日本消費者連盟
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【特別決議】「敵基地攻撃能力保有と防衛費増大に反対し国境を越えた交流と協力で平和を維持します」など4本を総会で採択(2023年6月18日)

 

日本消費者連盟は2023年6月18日の第50回定期総会で、「特別決議 敵基地攻撃能力保有と防衛費増大に反対し、国境を越えた交流と協力で平和を維持します」、「遺伝子操作生物の厳格な規制を求める特別決議」、「食品表示行政の是正を求める特別決議」、「岸田政権の原発政策の転換に抗議する特別決議」の4本の決議を採択しました。

 

特別決議
敵基地攻撃能力保有と防衛費増大に反対し、国境を越えた交流と協力で平和を維持します

世界を幾度も破滅させることのできる大量の核兵器が、いつでも押せる発射ボタンとともに存在しているのが現代世界です。核破滅までの残り時間を表す有名な「世界終末時計」は、戦後7分前から始められ、一時は14分前と危機が後退した時期もありましたが、今や史上最悪の90秒前を指していると伝えられます。

「安全保障」や「防衛」ということは、何よりもこの核兵器使用を防ぐことです。軍備・軍事費の増強は核戦争を予防できません。

岸田政権が国民への説明も同意もなしに進める軍事大国化は、この残された時間を縮めこそすれ、増やすものではありません。

つい先ごろまで繰り返された朝鮮半島での南北会談や、米朝首脳会談で垣間見られたアジアの緊張緩和への努力に、私たちはどれほど期待したことでしょう。それは明らかに恐怖の積み上げではなく、安心を強める努力でした。

こうした交渉や外交努力が、戦争を遠ざけます。そしてそのことを支え、平和な社会の実体を作るのが、国境を越えた私たち市民の交流と活動だと考えます。

私たちは、国家安全保障戦略、国家防衛戦略(旧防衛大綱)、防衛力整備計画(旧中期防衛力整備計画)の「安保3文書」の改悪を支持しません。「敵基地攻撃能力」の保有も防衛費倍増もいりません。軍備増強を拒否し、アジアをはじめ各国市民との対話と交流を広げていきます。

以上を改めて決意し、決議とします。

2023年6月18日
特定非営利活動法人日本消費者連盟 第50回定期総会参加者一同

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遺伝子操作生物の厳格な規制を求める特別決議

遺伝子組み換えやゲノム編集といった遺伝子操作技術を使った食品への不安が高まっています。日本では、2020年のゲノム編集トマト、2021年のゲノム編集マダイとゲノム編集トラフグに続き、今年3月にゲノム編集トウモロコシの流通が可能になりました。相変わらず日本政府は、遺伝子を壊しただけのゲノム編集生物は自然界で起こる突然変異によってできる生物と変わりはないので、安全性審査も環境影響評価も必要ないと主張し、規制をしていません。そのため作物だけでなく、家畜、魚、昆虫にいたるまで開発が活発化しています。

しかし、ゲノム編集は様々な遺伝子をセットにした「遺伝子カセット」の大量使用が前提で、それによるオフターゲット(狙った遺伝子以外を壊すこと)は避けられないことがわかっています。ゲノム編集の開発者たちは、自然界でもオフターゲットは起こるといいますが、自然界でなら淘汰される程度の頻度にとどまります。しかし、ゲノム編集という意図的な遺伝子操作では、本来必要であるはずの遺伝子を人間の都合で大量に破壊します。生物にとって壊してよい遺伝子などないことを、私たちは強く主張します。

従来の遺伝子組み換え技術による研究開発が依然として盛んに行われていることにも注意が必要です。岸田首相が4月に花粉症対策を打ち出したことで、市民の反対運動でいったん中止に追い込んだスギ花粉米が復活の兆しを見せています。海外では、遺伝子組み換え小麦や遺伝子組み換え稲の商業栽培が一部始まり、消費者だけでなく生産者からも不安の声があがっています。

日本消費者連盟は、遺伝子操作生物が食の安全や環境を脅かすだけでなく、これまで消費者と生産者が作り上げてきた農畜漁業を破壊する危険性を持っていることを広く知らせるとともに、予防原則の立場で厳しい規制が行われることを求めます。

以上、決議します。

2023年6月18日
特定非営利活動法人日本消費者連盟 第50回定期総会参加者一同

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食品表示行政の是正を求める特別決議

食品表示制度が次々と改悪されています。消費者庁の検討会は、不十分な表示制度を見直さないだけでなく、消費者の商品選択に役立っていた「遺伝子組み換えでない」表示と食品添加物の無添加・不使用表示を規制しました。原料原産地表示についても、国産と紛らわしい「国内製造」をはじめ、一次原料の生産地が分からない製造地表示が問題になっています。

消費者庁は今年4月に食の安全・安心を創る議員連盟が主催した食品表示についての意見交換会でも、頑なにゲノム編集食品の表示を検討する姿勢を示しませんでした。また国会で培養肉に関して表示を検討する旨の大臣答弁があったにも関わらず、消費者庁はフードテック食品の表示も拒んでいます。

こうした消費者庁の姿勢は、商品を選ぶ権利、商品について知る権利という消費者の基本的な権利の侵害です。日本消費者連盟は、食品表示問題ネットワークに結集した消費者団体、生協、事業者などとともに、食品表示行政の抜本的な是正を求め、運動していきます。

以上、決議します。

2023年6月18日
特定非営利活動法人日本消費者連盟 第50回定期総会参加者一同

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岸田政権の原発政策の転換に抗議する特別決議

5月31日に、原発の60年超運転を可能にする「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法案」が参議院本会議で自民・公明与党両党と日本維新の会、国民民主党、参政党らの賛成で可決・成立しました。この法案は、原子力基本法・原子炉等規制法・電気事業法・再処理法・再エネ特措法の5つの改正法案を束ねたものです。

岸田政権は、昨年7月に脱炭素社会の実現を図るとしてGX実行会議を設置し、12月に同会議が公表した「GX実現に向けた基本方針―今後10年を見据えたロードマップ―」を受けて、本年2月に基本方針を法制化すべく、GX脱炭素電源法案を国会に提出しました。

その実態はグリーントランスフォーメーションとは名ばかりで、原発の再稼働、老朽原発の運転期間の延長・新増設の推進、原発産業への支援強化など、これまでの「可能な限り原発依存度を低減させる」政策の大転換を強引に図ろうとするものです。

福島原発事故後、原発とは共存できないことが誰にも明白となり、圧倒的多数の市民・住民の意見を背景に、民主党政権下で、原発に依存しない社会の早期実現にむけて「原発の新増設は行わない」「原発の運転期間は最長60年」とする「革新的エネルギー・環境政策」が策定され、安倍政権・菅政権も表面上はこの政策を継承してきました。
しかしながら、岸田政権は、半年余りの短期間の結論ありきの形式的な審議・検討で、従来の政策をかなぐり捨てて、衰退しつつある金まみれの産学政官一体といえる「原子力ムラ」を救済すべく、大きく舵を切りました。

福島原発事故では、突如、膨大な住民がふるさとを失い、今でも苦渋の思いで避難生活を強いられて故郷に戻れない人々が多くいる事実を決して忘れてはなりません。法改正は、こうした事故の反省と教訓をないがしろにするものです。

ドイツでは、今年4月にロシアのウクライナ侵略戦争によるエネルギー危機に惑わされることなく、脱原発を実現させています。
日本消費者連盟は、岸田政権の原発政策の転換に強く抗議します。そして、脱原発社会の早期実現に向けて、多くの消費者・生活者などとともに進んでいくことを決議します。

2023年6月18日
特定非営利活動法人日本消費者連盟 第50回定期総会参加者一同

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