「経済秘密保護法」の成立に抗議する声明
日本消費者連盟は、「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法案」が5月10日に参議院本会議で可決・成立したことに抗議します。
この法案は、経済安全保障上の重要情報を民間企業等に提供し、取扱者の身辺調査を実施する制度の導入をはかるものです。あたかも経済活動に係わる仕組みのような体裁を取っていますが、その実態は2013年に作られた「特定秘密保護法」の拡大版に他ならず、「経済秘密保護法」と呼ぶべきものです。
特定秘密保護法の適用範囲は外交・防衛・防諜・テロの4分野に限定され、対象者は主に防衛省などの公務員でしたが、今回の新法は、対象者を民間企業や大学等にも大幅に拡張するものです。いま「戦争できる国」に向けた企業活動や軍産学官一体となった共同研究が急拡大しています。そのため、これらの指定された情報に接する従業員や研究者の適格性を確認する「セキュリティ・クリアランス制度」の導入がはかられています。その際、個々人の飲酒・精神疾患・借金・家族構成などの身辺調査が行われ、プライバシー権が侵害されることになります。さらに、調査は本人だけでなく、家族も対象となります。しかも、これらの身辺調査は、本人の同意のもとになされる建前となっていますが、現実には調査を拒否するとその職を失いかねないため、事実上の強制とも言えます。
また、この法律では秘密とされる「重要経済安保情報」がきちんと定義されておらず、不明確であることも問題です。何が秘密なのかわからなければ、知らないうちに秘密に触れてしまう可能性があるため、私たち消費者・市民は情報を取得しづらくなります。これは消費者の知る権利を侵害するものです。
日本消費者連盟は、戦争できる国づくりを加速させ、プライバシー権や消費者の知る権利を侵害する経済秘密保護法に強く抗議するとともに、同法廃止に向けた取り組みを多くの仲間と共闘して進めることを表明します。
2024年5月29日
特定非営利活動法人 日本消費者連盟