生命が脅かされる時代に抗して
今日、わたしたちは創立50周年を記念して「生命が脅かされる時代に抗して~すこやかないのちを未来につなぐために~」と題するシンポジウムを開催しました。創立以来日本消費者連盟が掲げてきた「いのちをつなぐ」という理念自体が、いまかつてない状況におかれているという危機感を、この時代を生きるすべての人びとと共有したいと考えたからです。
いのちの危機はいろいろな形をとってあらわれています。地球上に溢れ、あらゆる生命体を襲う合成化学物質や廃プラスチック汚染ははっきり目に見える形で私たちの前に立ち現れています。遺伝子組み換え・ゲノム編集と続く生命操作技術の展開はいのちの商品化にほかなりません。危機はひとだけでなく、あらゆる生きものに及んでいます。沖縄の人びとの反対を押しつぶしで進む辺野古新基地建設は、大浦湾に生きるサンゴやジュゴン、多様な海洋動植物のすべてを殺しています。
基地建設の背後にあるのは戦争です。日本の憲法が世界に誇る平和主義は壊れかけ、軍事費は社会保障や教育など民生予算を食いつぶしてとめどなく膨張しています。平和に安心して生きる権利をうたった日本国憲法の条項は空洞化し、日本消費者連盟が活動のよりどころとしてきた消費者の権利もないがしろにされようとしています。
いのちの危機は社会のありようそのものにもあらわれています。80年代から顕著になったグローバル化の波は、本来値段をつけて売買してはいけない自然までも商品化してきました。この列島でも、地域で人びとが守ってきた水、土、森、海から共同性をはぎ取り、企業の私的な所有と利用にゆだねる制度改定が急速に進行しています。原発事故による核汚染を全国に拡散させることで解決しようとする動きはその典型的あらわれです。
あらゆるものの商品化はひとと自然、ひととひとの関係性を分断することで完結します。その結果、地域、家族の共同性は壊され、それはひとの心にまで及んでいます。こうしていま、差別と分断が社会を覆い、人びとは孤立し、心の闇が広がっています。
日本消費者連盟は小さい組織ですが、「いのちをつなぐ」という理念を掲げて続いてきたこれまでの50年の活動の歴史を、私たちはとても誇らしく思っています。そのいのちとはすべてのいのちのことです。すべてのいのちがすこやかにその生をまっとうできる社会を私たちはめざしています。その50年の歴史を受け継ぎ、くらしの現場から “いのちの危機”に対抗するための具体的な提案と、その提案に基づく実践を、これまでそしてこれから日本消費者連盟に関わってこられた方々、思いを共有していただける方々とともに積み上げていかなければならないと考えます。そんな思いを込め、創立50周年記念シンポジウム「生命が脅かされる時代に抗して~すこやかないのちを未来につなぐために~」からのメッセージとします。
2019年6月15日
日本消費者連盟会員・運営委員・スタッフ一同
創立50周年記念シンポジウム「生命が脅かされる時代に抗して~すこやかないのちを未来につなぐために~」参加者一同