消費者リポートではこれまで何度か水問題を取り上げてきました。数年前、埼玉県秩父市の水道料金大幅値上げを取り上げましたが、当時も今も同じような問題は全国の自治体で続いています。今年、国会で水道法改正が成立し、水道事業の民営化の道が開かれました。
改正水道法の施行は2018年度に入ってからですが、すでにその前触れが始まっています。秩父市を含む1市4町ではいま、水道事業を広域化して、膨大な事業費を計上してのインフラ整備が進んでいます。原資は国と市町村の予算と水道料金値上げです。水道代がほぼ2倍になる町も出てきます。同時に問題なのは、水の質が大きく変わってしまうことです。
秩父は山林が9割を超す山間地域で、東京都民に飲み水を供給する荒川の水源でもあります。山に降った雨は谷川を下って荒川に入り、都市に流れ込み、海に到ります。これまで秩父の人はその谷川の水を水道水として使ってきました。こんなおいしい水はないと、と地元の人は言います。広域事業はその上流の浄水場をつぶし、下流からポンプアップする計画が含まれています。
本来、上から下に流れる水を下から上へ上げようというのです。その事業が始まった秩父郡小鹿野町では住民による反対運動が始まっています。おいしい水が飲めなくなった代償は水道料金値上げです。それでも公営でやっていけなくなった水道事業は税金をかけて整備したインフラごと民営に移されるはずです。こんな計画は全国にあります。折を見てリポートでも紹介したいと思います。
(大野和興)