日消連では、「どこでも誰にでも、放射能健診の実施を求める100万人署名」の呼びかけに賛同しています。原発事故関連の報道が減少していく中、エネルギー基本方針で明らかになったように、事故のことを忘れたかのような原発再稼働の方針が進められています。事故についての賠償も少しずつ進展してはいるものの、まだまだその権利があることすら知らされていない人が多くいます。
2014年4月25日、放射能健診100万人署名運動の第2回実行委員会が開かれました。内閣総理大臣、復興大臣、厚労大臣、環境大臣あてに健診の実施を要求する署名77,325筆が提出されました。復興庁、環境省への要請活動もされました。子どもたちに甲状腺がんのアウトブレイクが始まっているなか、福島だけでなく、内部被ばくも含め、希望するすべての人に健診と医療保障を行うことは国の責任のはずですが、調査や健診ができにくい体制のもとで、甲状腺がんのアウトブレイク(多発)が矮小化され隠されているのが現実です。
1 専門家会議の議論は?
2014年4月24日に環境省の第5回東京電力福島第一原子力発電事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議が開かれました。会議では、国連科学委員会(UNSCEAR)の福島原発事故報告書について、(独)放射線医学研究所総合研究所放射線防護センター長の説明に対して質疑応答がされました。(17名の委員中14名出席)。
(1)放射線防護センター長の説明(茶色字は資料のまま)
説明資料により、実効線量(msv)吸収線量(mGy)ともに、成人、乳児を問わず、計画的避難地域で高く、乳児の吸収線量は近隣県に比べても20倍から40倍高いことがわかりました。説明では、避難により、その場にとどまり続けた場合に比べて、被ばく線量を10分の1に低減することができた。(たとえば、乳児で、750mGy低減)ただし、避難により、避難関連しの増加と、精神的、社会福祉的な-の影響も生じている。とされています。
スピーディの情報を隠し、「ただちに影響はない」として住民の避難を妨げた政府の責任は厳しく問われるべきですが、現在においても、福島県民健診として情報を丸抱えし、健診そのものをさせにくくさせている体制は問題とされるべきです。被ばくしてしまった人たちに正確な事実を知らせ、被ばくによる影響から今後子どもたちを守るためにも、避難したかどうかを問わず、健診を充実させ、医療保障体制を整備していくことが必要です。
説明では、健康影響について、甲状腺がんについて、ほとんどの線量推計値は、疫学的に被ばくによる甲状腺がんの発生率の上昇が認められる水準ではなかった。仮に推定値の上限の被ばくを受けた人間が相当数いたとすると、甲状腺がんの発生率が増加する可能性がある。しかしながら、チェルノブイリの事故後の住民の甲状腺被ばく線量と比べ、福島県での被ばく線量はかなり低く、チェルノブイリ事故後のように甲状腺がんが大幅に増加するとは予想されない。
とされています。そして、
福島県民健康調査における子どもの甲状腺検査においては、比較的多くの甲状腺異常が見つかっているが、事故の影響を受けていない地域の同等の調査と同様の結果である。今後、このような集中的な検診がなければ検出されなかったであろう甲状腺異常(がん症例を含む)が比較的多数見つかると予想される。
すでに生じているアウトブレイクについての評価がこのように他人事?であってはなりません。アウトブレイクの影響を直視し、早急な対策をとることが必要であり、そのためには事実を把握するために健診を受けやすい体制つくりを行う必要があります。
会議では、「福島での被ばくによるがんの増加は予想されない―国連報告書 最も高い被ばく線量を受けやすい小児の集団では甲状腺がんの低いリスクがある」と和訳された標題の1枚のA4用紙が資料として国際連合広報センターの資料が配布されました。(原文は下記)
http://www.unic.or.jp/news_press/info/7775/
2014年4月2日に出されたこの報告では、「福島原発事故の結果として生じた放射線被ばくにより、今後がんや遺伝性疾患の発生率に識別できるような変化はなく、出生時異常の増加もないと予測している。
その一方、最も高い被ばく線量を受けた小児の集団においては、甲状腺がんのリスクが増加する可能性が理論的にあり得ると指摘し、今後、状況を綿密に追跡し、更に評価を行っていく必要があると結論付けている。甲状腺がんは低年齢の小児には稀な疾病であり、通常そのリスクは非常に低い。
「人々が自身や自分の子どもの健康への影響を懸念するのは当然のことである」とUNSCEARの議長、カール=マグナス・ラルソン氏は述べ、「しかし、本委員会は、今回の評価に基づき、今後のがん統計に事故に伴う放射線被ばくに起因する有意な変化が生じるとは予想していない」との見解を示している。
これらの解析結果は、様々な集団(小児を含む)の被ばく線量の慎重な推定と放射線被ばくを受けた後の健康影響に関する科学的知見に基づいている。
解析によれば、対象とした集団のがん発生率への影響は小さいと予想されるとし、これは日本の当局側が事故後に講じた迅速な防護措置に拠るところが大きいとしている。
この報告書に沿う見解について、疑問を呈するような発言は委員の間からはありませんでした。(下線、太字修正は著者)
2 100万人署名へご協力・団体賛同を!
放射能健診100万人署名の取り組みは、福島第一原発の事故で避難している住民らを支援する市民団体である、避難・帰還・移住の権利ネットワークが呼びかけ、2014年2月23日に「放射能健康診断100万人署名運動全国実行委員会」( 井戸川克隆委員長:福島県双葉町前町長)として立ち上がりました。全国で署名活動を進めており、生協などの取り組みも始まっています。福島県外の人でも希望者には無料で被ばく検査を行うよう、国に要望しています。
同会では、2014年4月25日、環境省と復興庁、国会議員を訪れ、福島県の内外を問わず、希望者は誰でも無料で被ばく検査を受けることができるよう要望しました。現在は、原発事故の当時、福島県内にいた18歳以下の住民に限って、無料で甲状腺の検査を受けられますが、福島県外の人も放射性物質による健康不安を感じているとして、国による検査を求めています。
詳しくは
インターネットでの署名もできます。
多くの皆さまのご署名をお願いいたします。 (共同代表 古賀 真子)