日本消費者連盟
すこやかないのちを未来へ
企業や国家の利益よりも人のいのちや健康を優先する世の中に変えたいと活動しています。

2017年4月号「つながろう世界のママたち 遺伝子組み換え食品はいらない!」

座談会日米のママたちが語り合う

どうしたら遺伝子組み換え食品のない世界を作れるか

ゼン・ハニーカットさんの講演を受け、日米のママたちがどうしたら遺伝子組み換え食品のない世界を作れるか話し合いました。安全な食べものを守るために活動する3人のママたち。意気投合して日本でもママたちのグループを発足することを決めました。

 

 

 

 

 

たった1人でも始める

——どのような活動をしていますか。

杉山 息子が小さい頃にアレルギーのひどいお友達のママと遺伝子組み換え食品の学習会をしたことがあります。一昨年の安保法制の時には、このままではまずいと思って立ち上がりました。その時に政治の問題が経済の問題と結びついていると気づいたのです。TPP批准の動きなど、デモクラシーを多国籍企業が乗っ取ろうとしている。それがすごく怖くて、その視点で活動しています。

松村 私の両親は広島県出身なので、私も放射能には敏感でした。モンサント社が枯葉剤やPCB(※1)を作り、原爆製造にも関わっていたというのを知り関心を深めました。食べもの、環境などを学ぶ学習会や映画会を近所の人と開いています。小学校の給食や学童保育のおやつが、添加物や遺伝子組み換え食品などが多いのでどうにかしたいと思っています。

ゼン 日本には政治や経済の問題を大きくとらえて活動をしようとするママたちがいて心強く思います。私の活動のきっかけは、カリフォルニア州で遺伝子組み換え食品の表示の義務化について住民投票があり、負けたことでした。それまで自分は、PTAやボーイスカウトの手伝いが忙しいと言い訳していたのです。私がもっとリーダーシップをとっていたら結果は違っていたかもしれない。そう思うと悔しくて。何にせよ、始めるのは自分自身、たった1人でも始めることだと思いました。

自分たちが講師になる

——活動を広げていく上で、どのようなことを感じていますか。

杉山 これはと気づいたママたちが、活動を始める時に家族の理解を得られずに悩むことがあります。TPPの問題もいったん良くないと思っても、夫が経済のために必要だというと、そうかなと思ってしまう。経済の奴隷になっている夫が多く、そこに反論できにくい状況があります。

ゼン 経済が大事と言われたら、遺伝子組み換え食品は結局健康を害して医療費がかかり、コストがかかるものだと言ってみたらいいと思います。お金のことで語る人には、お金の話でアプローチするのがいちばん効果的です。TPPは今後もぶり返していかないように、注視していく必要がありますね。

杉山 TPPが批准されなくても、日本では種子法(※2)の廃止や水道の民営化など、外資系や大手企業に市場を明け渡す法律が通過しようとしています。大事な問題なのに、日本のメディアはあまり大きく扱っていません。日本では報道が本当に大切なことを知らせなくなっていると思いますが、アメリカの報道はまだましなのではないでしょうか。

ゼン 主要なメディアは、日米ともにどっこいどっこいでしょう。過大な期待はできません。肝心なのは、私たち自身がメディアになることです。ただの主婦だから何もできないと考えるのではなく、たった1人でも動けば誰かに影響を与えられる。私がそうでした。モンサントの株主総会に1人で行った時に「ウォールストリートジャーナル」が取り上げてくれました。弁護士や医師や偉い人に発言してもらう必要はありません。たとえば日本でも学習会で天笠さん(科学ジャーナリストで日消連共同代表)に来てもらうのではなく、自分たちが講師になるのです。

杉山 そうですね。そういえば安保法制の時には、ひとり1人が自分の言葉で語っていました。これから遺伝子組み換えの学習をする時も、ひとり1人の声を大切に、たとえば街中でシール投票なんかもやってみたいですね。

日米合同キャンペーン

——日米で一緒にできることもありそうですね。

ゼン アメリカで生産する大豆の9割以上が遺伝子組み換えです。そして日本はアメリカから最も多く大豆を輸入しています。アメリカのママたちは、遺伝子組み換え大豆を作ってほしくない。日本のママたちもいらないと言っている。その声を揃えて、4月のアースデイや5月の母の日に合わせてキャンペーンをやってみるのもいいですね。

松村 日米のママが一緒に「いらない!」と言っているポスターなんか作れるといいですね。明るく楽しくパワフルにやっていきたい。

ゼン ほんの小さなことでもいいから、良いアイデアを出し合いコラボレーションしていきましょう。私たちはこれまで、遺伝子組み換え食品の表示をしてほしい、私たちには知る権利があると主張してきましたが、これはある意味、失敗だったと思っています。むしろ人の健康問題なんだと訴えることが大事で、これからは栽培を禁止させるためにもっと動かないといけないと思っています。日本には生活協同組合のすばらしい歴史があるのだから、その基盤を生かしていってほしいですね。

松村 食の講演会を地域で開いたあとに、その仲間たちと子どもたちも参加して無農薬の田んぼの田植えや稲刈りなどをしてきました。草履やリース作りなどを通じて仲良くなった人たちがいます。こうした繋がりを大切に、さらに広げていきたいですね。

杉山 ゼンさんの話に勇気を頂きました。安保法制も強行採決され、共謀罪も出てきて、なんだか委縮しているところがありましたから。これを機に裾野を広げて、ママ同士で繋がっていきたいですね。

※1 ポリ塩化ビフェニール。有害化学物質

※2 主要農作物種子法

(通訳 廣内かおり、マーティン・フリッド)