日本消費者連盟
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本当に打ち続けて大丈夫?日本脳炎予防接種

 安全宣言ではない!?日本脳炎予防接種の積極勧奨の中止を!

2012年10月19日の「乾燥組織培養日本脳炎ワクチン予防接種の死亡例について緊急に原因究明し、同ワクチンの副作用の詳細な公表と、定期接種の中止を求める申し入れ」に続き、10月31日の審議会の結果をうけ、再度厚生労働大臣と予防接種部会日本脳炎に関する小委員会委員長の加藤達夫氏に対して、申し入れを行いました。

                               2012年11月1 日

厚生労働大臣

三井 辨雄 様

 

厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会

日本脳炎に関する小委員会委員長

加藤 達夫 様

 

                              ワクチントーク全国

                         事務局   青野 典子

                           栗原  敦

                               母里 啓子

                        特定非営利活動法人日本消費者連盟

                              共同代表 天笠 啓祐

                古賀 真子

真下 俊樹

山浦 康明

2012年10月31日第7回厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会日本脳炎に関する小委員会での審議内容についての申し入れ

冠省

 2012年10月19日、特定非営利活動法人日本消費者連盟とワクチントーク全国は、岐阜県での日本脳炎ワクチン接種による死亡事故をうけ、「乾燥組織培養日本脳炎ワクチン予防接種の死亡例について緊急に原因究明し、同ワクチンの副作用の詳細な公表と、定期接種の中止を求める申し入れ」を厚生労働大臣あてに提出しました。また、10月26日には厚生労働省担当官と面談し、10月31日には標記小委員会の傍聴を行いました。

小委員会では、乾燥組織培養日本脳炎ワクチン(以下、現行ワクチン)による今回の2例の死亡例について、基礎疾患や薬剤副作用の相互作用によるQT延長(注)等が発生して、予防接種による痛みが刺激となった心停止等が予想される等として、ワクチンとの因果関係があいまいにされ、直ちに接種を中止する必要性はないとの結論となりましたが、小委員会の結論には疑問があります。小委員会が専門家委員会としての諮問意見を具申されるに際して、厚生労働大臣と貴委員会に以下の点について申し入れます。

 

 

1 予防接種法上の定期接種としての対象年齢への勧奨および平成17年5月から平成22年3月までの積極的勧奨の差し控え者に対する積極的勧奨の中止を要請します。

2 今回の2例の死亡例については、禁忌者への接種であると思われます。禁忌者への接種による死亡事故等の再発防止のためにどうすべきか、国民及び医療関係者への周知を求めます。

3 現行ワクチンに切り替えた後の報告事例について予後を含め徹底的な調査を求めます。(2011年度(平成23年度)の脳炎脳症の報告が9件、うちADEMが7件報告されています。2012年(平成24年度)は9月末までで脳炎4件、うちADEMが2件報告されています。2011年度の数字は2003年に中止された旧ワクチンによる報告より多い数字であり、2012年度において死亡例が発生したことは深刻に受け止めるべきです。)

4 小委員会では、罹患した場合の重篤性から、ワクチン接種の必要性が強調され積極的接種勧奨の継続となりましたが、ワクチン接種の必要性の判断をするために、日本脳炎の病気の現状、現行ワクチン接種開始後の予防接種の副作用等について国民に詳細かつわかりやすく公表することを求めます。

(申し入れの理由)

1 積極的勧奨の中止および禁忌者への対応について

日本脳炎のワクチン(マウス脳採取精製、ホルマリン不活化)は、1955年に国内生産されて以降、副作用とみられる重い神経障害が報告され、2005年に事実上中止(積極的勧奨の中止)されました。Vero細胞(アフリカミドリザル腎細胞)由来のワクチンが2009年に乾燥組織培養日本脳炎ワクチンとして使用開始され、2010年から積極的勧奨が再開されています。

2011年度の副反応報告事例をみると、2005年中止時より多いADEMの発生がありますが、今回中止する必要がない理由として、委員のなかからは「2005年中止の際は副作用として認定されていたけれど、今回はまだ認められていないから(中止は時期尚早)」という趣旨の発言がありました。

しかしながら、①現行ワクチンは積極的接種勧奨により、被接種者数は2005年の中止時より100万回(分)以上増加しており、接種が増加すればそれだけ副作用発現の危険性は増加すること、②2012年の7月10月と連続して死亡事例が発生したことは、2005年中止時以上の接種勧奨中止事由と考えられること、③これら死亡事例は禁忌者への接種について添付文書に注意書きがあるにもかかわらず、厚労省の積極的勧奨の政策と相まって、現場の医師に禁忌者への接種についての配慮が著しく欠如していたと判断せざるを得ないこと、③接種を実質的に中止していた2005年から現行ワクチン接種を開始するまでの対象年齢層の抗体価が低下していると報告されるものの、自然感染による患者の発生はないこと、④2012年における患者は福岡県と熊本県の2件で70歳代の高齢者であり、90年からの患者は連続1ケタであり、西日本を中心とした高齢者のみであること等から、対象年齢への接種を見合わせる合理的理由があることから、積極的勧奨は中止すべきであると考えます。

2 日本脳炎という病気とワクチン接種の必要性に関する情報提供について

日本脳炎は、第2次世界大戦後の混乱期には数千人の規模での発症を繰り返していましたが、1960年代後半から激減し、最近20年以上は1ケタの発症で、そのほとんどが限定された地域での65歳以上の高齢者で、40歳以上が85%をしめています。

 日本脳炎ワクチンは個人の感染予防を目的とするワクチンであり、接種率を上げることで流行を防ぐことはできません。病気の重篤さからワクチンによる接種を維持することで、若年層の感染を防ぐことができるとしてワクチンの必要性が強調されてきましたが、厚労省のデータによれば、接種率自体も、第一期初回接種2回が80%、初回追加接種は50~75%、二期接種は50~60%とされており、接種率は感染を防御する程度に至っていないと考えられます。

 一方、ワクチンにはこれまで多くの副作用、ことに脳炎や急性散在性脳脊髄炎(ADEM)などを含む重篤な中枢神経系障害が、毎年数名発生してきました。03年に6人のADEMが発生したことにより、05年にそれまでのマウス脳による製法のワクチンの接種を実質的に中止し、乾燥組織培養法によるワクチン(現行ワクチン)を開発するとして、09年1月に阪大微研製の「ジェービック」が承認され6月より接種開始されました。

承認時に提出された「審査報告書」やその後の追加報告等から、現行ワクチンは量が少なくてもアレルギー反応による髄膜刺激症状や大脳機能の変調をきたす危険性が危惧されていました。

実際、予防接種後副反応報告書によれば、接種者数が増えるに従い副反応報告も増えています。予防接種後副反応報告書では2010年度(22年度)148件、脳炎・脳症3件、けいれん12件、運動障害3件、その他の神経障害4件と報告されています。厚労省による記載でも「麻痺様行動や行動異常を伴ったことがやや目立った。これらをどのように考えていくか今後の課題になろう。」と結ばれています。また、薬事法上の副作用報告では、承認時より2010年1月5日までに、21件の報告があり、ADEM1件、小脳性運動失調1件、けいれん4件、顔面神経麻痺1件など神経系障害7件が報告され、今回提出された22年度23年度報告でも同様の傾向であり、24年度はついに死亡例が発生したという状況です。

小委員会報告では、09年6月~今年10月にワクチン接種が計約1400万回行われ、重い副作用が疑われるケースが237件あったとされていますが、11年度の報告ではADEMの発生が前回中止時より多いことは前述したとおりです。小委員会では、「小委員会の結論では、どの程度の副反応があったら接種の勧奨の是非を考えるかの基準を決めた方がよい」との意見がありました。

現行ワクチンは130万回に1回の確率(11年は80万回に1回)のADEMの発生となっています。接種の勧奨の是非を副作用発生率やADEMだけに注目して決めることにも疑義がありますが、委員のなかには報告自体の正確性を問題にする人もおり、接種の勧奨の是非を小委員会で結論づけて専門家の意見として具申することは1拙速であると考えます。

今回の小委員会では、2例の死亡例について、委員長と委員3名(委員2名は欠席)、参考人3名(4名中1名は発言なし)という少数の専門家による議論であり、製剤メーカーの聴取すら行われていません。日本脳炎という病気について、定期接種として積極的勧奨が必要かどうかについては、より多くの国民の意見を聴く場を設けることが必要であることも付言します。

 

(注)QT延長:心臓の収縮後の再分極の遅延がおき、心室頻拍(Torsades de Pointes:TDP、心室性不整脈の一種)のリスクを増大させるまれな先天的な心臓疾患。これらの症状は、動悸、失神や心室細動による突然死につながる可能性があるとされています

 

 (連絡先)  〒169-0051 東京都新宿区西早稲田1-9-19-207

日本消費者連盟(古賀)

           TEL 03-5155-4765   FAX 03-5155-4767

〒143-0023 東京都大田区山王4-1-16青い保育園内

                              ワクチントーク全国(青野)

TEL/FAX 03-3777-1946


(コメント日本脳炎を定期接種として全国一律に接種勧奨を続けることは問題です

2012年10月31日第7回厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会日本脳炎に関する小委員会配布資料が厚生労働省のHPにアップされています。

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002ndoo.html

このなかで、副作用に関する報告があります。

1 ADEMの発生頻度だけで、ワクチンの定期接種継続の可否を議論してよいのか?

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002ndoo-att/2r9852000002ndr5.pdf

資料2

日本脳炎の予防接種に関する現状について(PDF)

この中のADEM副反応に関する7ページから12ページに注目してみましょう。7ページから11ページにかけて、副作用報告が載せられています。そして、

9.新ワクチンでのADEM報告頻度 (副反応報告と薬事法に基づく報告の合計) (平成21年6月~平成24年9月)(12ページ)では、

旧ワクチンのADEM報告頻度が70万から200万回接種に1例程度とされるのに対して、新ワクチン(現行ワクチン)は今のところ約2年半で平均131万回接種に1例のADEMが発生したとされています。しかし、11年(平成21年)度は80万回接種に1例発生しています。

2010年にヒブワクチンや肺炎球菌の同時接種による死亡事故が連続して発生した際、その後の審議会で、接種中止については「10万接種あたり0.5になったら検討する」という基準(100万人換算で5人発生?)を2011年に決めています。ヒブワクチンや肺炎球菌の同時接種については、12年10月までに18例の死亡報告がありますが、10万接種あたり0.1~0.3となっているので、0.5という基準には達していないのでこのまま接種ということになっているようです。ヒブや肺炎球菌ワクチンは定期接種ではありませんから、積極的に勧奨や、努力義務のある接種ではありませんが、このまま、

病気の発生が極めてまれ、接種対象と患者発生がこれほどかい離している日本脳炎の接種を定期接種(公的接種)として進めていくべきなのでしょうか?

日本脳炎の副作用はADEMだけではありません

ADEMだけが強調されますが、日本脳炎の副作用はADEMだけではありません。5.薬事法に基づく、新ワクチンの副作用報告状況 によれば、ギランバレーやてんかんがそれぞれ2例発生しています。

病気の発生対象地域・り患対象者を考えた場合にすべての子どもに定期接種(努力義務・積極勧奨)するべきワクチンなのか、考える必要があります。2005年日本脳炎ワクチン実質中止後の未接種の影響が考えられる年齢層での罹患(自然にかかった人)は2005から2008年度までで1名、2011年度までで3名(詳細なデータは調査中、2005から2011年までで0-10歳では6名)ということです。

それに対しワクチンによる脳炎脳症は2005から2011年で9名、ADEMは11名、運動障害5名、その他の神経障害9名ということです。

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002ndoo-att/2r9852000002ndr5.pdf

この副作用報告は全て接種対照の3-4歳のはずですが、。一方日本脳炎への罹患対象は実はもっとはるかに多い人数ですので、単純に比較しても功少なく害多いということになります。(5薬事法に基づく、新ワクチンの副作用報告状況6ページ参照)副作用報告では脳炎脳症とADEMは別々に記載されています。ADEMについて、WHOはその副作用頻度を5万から100万人にひとりと幅を持たせていますが、ワクチン対照を広げることによって確実に起こります。発病頻度を遙かに越える副作用発生率です

2 現在の日本で、定期接種が必要か?

ここで、病気の発生に着目してみましょう。小委員会の報告資料

資料3

わが国の日本脳炎に関する疫学情報(PDF)

では、世界で毎年約5万人が発症し、およそ1万人が死亡する。日本では主たる媒介蚊は水田などで発生するコガタアカイエカで、人から人への感染はないとされています。(1ページ)。患者数は1900年に入り激減し、毎年のり患は1ケタで(9ページ・13ページ)、14歳以下の患者は0から1(09年に2人)です。(8ページから14ページ)

人から人に伝染する疾患ではないので、ウィルスの弱毒化があるにしろないにしろ、現在の日本の伝播環境の中では発症率はこの程度です。2005年にADEMへの影響からワクチンを代えたはずなのに、減っていないというのが今回の副作用発生で明らかになりました。

予防接種を中止した場合のリスクが強調されますが(22ページ)、全国一律に定期接種として積極的勧奨をすべきか、議論すべきです。積極勧奨を継続することで今後発生した被害にどう対応していくのか、今後とも注視していきます。(古賀真子)