日本消費者連盟
すこやかないのちを未来へ
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【意見書】「食料・農業・農村基本計画」の改定に向けた意見書(2025年1月15日)

2024年5月の「食料・農業・農村基本法」改正を受けて、「食料・農業・農村基本計画」の改定に向けた作業が進められています。同基本計画は農政の中長期な指針となる重要なものです。日本消費者連盟は基本法見直しの際に意見書を提出したのに続き、基本計画改定に対しても意見書をまとめました。以下の意見書は2月中に農林水産大臣に提出する予定です。

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農林水産大臣
江藤 拓 様

特定非営利活動法人 日本消費者連盟
共同代表 亀山亜土
共同代表 佐々木ミヨ子
共同代表 マーティン・フリッド

「食料・農業・農村基本計画」の改定に向けた意見書

私たちは、安全・安心な暮らしのために活動する消費者団体です。
現在、政府は「食料・農業・農村基本計画」の改定に向けた検討を進めています。これは昨年、改正された同基本法を受け、今後5~10年の農業施策を形作る重要なものです。私たちはその中に消費者・市民の視点を重視していただくよう求めます。
私たちは、「食べものは商品ではない」という考えのもとに、生命や環境にとって重要な食料・農業を大切にすべきだと主張してきました。しかし、これまで、農産物・食料の輸入拡大・自由化が進められた結果、食料自給率は大きく低下してきました。これは、国内農業の衰退はもとより、食の安全や環境面でも大きな問題を引き起こしています。
いま、世界的に食料価格の高騰や不足が深刻になるなか、これまでの輸入依存、効率化一辺倒の農政では食を守れないことは明白となりました。この反省の上に立ち、基本計画の改定にあたっては、以下の点を反映されるよう要請します。

1.基本計画で示された施策目標について。達成状況を毎年公表し国会で審議してください。

2.食料自給率(カロリーベース)を2030年までに45%達成を図り、さらに50%に向けた地産地消・国内具体策を計画に入れてください。

3.農業従事者(人数や形態など)、農地面積、耕地利用率などについて、現行よりも拡大を図るよう、2030年までの目標とそのための施策等を明らかにしてください。

4.農業の「担い手」を多様化して、地域の状況に即した小規模家族経営や兼業農家、自給農家なども組み入れ、「担い手」農家の裾野を広げてください。その際、地域に根ざさない企業の参入に歯止めをかけてください。また、「半農半X」、「市民農園」、援農など、都市住民も含めて誰でも農業に関わることができるよう体制を整備してください。

5.地産地消を推進するための施策等を明らかにしてください。特に学校給食においては、基本的にすべての食材を国産とし、うち地場産は全国平均で7割以上(現在約60%)を目標にしてください。

6.有機農業の推進にあたっては、自然の摂理を逸脱することなく、バイオテクノロジー技術を利用せず、生命を尊重することを基本として推進してください。

7.有機農業を推進するための目標として、2030年までに全農地の5%(現在0.6%)を目標としてください。また、オーガニック・ビレッジ宣言の自治体をさらに拡大できるようにしてください(現在129自治体)。さらに、都市部の自治体がオーガニック・ビレッジ宣言をした自治体と提携して、有機農業で生産した食品の供給(学校給食等含む)を増大できるよう「オーガニック・シティ宣言」を新設してください。

8.有機農業の推進に資する本格的な研究、研修、教育等を強化してください。各地に「有機農業公園」(モデル農場や研修、食農教育等)、「有機農業普及センター」(農機具類の貸し出し、相談、種苗保持等)を設置してください。

9.学校給食での有機農産物の活用も進め、当面、2割以上の自治体で実施できるようにしてください(現在約200自治体)。そのうえで、有機米使用率100%、有機農産物使用率30%を目標にしてください。

10.在来種を中心とした地域の品種とタネの保全を各地域で行うこと、及び種苗の国内自給向上に向けた目標を明らかにしてください。また、有機種子の国内生産への支援を行い、供給拡大の計画、目標を立ててください。

11.生物多様性や環境保全対策を基本計画に入れてください。特に、農薬や農業資材用プラスチック使用など、農業生産の環境への負の側面を数値化して削減目標をたててください。また、下水汚泥の肥料利用による汚染や、水田のメタンガス対策による中干し延長で生物多様性を損なう問題、有機フッ素化合物(PFAS)の農地の汚染への対策を進めてください。

12.経済的な困難性を抱える人たちへの食の保障対策を計画に入れてください。フードバンクや子ども食堂などへの支援のほか、貧困世帯へ直接的な食料支援を行うことができる仕組みを検討してください。その際、地域や国内の農業振興とつながるようなあり方を検討してください。

13.遺伝子組み換え技術やゲノム編集技術、重イオンビーム利用の放射線育種技術、フードテックなど、自然の摂理の範囲を逸脱した遺伝子を改変する技術や、生命のない食べものの生産・販売を規制してください。

以上