費者連盟は、憲法を活動の原点に置き、戦争法・共謀罪反対、脱原発、遺伝子組み換えやゲノム編集、新型コロナウイルスワクチンへの疑義表明等々さまざまな国策に疑問を表明し、その撤回を迫る活動を展開しています。日本消費者連盟も獲得している「特定非営利活動法人」は許認可事業であり、内閣総理大臣・都道府県知事の認証を受けなければなりません。今回の日本学術会議への菅政権の行いを見過ごせば、ある日突然「特定非営利活動法人の認証を取り消す」ということになりかねません。政府の意図に反する市民の活動を委縮させ、封じ込める状況が目前に来ているのです。

私たちはそんなことを許すことはできません。私たちは、いま起きている日本学術会議への国家による権力介入を自分のこととしてとらえ、その撤回を要求します。

以上、声明します。

2020年10月6日
日本消費者連盟