日本消費者連盟は2024年6月22日の第51回定期総会で、「世代を超えた影響を防ぐためプラスチックに含まれる有害化学物質の規制をもとめる特別決議」、「消費者には知る権利・選ぶ権利がある ゲノム編集食品の表示義務化を求める特別決議」、「健康食品の規制を求める特別決議」、「着々と進む戦争準備に抗い、平和憲法を手放さず、アジア諸国の市民とつながるための特別決議」の4本の決議を採択しました。
世代を超えた影響を防ぐため
プラスチックに含まれる有害化学物質の規制をもとめる特別決議
地球規模のプラスチック汚染を防ぐために、2025年の国際プラスチック条約制定に向けて現在国連の策定作業が進められています。プラスチックは廃棄処理の問題に加えて、環境ホルモン(内分泌かく乱物質)も含め有害化学物質が添加されていることが大きな問題です。日常生活の中で、プラスチック製品から、PFAS(有機フッ素化合物)、フタル酸エステル類、ビスフェノール類といった有害化学物質が放出されているのです。そのため、国際プラスチック条約には、プラスチックに含まれる有害化学物質の規制対策が盛り込まれることが期待されています。
人類はこの100年ほどで、石油から多くの化学物質を合成してきました。この合成化学物質は、分解されずに環境中に残存し影響を与え続けます。生物にとっては未知の物質で、ヒトへの急性毒性、慢性毒性、発がん性などが判明するにつれて、後追いで規制対策がなされているのが現状です。
今、特に、注視すべきは、微量でもホルモンや神経伝達作用に悪影響を与える、環境ホルモンや神経伝達攪乱化学物質です。不妊症や発達障害などとのつながりが明らかになり始め、環境ホルモンは、世代を超えた影響を及ぼす可能性も報告されています。環境ホルモンは、諸外国では研究と規制が進んでいますが、日本ではこの20数年間、規制は全く進まずに放置されたままなのです。
「すこやかないのちを未来につなぐ」ことをモットーとする日本消費者連盟では、関係団体と連携し、環境ホルモンとなる有害化学物質の規制を盛り込んだ、国際プラスチック条約が策定されるよう、政府への働きかけに取り組んでいきます。
以上、決議します。
2024年6月22日
特定非営利活動法人日本消費者連盟 第51回定期総会参加者一同
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消費者には知る権利・選ぶ権利がある
ゲノム編集食品の表示義務化を求める特別決議
安全性が確認されていないゲノム編集食品が日本では表示義務も課せられないまま流通しています。当初はオンライン販売が中心でしたが、最近になって首都圏のスーパーマーケットでゲノム編集トマトの販売が始まりました。その箱には、商品の機能性を謳う宣伝文句が大きく表示される一方、ゲノム編集技術で作られたことはほとんど見えないような小さな文字で書かれているだけです。これではゲノム編集食品だと気づかず購入する消費者もいます。
人為的に遺伝子を壊したゲノム編集生物は、開発企業などが主張する自然界で起こる突然変異で誕生した生物とはまったく異なります。ゲノム編集食品は、長い人類の歴史の中で食経験のないものです。将来どのような影響が出てくるのか、誰にもわかりません。未完の技術ともいわれるゲノム編集で作られた食品については、現時点で考えられる最高レベルの安全審査を行うととともに規制を強化し、且つそれを食べたくない消費者が避けられるよう、早急に表示を義務化すべきです。
ところが、表示制度を所管する消費者庁は、最終製品でゲノム編集されたかどうか判別できず、違反者を特定できないため表示は義務化できないと言います。しかし、開発企業に対しどの遺伝子を壊したのか情報公開を求め、第三者機関による検査体制を整備すれば、表示は可能なはずです。
消費者には知る権利・選ぶ権利があります。2024年はこれら消費者の権利の尊重を謳った消費者基本法の制定から20年です。日本消費者連盟は、全国の地方議会で国に対してゲノム編集食品の表示を求める意見書を採択させる取り組みを地域から草の根で広げ、表示義務化を目指します。
以上、決議します。
2024年6月22日
特定非営利活動法人日本消費者連盟 第51回定期総会参加者一同
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健康食品の規制を求める特別決議
小林製薬の紅麹サプリによる健康被害発生により、健康食品の問題が社会的に注目されました。紅麹問題は、特定成分の過剰摂取による健康被害のおそれについて考えるべき状況を提示しました。
機能性表示食品は安倍内閣の経済成長戦力アベノミクスとして作られたもので、企業の届け出だけで機能性を表示でき、政府は安全性を評価しません。その結果、健康保健機能の表示をあふれさせ、被害を拡大させ、経済優先の食品行政の弊害を露呈しました。
消費者庁に設置された「機能性表示食品を巡る検討会」は5月末に、この問題を危害情報の報告の問題と異物混入防止の品質管理上の問題として片付ける報告書を出して収束を図りました。このような小手先の対策では健康食品による被害はなくなりません。
私たちは、これまでも健康食品の誇大な表示の規制、機能性表示食品制度の廃止などを求めてきましたが、紅麹問題を期に、改めて機能性表示食品制度の廃止と健康食品の抜本的規制を強く求めていきます。
以上、決議します。
2024年6月22日
特定非営利活動法人日本消費者連盟 第51回定期総会参加者一同
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着々と進む戦争準備に抗い、平和憲法を手放さず、
アジア諸国の市民とつながるための特別決議
2023年の世界の軍事費は前年比6.8%増の2兆4,430億ドル(約378兆円)と、22年に続いて過去最高となりました。そのうち、22年からウクライナに侵攻するロシア、23年10月からパレスチナを攻撃し続けるイスラエルは、ともに24%増とトップクラスの伸びを示しました。日本も安保3文書改定の22年12月以降、5年間で43兆円という莫大な軍事費支出を計画し、南西諸島だけでなく本土にも自衛隊基地増強や民間地におけるシェルター設置など戦争準備を着々と進めています。
いま世界は、話し合いによる外交よりも暴力が支配する前近代に戻ろうとしているかのようです。日本も含め先進国は自国ファーストを貫き、排外主義を強めています。自国民を守るのは軍事力とばかりに、各国が軍事費を増強している背景には、憎悪を駆り立て戦争をあおる「死の商人=軍事産業」の暗躍があります。
私たち市民は、戦後80年近く日本国憲法に守ってきました。世界でも数少ない戦争放棄を謳った最高法規を手放すわけにはいきません。これまで特定秘密保護法、集団自衛権の行使容認、安保法制、共謀罪、重要土地規制法、経済安保法など、民主主義や人権を脅かす法律が次々と成立し、その都度、日消連は反対の意思を表明してきました。安保3文書の改定、敵基地攻撃能力の保有で解釈改憲は完成の域に入ったとの見方もあります。しかしまだ明文改憲はされていません。
私たちは、武力を否定する平和憲法を持つ国の市民として、いかなる戦争にも反対するとともに、アジアをはじめとした他国の市民と協働で平和を築いていきます。戦争を食い物にする武器製造企業に強く抗議し、敵基地攻撃ミサイルの開発や殺傷能力のある武器輸出に反対します。日本政府に軍事大国の道をやめ、独自の外交路線で平和を築くよう訴えます。そして、アジアの市民と協働で声明を発表し、平和を望む世論を大きくしていきます。
以上を決意し、決議とします。
2024年6月22日
特定非営利活動法人日本消費者連盟 第51回定期総会参加者一同