「ヨボウゲンソク?聞いたことがないです。それは何ですか?」
先日、地方議員の方々に遺伝子組み換えやゲノム編集食品についてお話する機会があったのですが、「因果関係は立証できるのか?具体的なデータは?」など何度も質問が出ました。
「予防原則」というのは、生命や環境に重大な懸念が生じる恐れがある場合、因果関係が科学的に十分証明されていなくても、手遅れにならないようあらかじめ措置をとるという環境問題の基本的な考え方です。1980年代にドイツで生まれ、EUの環境政策や国連の気候変動枠組条約(1992年)などでも採用されている概念です。残念ながら日本では浸透しておらず、反対に農薬の残留基準値が緩和されるなど世界の流れに逆行しています。
身体や自然の仕組みは科学で全て解明できるような単純なものではありません。遺伝子の働きひとつをとっても、複雑なネットワークで相互作用しながら働いており、わからないことがまだ多くあります。因果関係が証明されてからでは手遅れなのです。食やいのち、環境に関する問題は特に予防原則を心に留めて、1人ひとりができることから始めましょう。
(松尾由美)