関電・九電の値上げが認可、東北・四国値上げ申請の公聴会等に参加を!
東北電力は2月14日、四国電力は2月20日に電気料金の値上げ申請を行いました。(*)経済産業省資源エネルギー庁の電気料金審査専門委員会が審査を開始しています。
http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/sougou/denkiryokin/022_haifu.html
これに合わせて、消費者庁の地元消費者との意見交換会が4月17日に仙台で、4月22日に高松市で行われます。また、5月9日、10日にはエネ庁の公聴会が仙台市で、5月14日15日には高松で行われる予定です。(*2)
両電力が申請した値上げ幅は平均11・41%、四国電は平均10・94%で、茂木敏充経産相の認可を経て、7月1日の値上げ実施を目指しています。
東北電力の海輪誠社長は「値上げを回避したいと自助努力を続けてきた」と釈明し、四国電力の千葉昭社長は「このままだと資金調達に支障が生じる」と述べ、いずれも、原発再稼働の見通しが立たず財務状況が厳しい」と説明していますが、地元の消費者団体や自治体からは「生活再建の妨げ」「家計に影響を与える」などと、東日本大震災の被災者や消費者の負担軽減を求める意見がでています。宮城県の村井嘉浩知事は映、値上げは被災者の負担増になると指摘、東北電力にコストの「聖域なき削減」を求めました。仙台市の消費者団体は「地域経済がますます疲弊する」と訴え、高知県の尾崎正直知事も「値上げの影響は広範囲に及ぶ。経営合理化のさらなる徹底をお願いしたい」と述べています。(申請内容は以下のHP参照)
(*1)
東北電力
http://www.meti.go.jp/press/2012/02/20130214001/20130214001.html
四国電力
http://www.meti.go.jp/press/2012/02/20130220001/20130220001.html
(*2)
東北電力の公聴会
http://www.meti.go.jp/press/2012/02/20130214002/20130214002.html
四国電力の公聴会
http://www.meti.go.jp/press/2012/02/20130220002/20130220002.html
これまでの電気料金審査専門審査会の議論では、東北電力に関しては、石炭の調達量が四国電力の3倍近くかつ高品質の豪州産の割合が四国電力より低いにも関わらず、原価織込価格が全日本通関価格や四国電力よりも高いことについて指摘がありました。
四国電力に関しては、火力燃料費の増大が財務悪化をもたらす主な理由であるとする他の電力会社と異なり、自社の需要家でなく、他の一般電気事業者への融通販売の減少(他電力会社への売電売上の減少)が今回の原価算定に大きな影響を与えており、他電力とは値上げ要因の構図が異なることをどう評価すべきかや、過去の販売電力量の多さ及び予備率の高さを踏まえてされている、需要想定、供給電力量が適切かどうかをよくチェックすべきことについて指摘がなされ、これらの点については、今後検証を行っていくとのことです。
今後、公聴会や国民の声で、値上げについての合理性があるかどうか厳しくチェックして行く必要があります。
関電・九電の値上げ申請が認可
茂木敏充経済産業相は2013年4月2日、関西電力と九州電力の家庭向け電気料金値上げを認可しました。5月1日から、関電管内では平均9・75%、九電管内では平均6・23%引き上げられることになりました。
「平均的な家庭」(月間300キロワット時の電力使用)では、月間の電気料金は、関電が今の6844円から7301円(6・7%増)、九電が6664円から6888円(3・4%増)になる見通し。これに燃料価格の上昇分を反映させる「燃料費調整制度」の値上がり分も加わります。
家庭向け料金の値上げに合わせて、政府の認可がいらない自由化部門の企業向け料金も5月1日から、関電が平均17・26%、九電が平均11・94%引き上げられます。家庭向け、企業向けとも値上げ申請時より約2%幅低くなりましたが、円高のためとの理由で、4月からの相次ぐ値上げの中での家計への負担は避けられません。
公共料金決定に消費者の意見を反映させるために~ 電気料金値上げ問題から考える
今回の値上げは、2012年11月26日に関西電力、27日に九州電力が行った、家庭用電気料金の値上げの認可申請についての認可です。(参照 消費者リポート1526号)。この申請内容を検討してきた総合資源エネルギー調査会総合部会電気料金審査専門委員会(委員会)は13年3月6日に査定方針案(案)を出しました(*1)。委員会は東電の値上げの際の経験を活かし、透明性確保のため全面公開され、消費者代表が初めて委員として参加。地元からの消費者代表もオブザーバー委員として参画し活発な議論がされました。公聴会の開催、国民の声を募集し、両電力への立ち入り検査である特別監査も行われました。
査定方針案は、交際費等に加え、広告宣伝費、寄付、団体費を原価算入からはずし、人件費では従業員や役員給与を削減し、顧問の報酬や九電の役員増員分の原価算入を認めないなど、かなり踏み込んだものとなりました。最大経費であり値上げの根拠とされる燃料費も、最も低廉な価格を基準とし、算定期間の3年目については、安いシェールガスなどの調達効率化を見込んだ天然ガスリンクを原価折込価格とすることが適当だとされました。安念潤司委員長は、これ以上削減できるところはないところまで、ぎりぎりまで切り込んだと自信を表明しました。
消費者庁、消費者委員会の役割
規制部門である家庭用電気料金の値上げには、経産省と消費者庁の協議が必要とされています。12年11月、消費庁に建議する消費者委員会の中に公共料金専門調査会と家庭用電気料金の値上げ認可申請に関する調査会が新たに設けられました。調査会では、資源エネルギー庁、両電力会社、消費者団体等のヒヤリングを行い、13年2月1日には査定方針案をチェックするためのチェックポイントが作成されました。(*2)消費者委員会がチェックポイントに基づき査定案について検討するに先立ち、地元の消費者との意見交換会が開催されました。
3月7日の福岡の意見交換会では、人件費について、査定方針案で厳しい査定が示されたものの、九州の水準ではまだ高いとの指摘がありました。また、大阪でも役員報酬や人件費がまだ高いという意見に加え、社会保険料の雇用主負担も50%までとすべきとの意見がありました。案では妥当とされた事業報酬(*3)の見直し、稼働していない原発施設をレートベース(*4)から除くべきだと意見や受電していない日本原電からの購入電力の基本料金支払い466億円について原価に入れるべきではないとの意見がでました。
このほかにも、LNG価格の査定や予備率(*5)が過大に設定されていないかなどが議論されましたが、認められませんでした。消費者委員会は、査定結果の妥当性を検討し、消費者庁に意見をすることになっており、同庁と経産省の合意のうえで3月29日に関係閣僚会議を開き、経産相は4月2日に両電力の値上げを認可しました。
今回の査定では、エネ庁からは消費者委員会の事前に提出したチェックポイントに対する回答も出されました。(*7)
消費者の意見が反映されるよう意見表明し、一層の監視をしていくことが必要です。消費者委員会の公共料金調査会では電気料金に限らす、公共料金全般についての見直し作業を進めています。追ってご報告します。 (共同代表 古賀真子)
(*1)http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/sougou/denkiryokin/021_haifu.html
(*2)
http://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/kokyoryokin/doc/130124_shiryou7.pdf
(*3)
電力設備の建設・維持等に必要な資金調達を円滑に行うためにかかる支払利息や配当などを賄うための費用として、金融機関からの借入、社債発行、株式による資金調達等を円滑に行うために必要な費用としてあらかじめ総原価に含むことができるとされるもの。
(*4)
事業報酬の算定に入れる資産で、特定固定資産、運転資本、繰延償却資産、建設中の資産
核燃料資産がある。特定投資電力会社の事業報酬はレートベースに、一定の報酬率(電力会社の儲け率)を掛けて料金を決めることができることになっている。レートベース算定期間に稼働を見込まない電子力発電所をレートベースにいれることについては合理的説明が必要。
(*5)
最大電力需要に対して、供給が可能な電力量の割合を示す指標のこと。電力供給予備率ともいう。(ピーク時供給力-予想最大需要)÷予想最大需要×100という計算式で求められ、時期に応じた供給予備率が保てるように、供給予備力が用意される。予備率は今後の電力システムの中で、再生エネルギーなどの普及について考えた場合、高く見積もられ、その分原価が高くなっていると考えられる。
(*7)
関電・九電の値上げ認可申請に関する査定方針については、エネ庁のサイトにその全体が掲載されています。
http://www.meti.go.jp/press/2012/03/20130329002/20130329002.html