最初から結論ありきの議論だったのでしょう。2017年4月から1、2カ月に1回のペースで行われている消費者庁の「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」のことです。
現在の制度では遺伝子組み換え食品を食べたくないと思っても避けることができません。義務表示の対象品目が限られているからです。私たち消費者は、表示を見て選べる制度にしてほしいと要求し続けてきました。しかし、2017年11月27日の当ブログにも書いたように、消費者庁の検討会は消費者の声を無視して進んでいます。
8回目となる1月31日の検討会ではこれまでの議論をまとめたという「報告書案」について9人の委員が意見を述べました。同案の「現行制度を維持することが適当と考えられる」の文言に委員の1人は、「私の意見とは全く逆のまとめだ」と反論。また「遺伝子組み換え食品がこれだけ出回っているのに、表示がないために消費者は実態を知らない」と現行制度の問題点を改めて指摘した委員もいました。一方で、「組み換えられたDNA等の残存が確認できるもののみを義務表示の対象とする今の制度でよい」とする声も少なからずありました。このように相対する意見が出たわけです。ところが、座長は「現行制度の維持が適当」とまとめてしまいました。
この間、検討会を傍聴して気づいたのは、すべてが「できない」「難しい」から始まっていることです。遺伝子組み換え原料が入っていても「遺伝子組み換え」と表示されない現状はおかしい。だから少しでも表示制度を前進させよう、そのためには何をしなければならないのか、どうすれば、消費者の知る権利に応える制度にできるのかといった議論はまったくされていません。「不可能」と考える頭からは何も生まれないのではないでしょうか。
消費者庁には次の言葉を送りたいと思います。「不可能とは現状に甘んじるための言い訳に過ぎない」(ボクシングの元世界ヘビー級チャンピオン、モハメド・アリ)
(纐纈美千世)