緊急事態宣言および感染症にかかわる施策には多くの問題があります
しわ寄せを受ける地域や人々を守る政策を一刻も早くとるよう求めます
政府は改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、4月7日、緊急事態宣言を出しました。この宣言は要件があいまいなまま出されており、国会のコントロールもきかないままずるずると拡大解釈されるおそれがあります。それにもかかわらず、政府は7都府県に対し、人権・私権の規制を含む「対策」を開始しました。これは憲法改悪に基づく緊急事態条項導入の予行演習としての性格が強く出ており、とても容認できるものではありません。すでに総理会見を1社1人に絞ったり、官邸が官房長官会見を1日2回から1回に減らそうと記者会に要請を出すなど、市民の知る権利を制限する動きも始まっています。
この間の感染症拡大を招いた要因のひとつに、政府による公衆衛生軽視の政策があります。過去20年で全国の保健所の数はほぼ半減しています。地域の保健所や保健師を削減してきたつけは大きく、例えば、横浜市は市町村としては最も多くの人口(約375万人)を抱えながら保健所が1つしかない状況で、もはや対応困難な事態に陥っています。これは横浜市に限ったことではありません。保健所は、憲法25条によって国が義務付けた「公衆衛生の向上及び増進」を担う機関として設置されたのであり、感染症対策の前線です。その最前線が崩壊しつつある責任は、政府の政策にあるといえます。
また、感染症対策では弱い立場の人たちへのしわ寄せが拡大しています。真っ先に解雇されるのは非正規雇用者であり、倒産するのは中小や個人の事業です。また、各家庭、とくに女性へのしわ寄せも大きく、外出自粛の長期化に伴う家庭内暴力の頻発も深刻です。政府は、一律の対策ではなく、このようなしわ寄を受けている弱い立場の人に配慮した対策を早急に打ち出すべきです。
地方へのしわ寄せも大きくなっています。地域社会・経済の崩壊を招いたり、崩壊寸前のところも増えてきています。とくに農村の現状は深刻で、このままでは日本の食料生産にも影響が出かねません。大企業を中心にした景気対策ではなく、地方や農村に配慮した政策に切り替えるべきです。
この間の新型コロナウイルス感染状況について、日本は欧米に比して感染者と死者は少ないということになっていますが、感染の把握が正確になされているかについて私たちは疑問に思っています。また、感染防止効果の不確かな布マスクが各戸に2枚配布されることに象徴される場当たり的な対策に対して、政治的な配慮から医学的な見解や助言が蔑ろにされているのではないかと危惧しています。
日本消費者連盟は日本政府に対し、丁寧な説明や具体的な対策も示さないまま出された緊急事態宣言や感染症にかかわる施策に抗議するとともに、しわ寄せを受ける地域や人々を守る政策を一刻も早く打ち出すよう求めます。
2020年4月10日
特定非営利活動法人 日本消費者連盟