日本消費者連盟
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1月6日締め切り!原発推進のエネルギー基本計画にNOの意見を!

新しい「エネルギー基本計画」の策定を進めていた経済産業省の総合資源エネルギー調査会基本計画 分科会が、2013年12月6日に「エネルギー基本計画に対する意見(案)」をまとめ、その内容がパブリックコメント(意見募集)にかかっています。募集期間;2013年12月6日~2014年1月6日

今回まとめられた意見(案)は、マスコミ報道にもあるように、民主党政権下での「原発依存の低減」に向けた政策を大きく転換し、原子力を「エネル ギー需給構造の安定性を支える基盤となる重要なベース電源」と位置づけており、これまでの流れに逆行した内容となっています。日にちが迫っていますが、一言でもよいので、意見を出しましょう。

パブコメ 新しい「エネルギー基本計画」策定に向けた御意見の募集について

http://bit.ly/19n4ngO

(意見例)

意見案は原子力発電(原発)を重要なベース電源と位置付けるなど基本認識や施策の方向に関し多くの問題点があります。汚染水問題に象徴されるように、深刻な原子力災害は現在も継続しています。原発事故の収束問題を最優先の政策課題に設定して早急に全社会的な態勢を整え、原発ゼロに向けて廃炉の取り組みを進めるともに、原発に依存しない新たな電力システムを構築するべきです。基本方針案の見直しを求めます。

*今回、意見提出方法が、① e-Govからの提出、②FAX、③書面郵送、の3つしかありません。① e-Govは、プレーンテキストで2000文字しか書けません。FAX、郵送などの方法もありますが

短くてもかまいません。ぜひ多くの意見を出していきましょう!

日消連の意見をご参考に載せます。           (共同代表 古賀 真子)


資源エネルギー庁長官官房総合政策課 パブリックコメント担当宛

新しい「エネルギー基本計画」策定に向けた御意見の募集について

 

特定非営利活動法人日本消費者連盟 共同代表 古賀 真子

 

総合資源エネルギー調査会基本政策分科会が公表した「エネルギー基本計画に対する意見(案)」(以下、「意見案」という)は、原子力発電(原発)を重要なベース電源と位置付けるなど基本認識や施策の方向に関し、多くの問題点があります。以下の通り意見を述べます。

第1意見の趣旨

1 原子力発電に依存しない基本計画を策定すべきです。特に核燃サイクル政策は即時撤回すべきです。

2 化石燃料への依存を減らし、再生可能エネルギーの推進等、省エネルギー及びエネルギー利用の効率化を政策の中核とすべきです。

3 エネルギー政策については、情報を公開し、市民の意見を聞く場を設けるべきです。

4 電力システム改革を行うに当たっては、経済産業省の視点だけでなく、市民のための電力政策を調査検討する組織を消費者庁内等に設置し、市民の意見を反映させる場を設置すべきです。

 

第2 意見の理由

はじめに

エネルギー基本計画は,我が国の持続可能な国民生活、産業の育成等にかかる重要な政策です。汚染水問題に象徴されるように、深刻な原子力災害は現在も継続しています。国は、原発事故の収束問題を最優先の政策課題に設定して早急に全社会的な態勢を整え、原発ゼロに向けて廃炉の取り組みを進めるともに、原発に依存しない新たな電力システムを構築するべきです。

2 意見1 原子力発電に依存しない基本計画の策定について

(1)原子力依存からの脱却を求める声が国民の7割に及んでいます。原子力推進政策を抜本的に見直し,原子力発電と核燃料サイクルから撤退することこそ国民の総意であることから、私たちは以下のように考え、提言をしています。

(1)計画中・建設中のものを全て含む、原発の新増設を止め,再処理工場,高速増殖炉などの核燃料サイクル施設は直ちに廃止すること。

(2) 既設の原発について,安全審査の目的は,放射能被害が「万が一にも起こらないようにする」ことにあるところ,原子力規制委員会が新たに策定した規制基準では安全は確保されないので,運転(停止中の原発の再起動を含む。)は認めず,できる限り速やかに,全て廃止すること。

意見案では,原子力発電をなお重要なベース電源と位置付ける点で極めて問題であり見直すべきであると考えます。

(2) 原子力発電についての基本的認識についての意見

福島第一原発事故の総括は極めて不十分・不正確です。 意見案では,福島第一原発事故について,「政府及び事業者は深く反省し」,「原因の探求と再発の防止のための努力」等の記述があるものの,事故原因は巨大津波にあるかのような記載であり,反省すべき点についての具体的な記述がありません。

一方,原子力発電については,「優れた安定供給性と効率性を有しており」,「運転コストが低廉で」,「運転時には温室効果ガスの排出もない」ことから,「世界で最も厳しい水準の新規制基準の下で原子力規制委員会によって安全性が確認された原子力発電所については,再稼働を進め」, 「エネルギー需給構造の安定性を支える基盤となる重要なベース電源として引き続き活用していく」とし,将来的にも「必要とされる規模を十分に見極めて,その規模を確保する」としています。

原発の発電コストについては、もっぱら運転コストだけから「低廉」という評価を与えることは、福島原発事故前の「原発の電気は安い」という誤謬に回帰する大きな誤りです。民間調査機関の試算によれば、最新の安全装置の導入、現実的な廃炉費用などを考慮すれば、その発電単価は1kWhあたり17円以上にもなり、火力発電を大きく上回るとされています。原子力発電コストには運転時だけでなく全コストを含めるべきであり、東日本大震災前からも,放射性廃棄物の処分など全コストを考慮すると,むしろコスト高であることが指摘されてきましたが,東日本大震災後には,事故対策のコストが極めて巨額に上ることが明らかとなっています。

なお,東日本大震災,福島第一原発事故後の電力供給に占める輸入化石燃料費の増加が強調されていますが,その過半は化石燃料単価の高騰及び円安化によるものであり,輸入量の増加によるものは一部です。原発再稼働がなければ電気料金の更なる値上げがあるということは国民をミスリードするものです。

意見書案は、原子力について,引き続き活用していく重要なベース電源であると位置付け,再稼働を進めるとするとし,「国民,自治体,国際社会との信頼関係の構築」として,「原子力に関する丁寧な広聴・広報」を進め,立地自治体や住民等関係者の理解と協力を得るために「丁寧な対話を通じて信頼関係を構築」,「立地地域支援対策」を進めるとしています。

これらは,原子力利用の推進を前提としたもので,再び,利用促進のための広報活動を行うとするものであり、福島第一原発事故をもたらしたそれまでの原子力推進政策の誤りの分析,反省がみられないものであるといわざるを得ません。

安全基準についても①立地指針を削除する,②事故発生を防ぐために重要な施設につき,いまだに重要度を低いままとする,③共通要因故障を設計において基準とすべき事故として取り入れていない,④シビアアクシデントにつき,事故防止策が十分取られていないなど、大規模な自然災害に対する基準を設けられておらず,数々の重大な問題点があり,到底,安全を確保するに足りるものではありません。

(3)核燃サイクルからの撤廃について

意見案は,核燃料サイクルを着実に進めるとしています。しかし,核燃料サイクルについては,①使用済核燃料の再処理技術は未確立である,②平常運転時にも大量の放射性物質を放出させる,③膨大な高レベル放射性廃棄物を発生させる,④地震やテロ等による施設破壊が起こると地球規模での被害が発生する,等の重大な問題点があります。

自民党議員の学習会でも海外から招へいした学者等が日本の核燃サイクルをナンセンスと批判しています。再処理工程での臨界事故,福島第一原発事故の直接的原因となった冷却機能喪失事故の再現(使用済燃料の溶融事故,高レベル廃液の水素爆発事故など)も想定されます。さらに,再処理後に残る高レベルガラス固化体の処分方法は,いまだ確立されておらず,最終処分のめどは全く立っていません。必要性,経済性,安全性に多くの問題を抱える再処理は直ちに廃止し,核燃料の環を絶ち切る政策こそが必要です。

 

3 意見2 化石燃料への依存を減らし、再生可能エネルギーの推進等、省エネルギー及びエネルギー利用の効率化を政策の中核とすべきについて

今後のエネルギー政策については、原子力はもとより,化石燃料とりわけ石炭火力にも依存せず,再生可能エネルギーの推進,省エネルギー及びエネルギー利用の効率化と低炭素化を政策の中核とすることが必要です。

1 基本認識についての偏り

意見案は、第1章に世界のエネルギー状況に関する認識を示し、この中で「最新の状況化石燃料」に関し、北米のシェール革命や中東情勢等について言及しています。しかしながら、自然エネルギー(再生可能エネルギー)の飛躍的な拡大が、世界各地で進んでいることについては一言も触れられておらず、その一方で、原子力については「新興国を中心とした世界的な原子力の導入拡大」という観点だけから述べており、福島原発事故以降、ドイツ、ベルギー、イタリア、スイスなどの国で脱原発の政策が決定されたことにも、米国で既存の原発の廃炉が続いていることにも全く触れていません。

こうした「原発偏重」というべき認識の偏りは、今回の「意見」全体を貫いており、原発依存からの脱却を願う国民の多くの思いに背くものになっています。

意見案には,原子力発電所,再生可能エネルギー,その他のエネルギー源についても,数値目標が全く示されておらず、「基本計画」と呼ぶに値しないものです。

意見案では,「日本の立地競争力の強化」,「経済成長の視点の重要性」,「追加的に発生する可能性のあるコストが国民生活や経済活動に大きな負担をかけることがないよう,バランスのとれた構造の追及」等が強調されていますが,原子力発電に依存することこそ,経済活動に大きな損害を与えかねないものです。

今後,政府・事業者が優先してなすべきことは,決して原子力発電所を再稼働させることではなく,廃炉,汚染水対策,除染など,既存原子力発電所のリスク軽減への対応であり,また,原子力発電の代替エネルギー及び温室効果ガスの排出削減のための再生可能エネルギーの拡大並びに石炭から天然ガスへの転換のための政策措置の強化です。 そのためには、化石燃料への依存を減らし,再生可能エネルギーの推進,省エネルギー及びエネルギー利用の効率化を政策の中核とすべきです。この視点から、以下の問題点を指摘します。

(1)意見案では、「石炭を安価なベース電源燃料として活用するとし,老朽石炭火力発電所のリプレースや新増設,海外でも導入を進める」としています。しかし、意見案でも,化石燃料のなかでも石炭の温室効果ガスの排出量が多いことを指摘しながら,最も安価であることからその新増設を含めて推進するとし,環境アセスメント期間の短縮化を明記し,現に新設が進められていることは問題です。

現在,最も高効率の石炭火力発電であっても,高効率天然5 ガス火力発電の約2倍の二酸化炭素を排出します。今後50年にわたって発電部門での二酸化炭素の高排出構造を決定付ける石炭火力発電所の新増設は避けるべきです。二酸化炭素発生量が飛びぬけて大きい「高効率石炭火力」の推進、産業部門の運用対策による省エネ可能性の軽視は問題です。

(2) 「再生可能エネルギー全体としての拡大目標がなく,太陽光発電はピーク需要対応として,風力は広域的運用による調整力や蓄電池の整備を前提としていること 」も問題です。

意見案では,再生可能エネルギーについて,「温室効果ガスを排出しない,国内で生産できる有望な国産エネルギー源」としています。

しかしながら,その一方で,政策の方向性としては「今後3年程度,再生可能エネルギーの導入を最大限加速していく」とし,中長期的な導入数値目標はなく,「今後3年程度」以降の政策は全く不明というほかなく,再生可能エネルギー関連産業の育成の観点からも全く不十分です。

(3)さらに,電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(特措法)による固定価格買取制度について,「法律に基づき,エネルギー基本計画改定に伴いその在り方を総合的に検討し,その結果に基づいて必要な措置を講じる」とされています。これは,エネルギー政策基本法によるエネルギー基本計画の改定によって,特措法の改廃の見通しを盛り込んだものであり,再生可能エネルギー促進のために制定した法律をエネルギー政策基本法の下での計画の改定によって変更できるとする極めて問題の多い指摘といえます。

(4)また,太陽光発電は電力消費のピーク対策としてしか位置付けられていません。さらに,風力発電は地域内送電線や地域間連係線が必要であることから,電力システム改革の推移にかかるところ,電力システム改革については2013年4月2日の閣議決定を指摘するにとどまり、改革の中身もあいまいです。

再生可能エネルギーの飛躍的拡大には,明確な導入目標と,固定価格買取制度のより一層の充実(再生可能エネルギーの種類及び規模毎の適切な運用)を中心とする推進策及び発送電分離を含む電力システム改革の加速的実施が不可欠です。

4 意見3及び4について

エネルギー政策については、情報を公開し、市民の意見を聞く場を設けるべきことは論を待ちません。電力システム改革を行うに当たっては、経済産業省の視点だけでなく、市民のための電力政策を調査検討する組織を消費者庁内等に設置し、市民の意見を反映させる場を設置すべきです。

電力システム改革が始まりましたが、意見案では「,需要側におけるより一層の省エネルギー及びエネルギー利用の効率化」も指摘されていますが、具体的にこれらをどのように実現していくのかについて,明確な目標の設定とそれを実現するための具体的なプロセスの提示が必要です。そのためには、広く需要者である市民の意見を聞き、政策に反映させることが必要です。

特に、需要家にとって関心の高い電気料金についてもミスリードが目立ちます。

今後の電気料金の上昇の見込みについては、「固定価格買取制度に基づく賦課金の影響」のみが記載されている。しかし、今後の電気料金の上昇要因としては化石燃料価格の高騰があるとともに、中部電力の値上げ申請で明らかになったように、原発の発電コストや安全対策コストの上昇こそが大きな要因です。

一方、省エネ化を進めることで電力単価は上がっても、企業や家庭の電力料金総額を抑制することも可能になります。これらの検討を欠いたまま、固定価格買取制度の影響だけを記載するのは、一面的な議論であり、国民をミスリードするものです。

 

総括

福島原発事故の教訓を踏まえ、エネルギー転換を進める方針を明確に示す基本計画を策定すべきです。意見案にある、原子力発電(原発)を重要なベース電源と位置付けるなど基本認識や施策の方向に関しては見直しを求めます。市民の意見を広く聞き的確に反映させることを求めます。

以上

 

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