資源エネルギー庁による第6次エネルギー基本計画策定に向けた意見募集に、日本消費者連盟は2021年10月1日に以下の意見を提出しました。
エネルギー基本計画(案)に関する意見
「5.2050年を見据えた2030年に向けた政策対応」中の「(6)原子力政策の再構築」について、「(6)原子力政策の転換」とし、「再稼働した原発を即時停止し、原発ゼロを実現する」と記載してください。
東京電力福島第一原発事故により、いわゆる「安全神話」が完全に崩壊するとともに、東京電力経営陣が津波の危険性を事前に承知していたにもかかわらず、それを放置したことによる「人災」であることも明らかになっています。
原発の危険性については、原発現地の住民や原発ゼロを訴える市民も、いわゆる「原子力ムラ」の住人であっても、実は誰もがよく分かっていることです。また、仮に大事故が発生しなかったとしても、廃炉等さまざまな諸経費をすべて積算すれば、原発が経済コスト的に合わないことにも異論がありません。
スリーマイル島原発事故、チェルノブイリ原発事故、そして福島第一原発事故を顧みれば、原発と共存できないことが世界中で認知されたことは首肯でき、とりわけ地震国・日本においてはあまりに明白です。
第6次エネルギー基本計画は、2050年カーボンニュートラル実現に向けたエネルギー政策の道筋を示すことが重要なテーマとされています。
世界中で気候変動が生じる中で、脱炭素化社会への取り組みが加速化しており、すでに日本を含めて120カ国以上が2050年までに二酸化炭素排出量ゼロを
宣言しています。
とくに欧州各国では進んでおり、発電電力量に占める再生可能エネルギーの占める割合は、オーストリア・デンマーク・スウェーデンでは70~80%となっており、ドイツ・イタリア・スペイン・イギリスでも40%以上となっています。
一方、原発の比率が高いフランスでは20%強に留まり、いまだ18%程度の日本は近年太陽光発電の増強が図られているとはいえ、立ち遅れは明らかです。
原発依存の強い国では、再生可能エネルギーへのシフトが遅れる傾向があり、たとえば2000年時点で30%近くを原発に頼っていたドイツでは、再生可能エネルギーは5~6%程度でしたが、その後40%台を達成し、2022年には「原発ゼロ」を決定しています。
日本でも、福島原発事故直後は原発ゼロだったので、原発再稼働に依拠せずとも十分電力需要を賄っていけることは実証済みです。欧州各国を見習って2030年の再生可能エネルギー目標値、36~38%をさらに引き上げ、原発ゼロを実現することが妥当です。
2016年には、電力小売全面自由化を契機に、大手電力10社から、自治体新電力や地域小規模電力へのシフトが進んでいます。エネルギーシステムの分権化、ボトムアップ化によって、「身の丈に合った暮らし」(地域経済圏)を地産地消によって確立し、地域の活性化につながる動きです。そのためには、住民参加が望ましく、政治的には意思決定システムへの関与・参加(条例による担保等)と、経済的参加としての事業への関与(出資等)がポイントとなります。
オフィス・家屋等での照明・冷暖房の省エネ化、建物の断熱化、電気自動車への変更、都市部での公共交通機関や自転車の利用等々の積み重ねによって、地域の低圧電力の再生可能エネルギー100%は近い将来確実に実現可能です。
都道府県レベルでみると、水力発電量の多い秋田県や太陽光発電の多い鹿児島県・群馬県・宮崎県、地熱発電の多い大分県等では、すでに再生可能エネルギーによる電力自給率が約50%となっています。
市町村別では、全国で100以上の自治体で地域的なエネルギー自給率が100%を超えていると言われています。
地産地消による地域経済圏の形成には、種々課題があることも事実ですが、日本においても各地域のさまざまな取り組みによって、パワーシフトが浸透しつつあります。
このような地域の力によって、脱原発・再生可能エネルギーへのシフトは、遅ればせながら日本においても確実に進展しています。
エネルギー基本計画(案)においては、「原発は必要な規模を持続的に活用していく。」として原発依存を前提としていますが、おそらくそのような推論はいずれ現実によって乗り越えられることとなるでしょう。
以上