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子宮頸がんワクチンの中止と被害救済を求め、被害者が要望書提出&ワクチントーク全国集会報告

子宮頸がんワクチンの中止と被害救済を求め、被害者が要望書提出&ワクチントーク全国集会報告

 接種後の長期的な痛みやしびれなどを訴える人が出ている子宮頸がんワクチンについて、健康被害を受けたと訴える父母らで作る全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会は8月23日、田村憲久厚生労働相と面会し、要望書を提出しました。

 要望書は、子宮頸がんワクチンを定期接種の対象から外すこと、速やかな原因究明と治療法の確立、治療に対する援助などを求めています。

 接種後に体に痛みやけいれんが出るなどした14~18歳の女子8人も訪れ、症状や通学が困難な現状などを訴えました。

1導入の経緯、推進に疑問

 子宮頸がんワクチン2010年に厚生科学審議会感染症部会予防接種小委員会の審議会で、加藤達夫委員長(当時)や岡部信彦委員長代理(川崎市健康安全研究所所長、現厚生科学審議会予防接種基本方針部会長ほか)の強力な議事運営を背景に、ヒブワクチンや小児用肺炎球菌ワクチンと一緒に、2010年12月26日から国の事業接種が始まりました。

(医師会、国会議員、メーカー関係団体の攻勢はすさまじかったようですが、この間の事情については今後明らかにされることを強く望みます。)

日消連とワクチントーク全国は、2010年8月に緊急集会を開催し、10年11月には子宮頸がんワクチンへの疑問を訴えるブックレットを作成、機関紙消費者リポートでも度々、接種事業の中止を訴えてきました。厚労省や審議会へも申し入れを行い続け、特に副作用の情報提供がされないままに、強制力の働く、「子宮頸がんワクチンの定期接種化」に強く反対してきました。接種事業中からPMDAなどで副作用の多さは明らかになっていましたが、厚労省は単に統計処理をするのみで、事後の追跡調査もなされず、莫大な公費を投入して、接種事業は定期接種化への道を突き進んできました。

2見過ごせない副作用

2010年12月6日,厚労省の安全対策会議を報道した読売新聞で、子宮頸がんワクチンで失神が多発し転倒負傷例があることが報告されました。11年9月12日の毎日新聞では11年7月に接種した女子中学生の死亡例が報道されましたが、予防接種審議会は因果関係を否定し、接種事業は継続されました。その後も子宮頸がん等ワクチン予防接種後副反応検討会では、多くの副作用の報告がされましたが、厚労省は接種推進を継続してきました。(詳細は日消連ブックレット[必要ですか?子宮頸がんワクチン]参照)

3被害者の連携と積極的接種勧奨の中止

13年3月1日には、すでに重篤な被害者が多発しているとの情報を得て、日消連とワクチントーク全国は、被害者を支える会の中心メンバーとともに厚労省交渉を行い、定期接種化の見直しを訴えましたが、予防接種法改正により、2013年4月にヒブ、肺炎球菌ワクチンとともに定期接種となりました。

しかし、その後、精力的に、被害者連絡会や被害者を支える自治体議員の支える会の働きかけにより、副作用の実態や救済とは程遠い被害の現状が明らかにされ、厚労省は6月14日の審議会で、接種推奨(積極的勧奨)の一時中止を決めました。

4積極的勧奨の中止は続くのか?

医療関係者をはじめ、「子宮頸がんの病気自体の重篤さや、定期接種として受けたい人の権利を保護し、副作用には手厚い保障をすべきで接種自体はやめるべきではない」という意見も多くだされています。

日本産科婦人科学会声明によれば、「安全性が確認されるまでの間、強い推奨を一時中止するという勧告は妥当」とし、「今後、厚生労働省の予防接種に関する合同部会をはじめとする専門家により、ワクチン接種の安全性が科学的にかつ速やかに確認されることを期待します。また同会も、ワクチン接種と有害事象との関連性を含め、安全性に関する調査と研究を行うべく、13611日、同会内に「HPVワクチンの効果と安全性に関する調査委員会」を設置し対応している」ということです。
同会は、「子宮頸がんの発症を予防し、たとえ発症しても早期発見・早期治療によって若い女性の妊孕能、そしてその生命を守っていくために、HPVワクチン接種と子宮頸がん検診の両方を広く普及させていくことがとても大切です。ワクチン接種希望者には、引き続き、安心して接種を受けていただく必要があります。今後も、本会は子宮頸がん予防のHPVワクチンの効果と安全性につきまして、みなさまに広く情報を提供してまいりたいと存じます。」

http://www.jsog.or.jp/statement/statement_130624.html

としています。(下線は筆者)

厚労省は、こうした一連の流れの中で、被害の調査(調査方法に問題あり!)をして、接種の積極的勧奨の再開を目指しているようです。学校現場においても、この3年間で接種の実質的な接種推奨を行ってきた経緯もあり、自治体も莫大な予算措置の中で厚労省の対応を固唾をのんで見守っているというのが現状です。

6月から8月にかけては、もともと接種の落ち込む時期です。9月、10月に「安全宣言」のもとで積極的接種の勧奨がはじまることはないのでしょうか。

5ワクチントーク全国集会

それでも「がんが予防できる」なら、接種の必要性があるのかを考えるべきですし、予防接種行政をつかさどる審議会の中心者である、岡部信彦氏が言われるように、「病気を防ぐ利益と、副反応の存在とのバランスを常に考える」という考え方には、病気が蔓延し、それを防ぐためにワクチンが必要である場合には説得力があると思えます。

 しかし、そのバランスを考えるのはだれでしょう?予防接種被害の歴史は、隠ぺいと被害の過小評価、認定の困難さの中で、30年も命がけで戦って勝ち取ってきた被害者と支援者の歴史でもあります。

この子宮頸がんワクチンについても、もっと情報公開して、国民的議論を起こす必要はないでしょうか?

 日消連とワクチントーク全国は、13年7月27日に東京で、子宮頸がん問題を中心とした講演会を行いました。「子宮頸がん…病気とワクチンの本当の関係〜今でしょ! ワクチン総点検」です。会場の明治大学リバティタワー1083教室は150席がいっぱいになる盛況ぶりで、予防接種への関心の高さがうかがわれました。

 金沢大学付属病院産婦人科医師・講師の打出喜義さんは、2010年に週刊誌に載った子宮頸がん予防ワクチン・キャンペーン批判の記事を示しながら、「当時は副作用の報告がなく、記事の末尾に『健診受診率向上とセットで若い人へのワクチン接種を普及させること』と書きましたが、今日はこの反省をもとにお話をします」と講演を始められました。

 詳細な資料にもとづき、子宮頸がんとはどんな病気か、ワクチンの有効性と安全性について説明し、有効性は本来がんの死亡率減少で確認されるが膣内のヒトパピローマウイルス増減の話にすり替わっており、がん減少につながるか不明なこと、安全性を示す論文の著者24人のうち16人が利益相反にあたるなどとして疑問を呈しました。副反応については、接種後のあらゆる症状が報告されていないこと、接種人数が増えることで治験段階ではみられなかった有害事象が発生する可能性があることなどからも、定期接種化には疑問であるとしめくくられました。(消費者リポート掲載予定、ビデオを日消連ウェブサイトで視られます)

6被害者の要望書とマスコミの報道

子宮頸がんを予防できるということで、接種が推進され、定期接種にまでなったワクチンですが、今回、被害者が厚労大臣に直接面会し、現状を訴えたことで、定期接種の見直しは進むのでしょうか。

被害者の要望書(要旨)は、

1、HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)接種事業を完全中止すること。

(予防接種法を再改正し定期接種対象から外し、26年度は予算措置を講じないこと)。

2、速やかなる治療方法の確立

痙攣・不随意運動・運動失調など脳神経症状や 激痛などの諸症状の原因究明と治療法研究への早期着手。

3、治療に関わる金銭的援助

(接種後長期にわたる医療出費で困窮者が続出していること)

4、因果関係調査における迅速な対応のため、接種年代における全員調査。

です。

当日の記者会見ではほとんどのマスコミが取材にきて、記者会見室はテレビカメラでいっぱいになりました。しかし、報道はそれほど大きくはされませんでした。体調の悪い中、遠路、厚労大臣に訴えた少女とその保護者の方たちの思いに、マスコミの報道は応えたといえるでしょうか?

7少女たちの訴えに厚労省はどうこたえるのか?

冒頭、被害者の会の代表の母親Mさんが「厚労大臣に要望書を渡し、現状を説明した。厚労大臣は40分ほど会見に応じ、被害の子どもたち一人ひとりと握手したが、途中で痙攣発作が出る子どもの状況を見てショックをうけたようでした。子どもたちの安全な未来のために、勧奨をしないように、事業の中止を訴えた。4つの要望に加え、現場の医師を部会に参加させて、被害の実態を知ってほしいとの要望もした。」と報告されました。ほかの同行者からも、「歴史の浅いワクチンであるが、世界中で起きている副作用であり、接種医も治療医も、このような症状は見たことがないと言って、最後は精神科を紹介される」ことの理不尽さを訴えました。

被害にあった少女たちからは、

「高校1年の2月に接種、翌月3月に2回目接種後、失神、脱力、痙攣がおき、杖が必要となった。ピアノの大会で金賞をとり、成績もよかったのに、学校に行けなくなり、大学受験を断念した。いくつも病院に行き、大きな病院でも因果関係を否定された。がんに効果があるといわれるが、これ以上苦しい人が増えてほしくないので、今日は来た。」

「もうすでに周りで打っている人がいるので、自分もそうなるのではないかと不安を与えてしまうことになるので、自分の苦しさを人に伝えられない(症状の発現はすぐとは限らないため)。家から出られないので、治療法を考えてもらいたい。被害者の会ができて、発作で眠れない時にLINEで同じ症状の人とつながれるのが救い」

「中学3年の時、8月にガーダシルを1回だけ打った。チック、痙攣、疲労感、頭痛が急に出ては、急に止まるというような症状でコントロールができない。SNでつながっていることで皆で励ましあっている。それまで皆勤賞だったのに、以後学校には3分の1くらいしか行けなくなった。原因を早く解明してほしくて今日は来ました」

「高校3年で打ち、一か月半寝たきりになった。バイオリンもできなくなり、学校にも行けずみんなと遊べない。すごく痛い。早く解決策を見つけて。再開しないでほしい。」

また、保護者からは、

「11年8月にサーバリクスを打った。1回目は筋肉痛。手先がしびれると訴えたが、2,3回目も接種したが痛みはなかった。その後、関節炎やめまいがでたが、親は気づかなかった。色々な病院にいくと、チックだと言われたが、寝ている間も出ているのでおかしいと思ってまた違う病院に行った。病院ではMRIの診断でも異常なしといわれ、精神科にも行かされた。思春期の鬱だとも言われた。約1年半後にMさんの報道をみて、ワクチンが原因と確信した。治療費がかさむので、PMDAに申請したが、病院を転々としているので、いくつも書類が必要といわれている。健康保険にも申請したが返戻された。朝一番に歩行できず、学校に通えず不登校となってしまった。体調不良に早く気付いてあげればよかった。」

「中学3年の夏に接種した。剣道をしてて部活が忙しかった。動きがぎくしゃくしてきたが、太ったせいかとおもっていた。現在高校2年だが、2,3年後に出てくることもある」

「接種後、目に痙攣がでた。もともとワクチンについては慎重に考えており、8か月間調べた。親族に子宮頸がんで手術したものがおり、遺伝的に受けておいた方が良いかと思い接種させた。13年3月の記事が出て、同じ症状だと確信した。もっと早く知らせてほしかった。国の勧奨の仕方に問題がある。最初の学校のお知らせでは受けずにいたが、何度も来るので受けさせたことに後悔している」

そのほか、支援している自治体の代表からは、「相談が640件きている。147件については申請している。昨日も北海道から、中学3年の子どもの親御さんが、高校入学時に保険センターから「必ず接種してください」というお知らせを受け、接種して失神した。今後どうなるか不安だ」との情報が寄せられている。過呼吸や1年間検査してもわからず、*文科省の調査も2週間連続して休んだものが対象のために、少しでも状態がよいと出席する子どもは調査対象から外されている。思春期の鬱といわれたり知的低下している例も多くある。」と報告しました。

途中、車いすの上で痙攣の止まらくなった子どもや、気分が悪くなりながら必死で記者会見に来た子どもたちの姿が胸を打ちました。

8積極的勧奨の中止を続け、定期接種の見直しを!

医療事故の被害者のため相談に乗り、支援をしてきた、医師や弁護士を中心に活動する、薬害オンブズパーソンが、子宮頸がんワクチンの問題に取り組みを始めたので以下に引用して紹介します。

★「子宮頸がんワクチンに関する本当のQ&A」

厚生労働省は2013年6月「子宮頸がん予防ワクチンの接種を受ける皆さまへ」と題するリーフレットを作成、配布し始めました。

リーフレットでは「現在、子宮頸がん予防ワクチンの接種を積極的にはお勧めしていません。接種に当たっては、有効性とリスクを理解した上で受けてください。」とされています。しかし、リーフレットにも、厚生労働省がホームページ上で公表している「子宮頸がん予防ワクチンQ&A」にも、保護者や本人が接種を受けるかどうかを判断するのに十分な情報は書かれていません。

そこで、薬害オンブズパースン会議では、判断のキーポイントに絞って、独自のQ&Aを作成しました。

このQ&Aは、下記のページです。

http://www.yakugai.gr.jp/cc_vaccine_qa/

 

(共同代表 古賀 真子)

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