日本消費者連盟
すこやかないのちを未来へ
企業や国家の利益よりも人のいのちや健康を優先する世の中に変えたいと活動しています。

【声明】2020年「土地のない人々の日」に向けて(2020年4月3日)

 

このたび日本消費者連盟は、3月29日の「土地のない人々の日」に併せて発表された以下の声明に賛同しました。声明は日消連も参加するネットワーク「Stop Golden Rice! Network(ゴールデンライス※をとめようネットワーク)」からアジア各国のNGOに呼びかけられました。

※遺伝子組み換え米

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Day of the Landless 2020
Assert and defend the rights of rural and all toiling peoples amid the COVID-19 pandemic!(日消連 仮訳)

2020年「土地のない人々の日」

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)が世界的大流行のいま、
農村と生活が困難なすべての人々の権利を主張し、守ろう!

2020年3月29日

 

COVID-19の世界的大流行の影響をもっとも受けやすいのは、土地を持たない農村の人々です。私たちは今日、「土地のない人々の日」を最大の関心をもって迎えました。土地の所有・管理の権利が不安定な小規模農家、農園で働く日雇い労働者、重労働や臨時雇用の仕事に従事することを余儀なくされ、あるいは都市部でいわゆる非正規労働者として働く土地のない小作人の家族もまた、この土地を持たない農村の人々と同じです。そして、先住民のコミュニティやその他の生活が困難なすべての人々も含め、こうした人々こそが、麻痺した経済活動のなかでさらなる飢餓と貧困に追いやられ、猛威を振るう公衆衛生危機の最前線に立たされているのです。

世界各国の政府はこの事態に対処すべく奔走していますが、多くの場合、抑圧的で軍事的な方法を用いています。したがって、私たちは、農村およびすべての困難な生活を送る人々の権利が常に保護され、尊重されることを強く主張し、要求します。

多くの国が、COVID-19の蔓延を封じ込めるためという理由で、しかし多くの場合は曖昧な運用指針で、大規模な都市封鎖と隔離政策を実施しています。農業と食料供給チェーンは大きく混乱し、小規模生産者と貧しい消費者がもっとも大きな打撃を受けています。農村の人々が、国や地方自治体の封鎖命令のために恣意的に農業や漁業を禁止され、生計手段を奪われ、自らの消費のための食料も奪われているという報告がいくつもあります。農業生産は許可されているにもかかわらず、都市封鎖を実施する国家権力が身分証明書の提出を義務付けるなど、農村の貧困層に不当に負担を強いています。

さらに悪いことに、土地や農業資源へのアクセスや支配をめぐって、地元の地主、大企業、政府機関などの強力な利害関係者との紛争に巻き込まれている地域社会では、こうした封鎖が農村の人々を完全に追い出すための完璧な隠れ蓑になっています。COVID-19の危機に対処するための軍事的措置は、土地と資源の収奪に抵抗する農村コミュニティに対するこれまで以上の弾圧を許し、傍若無人な振る舞いを無罪放免にする条件を作り出しています。

一方、極端な隔離措置は、場合によって小規模農家が農産物を持ち寄って販売する地元の市場さえも閉鎖に追い込んでいます。その結果、耕作や収穫が許可されていても、買い手のつかない穀物、野菜、果物、魚などがトラック一杯に積まれたまま、不幸な農家や漁師たちが放置されています。そして、農産物を最低価格で買いたたく日和見主義的で搾取的な独占業者にさらされています。ところが、このようなただ同然の出荷価格が、一般消費者の価格に反映されるとは限りません。新自由主義的な民営化や食料安全保障に関わる国家機関や政策の規制緩和が行われている時代にはこのような傾向にあるものの、今回のCOVID-19の世界的流行のように食料生産と供給の不確実性が極めて高く、危機が深刻なときにはさらに助長されることになります。

さらに、数十年にわたる民営化、商業化、予算削減などの新自由主義派の攻撃によって公衆衛生システムは弱体化しており、世界的な感染症の大流行に襲われたときには一気に崩壊する恐れがあります。またこうした状況は貧困国や農村では数百倍にもなり、最も貧しい人々、つまり農村の土地のない人々が病気の発生に直面して極めて深刻な危険にさらされています。

COVID-19の世界的流行が発生する前から、農村部のコミュニティでは、基礎的医療や緊急医療に対応するための基盤など、基本的な社会サービスや保護へのアクセスが著しく不足していました。また、信頼できる公共交通機関がなく、もっとも近い場所で医療サービスを受けるために、長距離を移動しなければならないことも少なくありません。農村で利用できる保健所や病院はもともとわずかしかなく、国家からの十分な支援を受けられないため、人々のニーズを満たすための施設や資源(労働力を含む)が不足しています。

農作業は、ただでさえ世界でもっとも危険な職業の一つと考えられています。移民労働者を含む土地のない農業労働者は、日常的に農薬中毒や不衛生な労働条件にさらされ、多くの労働者はぎゅうぎゅう詰めのトラックで農園に運ばれ、窮屈な空間で生活させられています。これらすべてが、彼らを感染症にかかりやすくしています。

根本的に誤った経済および農業プログラム、新自由主義による農業への攻撃、大規模な土地および資源の収奪、農村の窮乏と公衆衛生の欠如が、感染症が猛威を振るうなかで土地のないおよび農村の貧しい人々を危機的状況に追いやっています。

私たちは、輸出指向の大規模アグリビジネスや、莫大な利益のために私たちの農業や自然資源をむやみに収奪する企業活動など、大企業に対する説明責任を追及します。そうした企業活動は環境を破壊するだけでなく、物理的、経済的、文化的に、地域社会そのものを追い出しています。そして、かつて多様性のあった農場や森林生態系によって遠ざけられていた病原体がさまざまな感染症をもたらし、社会や人々の生産力を無慈悲なまでに破壊しています。

私たちは、食料を生産する権利を主張し、その収穫物を工夫をこらして人々に届け、過度な封鎖措置に対抗するなど、市民社会セクターの支援を得ながら行われているさまざまな農民グループの集団的、組織的な行動に敬意を表します。彼らは、最前線に立って政府に対して説明責任を要求し、貧しい人々や疎外された人々を十分に考慮した信頼できる公衆衛生システム、都市封鎖という状況下での即時の経済的救済と人権の尊重を求めています。

COVID-19という危機に立ち向かうべく必要な政策手段を人々に提供するために、食料、農業、公衆衛生システムにおける新自由主義的な政策に対抗し、真の農業改革と食料主権のために闘うことを人々は決意しています。

私たちは、この感染症の大流行のなかで土地を持たない人々とすべての労働者の喫緊の要求を支持し、再確認します。

1、国民の食料安全保障を犠牲にした封鎖および隔離に反対し、小規模農家、漁業者、その他の直接の食料生産者が生産し、生計を立てる権利が正当に尊重されること。

2、土地を持たない農村の人々を含む疎外された人々にも容易にアクセスできる即時かつ実質的な経済的救済(穀物、現金、その他の必要かつ適切な形態の援助を含む)と社会的保護を提供するとともに、小規模な食料生産者のための生産・販売支援などの政府のその他の形態の援助を提供すること。

3、COVID-19 封鎖を口実に、これ以上、農村の人々の土地と生計手段からの排除が行われないようにすること。

4、保健セクターに十分な公的資源を割り当て、COVID-19感染症の無料検査や治療を含む信頼できる公的医療サービスを、農村のコミュニティを含むすべての人が遅延や困難なく利用できるようにすること。

5、人々の緊急のニーズへの対処および例外なき人権尊重について、公務員にはその地位を問わず説明責任を求める。

生態学的にも社会的にも破滅的な生産様式によって引き起こされた感染症の大流行は暗澹たる苦難をもたらしている。しかしそのようななかでも、土地のない農村の人々と彼らを支える人々の運動は、すべての抑圧され、搾取されている人々とともにあり、そして光と希望の担い手であり続けなければならない。

 

この声明は以下の団体によって支持されている。

アジア農民連合(APC)
農薬行動ネットワーク・アジア太平洋 (PANAP)
食糧主権に関する人民連合(PCFS)