分子生物学者で「遺伝子組み換え情報室」代表の河田昌東さんの発案で、2019年9月25日に「ゲノム編集技術の拙速な推進を憂慮する学者声明」が発表されました。
呼びかけ人は、池内了さん、市野川容孝さん、河田昌東さん、木村-黒田純子さん、久保田裕子さん、小松美彦さん、島薗進さんの7名です。
学者、研究者のみなさまにはぜひ賛同いただけますようお願い申し上げます。
ご賛同いただける方は、お名前と肩書きまたは専門分野、もしくは両方、及び連絡先を下記連絡先(一番下に記載しています)までお願いいたします。お名前と専門分野は日本消費者連盟のホームページ等で公表することをあらかじめご了承ください。
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ゲノム編集技術の拙速な推進を憂慮する学者声明
いま、ゲノム編集という新しい遺伝子操作の技術が社会全体に大きなインパクトを与えつつあります。従来の遺伝子組み換えに比べ、改変する遺伝子を特定して速やかに切断し、新たな遺伝子を挿入することができます。しかし、その一方でゲノム編集の現在の技術レベルは標的外の遺伝子を傷つける「オフターゲット」など、大きな問題を幾重にも抱えています。しかも、遺伝子の改変は世代を越えて継続するため、一度改変すると人間を含む自然界にどのような影響が及ぶのか現在の科学では予測がつきません。
また、この技術を応用した作物や動物がアメリカなどですでに食品として流通を始めており、日本へも輸入が始まろうとしています。それに対して日本の政府は、環境影響評価も食品の安全審査もせず、表示もしないことに決めました。これでは消費者の健康と安全を保障することはできません。
さらには、そもそも遺伝子に関わる政策は、往々にして人間に優劣をつけ、民族差別や障害者差別などの偏見をもたらし、優生思想の根拠にもなってきました。ゲノム編集の登場は、社会に存在・潜在する差別意識をいっそう拡大することになりかねません。
このようにいま、環境も、食の安全も、生命をめぐる倫理も、きわめて危うい状況にあります。動物性集合胚や人間の受精卵の作成など、従来禁忌とされてきた領域に次々と踏み込み始めてもいるのです。このままいくと、後代の人間存在、文明や社会のありようにも大きく影響を及ぼすことでしょう。
私たちは、以上のようなゲノム編集をめぐる現在の状況に対して、政府による適切かつ有効な規制を求めます。
以上
呼びかけ人 <五十音順>
池内了(名古屋大学名誉教授 物理学)
市野川容孝(東京大学教授 社会学)
河田昌東(遺伝子組み換え情報室代表 分子生物学)
木村-黒田純子(環境脳神経科学情報センター副代表 神経毒性学)
久保田裕子(國學院大學教授 消費経済学)
小松美彦(東京大学教授 生命倫理学)
島薗進(上智大学教授 宗教学)
賛同者 <順不同・敬称略>
金川貴博(京都先端科学大学特任教授 応用微生物学)
畑明郎(日本環境学会元会長 環境政策論)
中村征夫(岐阜大学名誉教授 生化学)
山上修(滋賀県立大学・滋賀大学元非常勤講師 社会科教育)
黒田洋一郎(環境脳神経科学情報センター代表 脳神経科学・中枢神経毒性学)
中島紀一(茨城大学名誉教授 総合農学)
中原准一(酪農学園大学名誉教授 農業経済学)
久田徳二(北海道大学客員教授)
干場信司(酪農学園大学名誉教授)
藤川賢(明治学院大学社会学部教授 環境社会学)
西尾正道(独立行政法人国立病院機構 北海道がんセンター名誉院長)
三國英實(広島大学名誉教授 食糧流通学)
古沢広祐(國學院大学経済学部教授 環境社会経済学・持続可能社会論)
廣野喜幸(東京大学教授 科学史・科学論、実践倫理学、進化生態学)
柿原泰(東京海洋大学教員 科学史・科学技術論)
篠田真理子(恵泉女学園大学 環境思想史)
小宮山陽子(東京女子医科大学講師 看護学・科学史)
坂野徹(日本大学経済学部教授 科学史・フィールドワーク史)
香川知晶(山梨大学名誉教授 哲学・倫理学)
堂前雅史(和光大学教授 科学技術社会論)
藤原辰史(京都大学准教授 食と農の思想史)
三島徳三(北海道大学名誉教授 農業経済学)
斎藤光(京都精華大学ポピュラーカルチャー学部教員 科学史科学論)
守屋治代(東京女子医科大学看護学部教授 基礎看護学、看護人間学)
稲葉光國(NPO法人民間稲作研究所理事長 有機栽培)
勝守真(元秋田大学教員 哲学)
中地重晴(熊本学園大学社会福祉学部教授 環境化学)
山形定(北海道大学教員 環境工学)
田坂興亜(元国際基督教大学教授 化学者)
小田清(北海学園大学名誉教授 地域開発政策論)
柏﨑郁子(東京女子医科大学助教 基礎看護学)
綾部広則(早稲田大学教授 科学社会学・科学技術史)
宮川卓也(広島修道大学助教 科学史)
今井重孝(青山学院大学名誉教授 教育学)
安藤泰至(鳥取大学医学部准教授 宗教学・死生学)
村岡潔(佛教大学社会福祉学部教授 医学概論・医学哲学)
鬼頭秀一(星槎大学教授 環境倫理学)
大林雅之(東洋英和女学院大学特任教授 生命倫理学)
天田城介(中央大学教授 社会学)
山本佳世子(天理医療大学助教 死生学)
小柳正弘(沖縄国際大学教授 哲学[社会哲学、倫理学、障害とケアほか])
佐々木香織(小樽商科大学准教授 社会学と科学技術社会論)
土屋貴志(大阪市立大学大学院文学研究科准教授 倫理学)
篠原睦治(和光大学名誉教授、子供問題研究会代表)
田中智彦(東京医科歯科大学准教授 倫理学・政治思想)
加藤茂生(早稲田大学教員 科学史・科学論)
柳原良江(東京電機大学助教 生命倫理学)
宇城輝人(関西大学教授 社会学・社会思想史)
坂井真紀子(東京外国語大学准教授 アフリカ農村社会学)
玉井隆(東洋学園大学専任講師 医療人類学、アフリカ地域研究)
勝俣誠(明治学院大学名誉教授 国際政治経済学)
三重野雄太郎(佛教大学講師 法学・生命倫理学)
西貝怜(目白大学非常勤講師 科学文化論、行動生態学)
塚原東吾(神戸大学大学院教授 科学史・科学哲学、STS)
竹内整一(鎌倉女子大学教授 倫理学)
上林陽治(公益社団法人地方自治総合研究所研究員 労働社会学)
内田聖子(NPO法人アジア太平洋資料センター(PARC)共同代表 貿易問題、多国籍企業研究)
山代寛(沖縄大学健康栄養学部教授 医学教育)
徳永哲也(長野大学教授 哲学・倫理学)
冲永隆子(帝京大学准教授 医療倫理、看護倫理)
粥川準二(県立広島大学准教授 社会学)
吉田昌夫(ジェトロ・アジア経済研究所名誉研究員 アフリカ地域研究)
岡山博(医師 呼吸器内科、分子生物学(DNA解析法開発))
堀江宗正(東京大学准教授 死生学)
手島勲矢(聖書文献学)
角田和彦(かくたこども&アレルギークリニック院長 臨床環境医学)
玉城直美(沖縄キリスト教学院大学准教授 開発学)
入江一惠(元兵庫女子短期大学 調理学・食生活論)
沼地健一(元東京大学、東海大学教授 分子集団遺伝学)
鈴木宣弘(東京大学大学院農学生命科学研究科教授 農業経済学)
熊田一雄(愛知学院大学文学部宗教文化学科)
杉浦公昭(環境化学)
長澤真史(東京農業大学名誉教授 農業経済学)
山浦康明(朝鮮大学経営学部講師 経済法、法社会学)
小倉利丸(元富山大学教員、JCA-NET代表)
柴田恭子(元高岡法科大学名誉教授 英文学)
里見宏(元・国立保健医療科学院疫学部客員研究員、現・健康情報研究センター代表 疫学)
八田純人(一般社団法人農民連食品分析センター所長 農学)
柳澤比呂子(元脳神経疾患研究所先端医療研究センター専任研究員 分子生物学)
天笠啓祐(DNA問題研究会)
安岡健一(大阪大学大学院文学研究科准教授 歴史学)
外山光俊(株式会社名古屋生活クラブ 食品工学)
(2020年1月24日現在、賛同者82名)
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【賛同の連絡先】
特定非営利活動法人 日本消費者連盟
〒169-0051東京都新宿区西早稲田1-9-19-207
電話03(5155)4765/FAX 03(5155)4767
Eメールoffice.j@nishoren.org
担当:纐纈(こうけつ)美千世