日本消費者連盟
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加工食品の原料原産地表示
調査会報告書に一定の歯止め

2011年7月27日、消費者委員会食品表示部会において、「加工食品の原料原産地表示の拡大の進め方に関する調査会」(1487号)の最終報告書が示されました。

委員として議論に参加

イラスト:清重 伸之©

この調査会は、食品表示部会でこの問題を審議した際、「原料原産地表示の拡大を進めるためには、義務対象品目を選定する際の基本的考え方や対象品目の候補の選定方法などについてあらためて議論する必要がある」との意見が出されたため、11年1月に消費者委員会の特別調査会として設置されたものです。

委員は座長の田島眞さん(実践女子大学教授)、座長代理の日和佐信子さん(雪印メグミルク社外取締役)、阿久澤良造さん(日本獣医生命科学大学応用生命科学部長)、阿南久さん(全国消団連事務局長)、迫和子さん(日本栄養士会専務理事)、山本創一さん(食品産業センター企画調査部次長)、立石幸一さん(JA全農食品品質・表示管理部長)、そして山浦の8名でした。

この調査会は6回開かれ、事業者や「食の安全・監視市民委員会」の神山美智子代表からのヒアリング、現地調査(味の素系のクノール食品、日清製粉)を行ない、11年7月6日に報告書の最終取りまとめを行ないました。

後ろ向きな中間整理案に反論

それに先立ち、11年6月3日にはすでに事務局と座長が中間整理案を提出し、JAS法を根拠とする表示のあり方に限定しようとしたり、09年8月まで開かれた「食品の表示に関する共同会議」の報告書を重視して、加工食品の範囲の拡大を品質の差異があるものに限定しようとしたり、使用割合50%以下の原料は表示不要とする「50%ルール」を重視し事業者に配慮して実行可能のものに限定したりしようとしました。

これに対し、立石委員と山浦が反発し、拡大の方向性を前面に出すように要請しました。

7月6日の報告書案は、こうした反発を少し反映したものとなりましたが、この問題点は次のようです。

  1. ①12年度から消費者庁で本格的に審議される食品表示の一元化の議論に資する報告書でなく、現行のJAS法の範囲を念頭においた後ろ向きのものである点
  2. ②質の差異や50%以下の原料は表示不要とすることによって、消費者が近年関心を持つようになった原産地や生産方法、食品添加物・農薬・ポストハーベスト農薬の使用実態などに関わる国の情報を知ることができないため、消費者の選択権確保に資するものになっていない
  3. ③事業者にとって実行可能なものという議論で対象品目の拡大をストップさせようとしている点

この問題を解決するには、全食品について原則、原料原産地表示を義務付け、そのうえで例外も認めるという発想が重要です。

原則表示義務化の要求を明記

こうした点を意見書としてまとめ、調査会に提出したことにより、今回示された最終報告書では、まず「基本的考え方の整理」に、「消費者の食品表示に関するニーズはこれまでの『品質』の概念におさまりきれなくなった」「食品表示の一元化の議論に資する課題を提起する」との文言を入れさせました。また、「原料原産地表示義務対象品目の選定方法」については、「事業者は原則として消費者に原料の原産地情報を提供すべき」との意見も出たことを挿入させました。

終わりの第6章においては、食品表示に関する一元的な法律の制定に向けた取り組みのため、「原則としてすべての加工食品の原料の原産地を表示すべき、食品のトレーサビリティ制度の検討とも連動すべき、などの提案があったこと」などを載せさせ、「食品表示の一元的な法体系のあり方の議論においてはこうした観点も含め、食品表示が消費者の商品選択に資するためのものであることを踏まえ、根本的な議論を行なうことを期待する」との結びを入れさせることができました。

表示一元化法制度の議論に注目

このように、消費者委員会の報告書に事業者の後ろ向きの立場を盛り込もうとしたことに対して一定の歯止めをかけましたが、12年度に行なわれる表示一元化の法制度の議論の中で、消費者の選択権を確立し、遺伝子組み換え食品、ポストハーベスト農薬使用などを認めている国の情報を表示させなければなりません。

(山浦康明)

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