日本消費者連盟
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【意見】新たな遺伝子組換え表示制度に係る食品表示基準一部改正(案)についての意見(2018年10月25日)

消費者庁が「新たな遺伝子組換え表示制度に係る食品表示基準の一部改正(案)」への意見募集を行っています(11月8日〆切)。日消連は10月25日に以下の意見を提出しました。

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「新たな遺伝子組換え表示制度に係る食品表示基準一部改正(案)」についての意見

 

今回の一部改正案への意見を述べる前に、同案の根拠である「遺伝子組換え表示制度に関する検討会報告書」および、同検討会の進め方に抗議します。

食品表示は消費者にとって重要な情報です。私たち消費者は、表示された情報を基に食品を選ぶしかありません。もし表示が不十分であれば、望まないものを購入してしまう可能性もあります。現在の遺伝子組み換え表示制度は、遺伝子組み換え原料を使っていても「遺伝子組み換え」と表示する必要がない抜け穴がいくつもあり、問題です。消費者庁の検討会は、消費者が「自主的かつ合理的な選択の機会の確保を実現するために」設置されたはずですが、報告書は消費者の自主的な選択の機会を奪う内容でした。

何より、検討会は義務表示の対象をまったく拡大しませんでした。遺伝子組み換え原料を使っていても「遺伝子組み換え」と表示する必要のない現行制度がそのまま維持されました。また、検討会の終盤になって突然、「遺伝子組み換えでない」表示の条件を現行の5%以下から不検出にする案が出され、十分な検証や議論もないまま、報告書に盛り込まれたのは看過できない問題です。この「遺伝子組み換えでない」表示について、報告書は「『不検出』に厳格化」と述べています。しかし、油や糖類など、遺伝子組み換え作物を原料としている食品に「遺伝子組み換え」と表示されない現状を放置して、分別生産流通管理によりほとんど遺伝子組み換えでない作物を原料にしている食品に「遺伝子組み換えでない」表示ができなくすることに対し「厳格化」と主張するのは、誤った解釈を世の中に広めることになります。改めて抗議します。

以下、日本消費者連盟が求める遺伝子組み換え表示制度です。

 

1、すべての食品を表示義務の対象にすべきです

現在、表示義務のある食品は、豆腐や納豆など組み換えDNA等が残存した品目に限定されていますが、これでは消費者は遺伝子組み換え食品を避けることができません。組み換えDNA等が残存しないとして、現在は義務表示対象外となっている油やしょう油、糖類などもEU(欧州連合)や台湾では義務表示の対象としています。すべての食品を義務表示の対象にすべきです。

 

2、表示義務対象原材料の範囲を撤廃すべきです

現在の「おもな原材料の上位3位までのもので、かつ重量に占める割合が5%以上のものであるもの」と限定している根拠が示されていません。EUではそもそもこのような範囲は設定されていませんし、かつて「上位5位までのもの」としていた韓国も最近、「すべての原材料」に改正しています。他国で可能なことが、日本でできないはずはありません。表示義務対象原材料の範囲はなくすべきです。

 

3、「遺伝子組み換え不分別」表示を廃止し、「遺伝子組み換え」にすべきです

「遺伝子組み換え不分別」という表示は、その意味するところが分かりにくい。消費者庁が第1回検討会で説明した「遺伝子組換え食品に関する消費者意識調査の概要」でも不分別表示に関する認知度は3割弱にとどまっており、5割を超す消費者が「知らない」と答えています。さらに、消費者庁も情報交換会等で言及しているように、日本は米国やブラジルといった、遺伝子組み換え大豆や遺伝子組み換えトウモロコシの生産が9割前後に達している国々から輸入しています。遺伝子組み換え作物と非遺伝子組み換え作物を分別していないということは、遺伝子組み換え作物を輸入していると言えます。「不分別」といったあいまいで分かりにくい表示ではなく、実態にあわせて「遺伝子組み換え」と表示すべきです。

 

4、意図せざる混入率を引き下げるべきです

意図せざる混入率は現行の5%が維持されましたが、諸外国に比べての実態からみても高すぎます。EUは0.9%、韓国と台湾は3%です。台湾はかつて5%でしたが、最近になって3%に引き下げています。また、消費者庁が第1回検討会で示した「分別生産流通管理等の実態調査の概要」でも、分別生産流通管理された非遺伝子組み換え大豆における遺伝子組み換え混入率は単純平均で0.1%、トウモロコシでは同1.0%です。意図せざる混入率の引き下げは可能です。

 

5、「遺伝子組み換えでない」の表示条件を不検出とせず、意図せざる混入率に揃えるべきです

現在の「遺伝子組み換えでない」表示は、可能な限り遺伝子組み換え食品を避けたい消費者が唯一の手掛かりとしている重要な情報です。今回の改正案で示されている「不検出」を表示条件にすれば、「遺伝子組み換えでない」表示が消えてしまう可能性があります。消費者の選ぶ権利を蔑ろにする今回の改正には強く反対します。「遺伝子組み換えでない」表示条件は意図せざる混入率にあわせるべきです。