日本消費者連盟
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1月6日締め切り、エネルギー基本計画に異議の意見を!

エネルギー基本計画へのパブリックコメントの募集が明日締め切られます。今後の経済や国民生活、原発政策、再生エネルギー普及、電気料金などにも重大な影響がある基本政策です。メールやファックスならまだ間に合いますので、ぜひ意見を出しましょう。意見案を提案します。

日消連はすでに提出しましたが、電力システム改革市民委員会も1月5日に提出しました。意見提出の方法は、

パブコメ 新しい「エネルギー基本計画」策定に向けた御意見の募集について

http://bit.ly/19n4ngO

今回、意見提出方法が、① e-Govからの提出、②FAX、③書面郵送、の3つしかありません。

① e-Govは、プレーンテキストで2000文字しか書けません。e-Govであれば以下のような意見が考えられます。

(意見案)

福島原発事故の教訓を踏まえ、エネルギー転換を進める方針を明確に示す基本計画を策定すべきであり、市民の意見を広く聞き的確に反映させるべきです。その先の道筋として、現在の安定供給至上主義のエネルギー基本政策法から、「持続可能性、環境との調和、市民参加と選択の保障」を理念におくエネルギー新法への組み替えが必要です。新法の下では、再生エネルギー促進・脱原発・脱化石燃料への転換に向けて市民が基本計画の決定に関わり、安価で安全なエネルギーを選択できるようにしなければならないと考えます。


電力システム改革市民委員会の提出した意見

資源エネルギー庁長官官房総合政策課 パブリックコメント担当宛

新しい「エネルギー基本計画」策定に向けた御意見の募集について

電力システム改革市民委員会

総合資源エネルギー調査会基本政策分科会が公表した「エネルギー基本計画に対する意見(案)」に対して、以下の通り意見を述べます。

第1 意見の趣旨

1 原子力発電に依存しない基本計画を策定すべきです。特に核燃サイクル政策は即時中止すべきです。

2 化石燃料への依存を減らし、再生可能エネルギーの推進等、省エネルギー及びエネルギー利用の効率化を政策の中核として、数値目標や方策を具体化すべきです。

3 エネルギー政策については、情報を公開し、市民の意見を聞く場を設けるべきです。

4 電力システム改革を行うに当たっては、経済産業省と供給側の電気事業者の視点だけでなく、需要側である市民のための電力政策を調査検討する組織を消費者庁内等に設置し、市民の意見を反映させる場を設置すべきです。

5 基本政策分科会に需要側である消費者代表の委員を増員し市民・消費者の意見を反映させること、地震学、関連諸科学の専門家を加えて意見案作成をやり直すことを求めます。各委員とエネルギー事業者との利益関係を情報公開することも必要です。さらに、エネルギー基本政策法を、あらたな理念と方針に基づくエネルギー新法へ組み替える作業に着手すべきです。

 

第2 意見の理由

1 はじめに

エネルギー基本計画は、我が国の持続可能な国民生活、産業の育成等にかかる重要な政策です。汚染水問題に象徴されるように、深刻な原子力災害は現在も継続しています。国は、原発事故の収束問題を最優先の政策課題に設定して早急に全社会的な態勢を整え、原発ゼロに向けて廃炉の取り組みを進めるともに、原発に依存しない新たな電力システムを構築するべきです。

 

2 意見1 原子力発電に依存しない基本計画の策定について

(1) 原子力依存からの脱却を求める声が国民の7割に及んでいます。原子力推進政策を抜本的に見直し、原子力発電と核燃料サイクルから撤退することこそ国民の総意であることから、私たちは以下の提言をいたします。

(1)計画中・建設中のものを全て含む、原発の新増設を止め、再処理工場、高速増殖炉などの施設を含む核燃料サイクル事業を直ちに中止すること。

(2)既設の原発について、安全審査の目的は、放射能被害が「万が一にも起こらないように」する絶対的安全にあるが、原子力規制委員会が新たに策定した規制基準は、確率によるリスク評価の審査であり、絶対的安全は確保されない。したがって原発の運転(停止中の原発の再稼動を含む。 )は認めず、できる限り速やかに、全て廃炉にすること。

意見案では、原子力発電をなお重要なベース電源と位置付ける点で極めて問題です。

(2)原子力発電についての基本的認識についての意見

福島第一原発事故の総括は極めて不十分・不正確です。意見案では、福島第一原発事故について、「政府及び事業者は深く反省し」、「原因の探求と再発の防止のための努力」等の記述があるものの、事故原因は巨大津波にあるかのような記載であり、反省すべき点についての具体的な記述がありません。国会および政府事故調査委員会報告や、近年の地震学の提言を踏まえた形跡もありません。

一方、原子力発電については、「優れた安定供給性と効率性を有しており」、「運転コストが低廉で」、「運転時には温室効果ガスの排出もない」ことから、「世界で最も厳しい水準の新規制基準の下で原子力規制委員会によって安全性が確認された原子力発電所については、再稼働を進め」、「エネルギー需給構造の安定性を支える基盤となる重要なベース電源として引き続き活用していく」とし、将来的にも「必要とされる規模を十分に見極めて、その規模を確保する」としています。原発の発電コストについては、もっぱら運転コストだけから「低廉」という評価を与えることは、福島原発事故前の「原発の電気は安い」という神話に回帰する大きな誤謬です。民間調査機関の試算によれば、最新の安全装置の導入、現実的な廃炉費用などを考慮すれば、その発電単価は1kWhあたり17円以上にもなり、火力発電を大きく上回るとされています。原子力発電コストには運転時だけでなく全コストを含めるべきであり、東日本大震災前からも、放射性廃棄物の処分など全コストを考慮すると、むしろコスト高であることが指摘されてきましたが、東日本大震災後には、事故対策のコストが極めて巨額に上ることが明らかとなっています。

なお、東日本大震災、福島第一原発事故後の電力供給に占める輸入化石燃料費の増加が強調されていますが、その過半は化石燃料単価の高騰及び円安化によるものであり、輸入量の増加によるものは一部です。原発再稼働がなければ電気料金の更なる値上げがあるということは国民をミスリードするものです。

意見書案は、原子力について、引き続き活用していく重要なベース電源であると位置付け、再稼働を進めるとするとし、「国民、自治体、国際社会との信頼関係の構築」として、「原子力に関する丁寧な広聴・広報」を進め、立地自治体や住民等関係者の理解と協力を得るために「丁寧な対話を通じて信頼関係を構築」、「立地地域支援対策」を進めるとしています。これまで電源三法交付金など巨額の財政コストをつぎこんだ上に再び、利用促進のための広報活動と補助金行政を継続しようとするものです。

 これらは、原子力利用の推進を前提としたものであり、福島第一原発事故をもたらしたそれまでの原子力推進政策の誤りの分析、反省がまったくみられないことは明らかです。安全基準についても①立地指針を削除する、②事故発生を防ぐために重要な施設につき、いまだに重要度を低いままとする、③共通要因故障(複数機器の同時故障)を設計基準の事故として取り入れていない、④シビアアクシデントにつき、事故防止策が十分取られていないなど、大規模な自然災害やテロなどの人為的脅威に対する基準が設けられていません。意見案では「国民的な理解として事故のリスクはゼロでないことを共有し、そのリスクを許容レべルに下ける様々な対応が必要」とありますが、福島第一原発事故原因がいまだ不明であり、まったく現実味がありません。このように現在の基準には数々の重大な問題点があり、到底、安全確保に足りるものではありません。

(3)核燃サイクル事業からの撤退について

意見案は、核燃料サイクルを着実に進めるとしています。しかし、核燃料サイクルについては、①使用済核燃料の再処理技術は未確立である、②平常運転時にも大量の放射性物質を放出させる、③膨大な高レベル放射性廃棄物を発生させる、④地震やテロ等による施設破壊が起こると地球規模での被害が発生する、等の重大な問題点があります。

海外の専門家も日本の核燃サイクルを厳しくナンセンスと批判しています。再処理工程での臨界事故、福島第一原発事故の直接的原因となった冷却機能喪失事故の再現(使用済燃料の溶融事故、高レベル廃液の水素爆発事故など)も想定されます。さらに、再処理後に残る高レベルガラス固化体自体の技術と処分方法はいまだ確立されておらず、最終処分のめどは全く立っていません。必要性、経済性、安全性に多くの問題を抱える再処理は直ちに中止し、核燃料の環を絶ち切る政策こそが必要です。

 

3 意見2 今後のエネルギー政策については、原子力はもとより、化石燃料とりわけ石炭火力にも依存せず、再生可能エネルギーの推進、省エネルギー及びエネルギー利用の効率化と低炭素化を政策の中核とすることが必要です。

(1)基本認識についての偏り

意見案は、第1章に世界のエネルギー状況に関する認識を示し、この中で「最新の状況 化石燃料」に関し、北米のシェール革命や中東情勢等について言及しています。しかしながら、自然エネルギー(再生可能エネルギー)の飛躍的な拡大が、世界各地で進んでいることについては一言も触れられておらず、その一方で、原子力については「新興国を中心とした世界的な原子力の導入拡大」という観点だけから述べており、福島原発事故以降、ドイツ、ベルギー、イタリア、スイスなどの国で脱原発の政策が決定されたことにも、米国で既存の原発の廃炉が続いていることにも全く触れていませんこうした「原発偏重」というべき認識の偏りは、今回の「意見」全体を貫いており、原発依存からの脱却を願う国民の多くの声に背くものになっています。

意見案には、原子力発電所、再生可能エネルギー、その他のエネルギー源についても、数値目標が全く示されておらず、「基本計画」と呼ぶに値しないものです。意見案では、「日本の立地競争力の強化」、「経済成長の視点の重要性」、「追加的に発生する可能性のあるコストが国民生活や経済活動に大きな負担をかけることがないよう、バランスのとれた構造の追求」等が強調されていますが、原子力発電に依存することこそ、経済活動に大きな損害を与えかねないものです。今後、政府・事業者が優先してなすべきことは、決して原子力発電所を再稼働させることではなく、廃炉、汚染水対策、除染など、既存原子力発電所のリスク軽減への対応であり、また、原子力発電の代替エネルギー及び温室効果ガスの排出削減のための再生可能エネルギーの拡大並びに石炭から天然ガスへの転換のための政策措置の強化です。そのためには、化石燃料への依存を減らし、再生可能エネルギーの推進、省エネルギー及びエネルギー利用の効率化を政策の中核とすべきです。この視点から、以下の問題点を指摘します。

(1)意見案では、「石炭を安価なベース電源燃料として活用するとし、老朽石炭火力発電所のリプレースや新増設、海外でも導入を進める」としています。しかし、意見案でも、化石燃料のなかでも石炭の温室効果ガスの排出量が多いことを指摘しながら、最も安価であることからその新増設を含めて推進するとし、環境アセスメント期間の短縮化を明記し、現に新設が進められていることは問題です。現在、最も高効率の石炭火力発電であっても、高効率天然 ガス火力発電の約2倍の二酸化炭素を排出します。今後50年にわたって発電部門での二酸化炭素の高排出構造を決定付ける石炭火力発電所の新増設は避けるべきです。二酸化炭素発生量が飛びぬけて大きい「高効率石炭火力」の推進、産業部門の運用対策による省エネ可能性の軽視は問題です。

(2)「再生可能エネルギー全体としての拡大目標がなく、太陽光発電はピーク需要対応として、風力は広域的運用による調整力や蓄電池の整備を前提としていること」も問題です。意見案では、再生可能エネルギーについて、「温室効果ガスを排出しない、国内で生産できる有望な国産エネルギー源」としています。しかしながら、その一方で、政策の方向性としては「今後3年程度、再生可能エネルギーの導入を最大限加速していく」とし、中長期的な導入数値目標はなく、「今後3年程度」以降の政策は全く不明というほかありません。再生可能エネルギー関連産業の育成の観点からも全く不十分です。

(3)さらに、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(特措法)による固定価格買取制度について、「法律に基づき、エネルギー基本計画改定に伴いその在り方を総合的に検討し、その結果に基づいて必要な措置を講じる」とされています。これは、エネルギー政策基本法が定めるエネルギー基本計画の改定によって、特措法の改廃の見通しを盛り込んだものであり、再生可能エネルギー促進のために制定した法律をエネルギー政策基本法の下での計画の改定によって変更できるとする極めて問題の多い指摘といえます。こうした解釈によって「3年程度」以降、固定価格買取制度を解消することは許されません。

(4)また、太陽光発電は電力消費のピーク対策としてしか位置付けられていません。さらに、風力発電は地域内送電線や地域間連係線が必要であることから、電力システム改革の進行にかかっていますが、電力システム改革について2013年4月2日の閣議決定を指摘するにとどまり、改革の中身もあいまいです。再生可能エネルギーの飛躍的拡大には、明確な導入目標と、固定価格買取制度のより一層の充実(再生可能エネルギーの種類及び規模毎の適切な運用)を中心とする推進策及び発送電分離を含む電力システム改革の加速的実施が不可欠です

 

4 意見3及び4について

エネルギー政策については、情報を公開し、市民の意見を聞く場を設けるべきことは論を待ちません。電力システム改革を行うに当たっては、経済産業省と供給側の電力事業者の視点だけでなく、需要側である市民・消費者のための電力政策を調査検討する組織を消費者庁内等に設置し、市民の意見を反映させる場を設置すべきです。電力システム改革の制度設計が始まり、意見案では「需要側におけるより一層の省エネルギー及びエネルギー利用の効率化」も指摘されていますが、具体的にこれらをどのように実現していくのかについて、明確な目標の設定とそれを実現するための具体的なプロセスの提示が必要です。そのためには、広く需要者である市民の意見を聞き、政策に反映させることが必要です。

特に、需要家にとって関心の高い電気料金についてもミスリードが目立ちます。今後の電気料金の上昇の見込みについては、「固定価格買取制度に基づく賦課金の影響」のみが記載されています。しかし、今後の電気料金の上昇要因としては化石燃料価格の高騰があるとともに、中部電力の値上げ申請で明らかになったように、原発の発電コストや安全対策コストの上昇こそが大きな要因です。

一方、省エネ化を進めディマンドレスポンスなどのインセンティブを導入することで電力単価は上がっても、企業や家庭の電力料金総額を抑制することも可能になります。これらの検討を欠いたまま、固定価格買取制度の影響だけを記載するのは、一面的な議論であり、国民をミスリードするものです。

 

総括

      福島原発事故の教訓を踏まえ、エネルギー転換を進める方針を明確に示す基本計画を策定すべきであり、市民の意見を広く聞き的確に反映させるべきです。その先の道筋として、現在の安定供給至上主義のエネルギー基本政策法から、「持続可能性、環境との調和、市民参加と選択の保障」を理念におくエネルギー新法への組み替えが必要です。新法の下では、再生エネルギー促進・脱原発・脱化石燃料への転換に向けて市民が基本計画の決定に関わり、安価で安全なエネルギーを選択できるようにしなければならないと考えます。

 

以上

 

 

〒169-0051 東京都新宿区西早稲田1-9-19-207

電力システム改革市民委員会

(特定非営利活動法人日本消費者連盟内 小田、古賀、深澤、真下)

           TEL03-5155-4765:FAX03-5155-4767


*引き続き、電力システム改革市民委員会へのご賛同を募集しています。ぜひ、個人、団体での加入をご検討ください。

https://nishoren.net/energy/6077

(共同代表 古賀 真子)

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