2021年3月30日に日本消費者連盟と遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンが出した「ゲノム編集動物食品についての質問状」に対し、京都大学の木下政人氏から回答がありました。
回答→https://nishoren.net/wp/wp-content/uploads/2021/04/8c33d790ef03803828bef8220f53c770.pdf
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2021 年4月 15 日
遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン
代表 天笠啓祐様
特定非営利活動法人 日本消費者連盟
共同代表 大野和興様
共同代表 纐纈美千世様
京都大学 木下政人
「ゲノム編集動物食品についての質問状」への回答
京都大学で研究しているゲノム編集は、外来遺伝子を導入するものではなく、対象生物のゲノム中の塩基を欠失させる手法を用いています。つまり、自然界で起こる変化の再現であり、通常の魚の中には同様の変化を持つ魚が存在します。
いただいたご質問は広範な内容になっておりますが、私がお答えできる範囲で私見として述べさせいただきますので、よろしくお願いいたします。
記
・逃亡防止対策について:
弊学では、ゲノム編集魚を海上で飼育せず、陸上の隔離された施設で、かつ、二重の逃 亡防止網を設置して、魚が逸失しない形で管理しております。
・オフターゲットについて:
全ゲノム配列のデータベースより、狙った配列と類似している配列を網羅的に検索し、その部分の塩基配列を検査しております。なお、これまでに作出した魚において、オフターゲット変異は検出されておりません。
また、従来品種の複数個体の全ゲノム配列解析を行った結果、個体間で非常に多くの塩 基配列の違いが見られました。例えば、2尾のマダイを比較した結果、1塩基が欠失して いる塩基配列は約 20 万箇所も存在していました。つまり、自然界でも、ゲノム編集による 変異と同様、あるいはそれ以上の変異が生じると言えます。
・モザイク性について:
モザイクはゲノム編集を行った世代のみで見られる現象です。子世代以降の魚では、個体内の細胞の遺伝子型は均一であり、モザイクは観察されません。
・肉厚マダイの組成について:
従来の養殖と同様な形で管理しておりますが、通常の魚と比較して、肉量は約 1.2 倍増加しています。また、ゲノム編集魚と通常の魚で成分を分析・比較した結果、両者に有意 な差は見られず、違いはないことが確認されました。
・食品としての安全性について:
食品としての成分分析を行い、通常の魚と比較した結果、有意な違いはありませんでした。また、食品由来のアレルゲンとなり得る物質も検査しましたが、問題となるような物 質は検出されませんでした。