日本消費者連盟は、市民科学研究室環境電磁界研究会と電磁波問題市民研究会とともに、東京都に対して「TOKYO Data Highway 基本戦略」についての公開質問状を提出しました。主に、今春始まった5Gの商用化について東京都の姿勢を質問しています。
質問状のPDFは以下です。
https://nishoren.net/wp/wp-content/uploads/2020/04/2e4457be99c137ad466c5766ef6d0914.pdf
東京都知事 小池百合子 様
東京都戦略政策情報推進本部 御中
スマート東京・TOKYO Data Highway戦略推進協議会 御中
「TOKYO Data Highway 基本戦略」に対する公開質問状
拝啓 平素より東京都行政の運営にご尽力いただきありがとうございます。
私たち市民科学研究室は、「生活者にとってよりよい科学技術とは」を考え、そのアイデアの実現を目指すNPO法人です。そこに所属します「環境電磁界研究会」(網代太郎、鮎川哲也、上田昌文)で、このたび東京都戦略政策情報推進本部が打ち出しました「TOKYO Data Highway 基本戦略」を拝読しましたところ、それについて詳しくお尋ねしたい点が出てまいりました。そこで、内容の公共性に鑑みまして、特定非営利活動法人・日本消費者連盟ならびに電磁波問題市民研究会の2団体と連名で、公開質問状という形で以下の10項目の質問をさせていただくことといたしました。
次に掲げました宛先に、封書もしくは電子メールにてご回答いただきますよう、心よりお願い申し上げます。
2020年3月23日
特定非営利活動法人 市民科学研究室 環境電磁界研究会
特定非営利活動法人 日本消費者連盟
電磁波問題市民研究会
回答の送付先:
上田昌文(特定非営利活動法人市民科学研究室・環境電磁界研究会 世話人)
電子メール:ueda.akifumi@shiminkagaku.org
住所:〒113-0034 東京都文京区湯島 2-14-9 角田ビル2F NPO法人 市民科学研究室
TEL:03-5834-8328 FAX:03-5834-8329
(質問1)
「TOKYO Data Highway 基本戦略」スライド文書の1頁において「インターネットを介し、どこにいようとも、誰一人取り残されることなく、医療や教育などの様々なサービスを受けられる」と謳われています。一方5頁には「個人のインターネット利用率は79.8%(2018年時点。2011年は79.1%)」とあり、2011年から7年経った時点でも個人のインターネット利用率は0.7%しか上がっていません。5Gが配備されるようになったとしてもそれなりに多くの人が、インターネットに接続しないままであることが予想されます。この場合に生じるデジタルデバイドの問題(不利益・不公平が生まれること)を、都として解消する考えはありますでしょうか。またそうであるとすると、どのように解消するのかをお示しください。
(質問2)
7頁に「スマートシティの推進などによる環境に配慮した都市の構築」とありますが、いわゆるスマートメーターなど新しい情報技術を導入して、これまで実際にいずれかの自治体や地域において環境負荷が減らされたことが実証された例はあるのでしょうか。あるのならそれをお示しください(期間限定の実証研究のような例は除いてお答えください)。もしないのなら、このData Highway化によって東京都において、具体的にどのような環境負荷をどの程度まで、いかなる技術によって減らすことができるのか、その見通しをお示しください。
(質問3)
14頁に「民間&東京都で最強タッグ」とあり、日本の主要な移動体通信の事業者であるNTTドコモ、ソフトバンク、KDDI(あるいはそれに加えて楽天)のいずれかと(あるいはいずれとも)都が提携することを伺わせます。都として財政支出を行うのでしょうか。行う場合は、どのような用途にどの程度支出するのかお示しください。
(質問4)
元ヤフー社長で都参与の宮坂学氏が副知事に就任し、この「TOKYO Data Highway 構想」の推進役の中心を担っていると思われますが、上記(3)の通信事業者のうちの特定企業と深いつながりがあった人物が都の行政においてそうした役割を担うことには、特定通信事業者への利益供与にならないのでしょうか。ならないとすれば、その公平性や透明性をどのように担保しているのかをお示し下さい。
(質問5)
15頁から19頁において、「都のアセットを開放し、通信キャリアによる基地局設置を強力に後押し」するための事例が示されています。東京都立大学のキャンパスを含めて、これらはすべて公共財です。東京都が、利潤を上げることを目的になされている民間の通信事業に、こうした公共財を提供するのは、これまでのいわゆる公共事業とはかなり性格を異にするものではないかと考えます。税金で維持されている公共財をこのように提供することは特定事業者への利益供与にならないのでしょうか。もしならないとお考えなら、その根拠を、具体的な事例も交えて、お教え下さい。
(質問6)
「都の保有するアセットについてフィージビリティを検証の上、開放」(17頁)とありますが、「検証」は誰がどういうチェックポイントについていかなる方法で行うのか、またそのスケジュールをお示しください。
(質問7)
基地局設置申請等に係る「利用手続きの簡素化」(18頁)とありますが、現状の手続等はどのようなもので、それをどのように簡素化するのか、お示しください。また、具体的に決まっていない場合は、今後誰がどのような方法でどのようなスケジュールで検討するのか、また、現時点での考え方についてお示しください。
(質問8)
16頁に例示されいているような個々の場所・エリアにおいて種々の基地局が設置された場合、当然、その近辺に住まう、あるいは、そのエリアを行き交う人々が電磁波を曝露することになります。都としてはそうした人々への電磁波の曝露がどの程度になると推定しているのでしょうか。あるいは、その推定は行っていないとしても、5G電波を使用するどのような状況においても、それが総務省の電波防護指針を超えない環境になっていることの保証は、どのようにして確保するのでしょうか。また、基地局が設置された場合、その近辺に住まう人が希望すれば、都としてその希望に応じて電磁波を測定するつもりはありますでしょうか。併せてお答えください。
(質問9)
携帯電話・スマートフォンの電波が健康影響を引き起こすのかどうか、世界中の研究者の間で議論の的となっています。この問題について都として検討する予定はありますでしょうか。
(質問10)
携帯電話の電波等で体調を崩す電磁波過敏症を訴える方々がいます。都民の憩いの場である公園や、日常的に利用するバス停などに携帯電話基地局を設置することは、電磁波過敏症の方々をはじめ、電磁波曝露を避けたい方々にも電磁波曝露を強いることになると考えられます。また、19頁において「5Gの重点整備エリア」に挙げられている東京都立大学に通うことになる学生のなかにも、そうした人が含まれる可能性があります。都としてこうした人々が5G導入によって被るだろう健康上の問題を検討する予定はありますでしょうか。