日本消費者連盟
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「はじめに消費税増税ありき」の税制は根本から見なおすべき

政府は2月17日、消費税率引き上げを柱とする社会保障・税一体改革について、政府・与党が1月にまとめた素案を大綱として閣議決定しました。

日本消費者連盟では、2月16日、野田政権が「不退転の決意で臨む」としている「社会保障と税の一体改革」の素案のうち消費税の税率引き上げを見直すよう求める要請文を野田首相宛に提出しました。


日消連第41号
2012年2月16日

内閣総理大臣 野田 佳彦 様

特定非営利活動法人日本消費者連盟
共同代表 天笠 啓祐
古賀 真子
真下 俊樹
山浦 康明

消費税率引き上げの見直しを求める要請文

 

 私たち日本消費者連盟は、今回の「はじめに消費税増税ありき」の政策を根本から見直すよう強く要請します。

1. 政府の税と社会保障一体改革案によると、消費税率引き上げ(国・地方)は「社会保障の安定財源確保と財政健全化の同時達成」の第一歩であるとして、2014年4月1日より8%へ、2015年10月1により10%へ段階的に引き上げを行うとされています。

消費税率の引き上げを社会保障目的税化(全額社会保障4経費:制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付、並びに少子化に対処するための政策による施策に要する費用)とすることで、国民の理解を得ようとするものですが、消費税率引き上げの真のねらいは税収増による膨大な財政赤字の穴埋めに原資にされるのではないかとの疑念があります。

一体改革といいながら、社会保障の充実のプランは具体的に示されておらず、むしろ、社会保障は切り下げの方向性が示されています。「一体改革」として、低所得者への年金加算、介護保険料・国民保険料の軽減措置等、きめ細やかな機能強化策をするとしていますが、聞こえてくるのは、高齢者の年金給付の削減や、年金一本化による負担の増加、給付の切り下げです。

2. そもそも税は国家財政の原資であるとともに社会の富の再配分という機能がありますが、今回の政府案には税の逆進性への対策が極めて不十分です。

消費税の場合は、所得の低い者ほど食料品などの消費支出の割合が高いために、消費税の負担も高くなるという、いわゆる逆進性が導入当初から問題となっていました(長期的に見た場合に、消費税が逆進性を持たないとする議論は、とくに低所得層の実生活を無視した詭弁でしかありません)。すべての商品について基本的に同一税率とすることは、高額所得者優遇の課税ベースを維持するものです。これは課税ベースが大きく侵食されること、事業者の負担が増加することがその理由とされていますが、富の再分配機能を果たさず、低所得者の負担を相対的に増大させるものです。EUなどの付加価値税は必需品には複数税率やゼロ税率が適用されています。行政の事務処理を簡単にするために、そのしわ寄せを低所得者が被ることは許されません。

3. 加えて、旧政権ですら不公平であるとして反対し続けていた国民総番号制と酷似した番号制度を2015年度以降に定着させることが計画されています。これは、民主党が国民の目線で行うと言ったマニュフェストと真っ向から対立する内容となっています。

4. 制度として、事業者免税点制度や簡易課税制度は温存する上、中小企業の事務負担を踏まえて欧米では常識のインボイスも採用しない点からも、消費者のための増税でないことは明らかです。

5. 社会保障制度の見直しの実体は保障の切り捨てであり、所得控除の抜本的な整理は低所得者を狙い撃ちした増税となる可能性が高く、「一体改革」は全体として取りやすいところから取るという赤字穴埋めの姿勢が明白です。

6. 税率の引き上げの前にやるべきことは、歳出のあり方、財政赤字削減のための見直しです。以下、そのごく一部を例示します。

(1) 水不足ではないのに、地域一帯を全部水に埋める八ツ場ダム計画は中止すべきです。

(2) 原子力への依存を減らすことが国の基本姿勢となったいま、高速炉もんじゅなど原子力関連予算は大幅削減すべきです。

(3) 莫大な補正予算により、自治体に基金を創設させ、不要で危険な予防接種を行うことは即刻中止すべきです。

(4) 高額な社会診療制度を温存し続け、過剰な医療により財政支出を圧迫させながら、社会保険診療は非課税にする一方、医療機関等の行う高額の投資に係る消費税については、診療報酬などの医療保険制度で手当てをするなどは、無駄な垂れ流しをしながら、医療機関の焼け太りを肥大化させるものです。

(5)「住宅の取得には、消費税引き上げの前後における駆け込み需要とその反動等による影響が大きいことを踏まえ、住宅取得に係る必要な措置については財源も含めて総合的に検討する」としていますが、不動産取引を常態としない消費者には納得のできない住宅産業優遇政策です。

(6) 国民に痛みをというのであれば、欧米各国に比しても5倍以上もの国会議員の歳費と政党助成金こそ、真っ先に見直し、削減すべきものであると考えます。

以上

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